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短編  作者: ヤスタカ
1/1

・二十一時 申し送り


「第一ユニット、申し送りをお願いします」と僕。

「第一ユニット、特にお変わりありません。KさんとIさんに下剤が入っています。以上です」

「では第二ユニット、申し送りをお願いします」と僕。

「第二ユニットですが、Iさんが便が出ないので不穏(=機嫌が悪い)ですね。ナースに八つ当たりしてました。あとKさん、もう五時間くらい尿が出ていないので後ほど確認をお願いします。それとSさんには朝方にアローゼン(=下剤)を服薬させてください。」

「最後に第三ユニット、何か報告はありますか?」と僕。

「えー、Nさんですが、尿路感染にかかりまして、現在、熱が38,8℃あります。看護長が言うには、尿路感染の場合、38,5℃くらいが普通だそうですから、あまり気にしなくていいとのことです。定時のバイタル測定とクーリングをお願いします」大丈夫じゃねえだろ。38,8℃って何だ。爆発手前じゃねえのか。

当施設の夜勤は基本的にふたりで行う。僕は今夜一緒に働く岩さん(仮名。三十代)に訊く。

「38.8℃ですって」

「これ今夜中に死ぬんじゃねえか?」さすが岩さん、ノリが軽い。



・二十二時 変身

僕はシラフで老人ホームの夜勤などとてもやっていられない。そこで合法の薬物飲料『レッドブル』を過剰に摂取し、介護戦士ヤスタカに変身する。三本も飲むので吐き気が酷い。

各居室を巡回する。特に問題なし。つまり、現在のところ、死者はなし。



・二十三時 体位交換

たいていの人は寝ているときに寝返りをうつ。床ずれを起こさないため。しかし寝返りをうてない老人というのは多い、というか施設に入るレベルの老人は基本的に寝返りはうてない。そこで介護士が寝返りの手伝いをする。これが体位交換。

延々と老人をごろごろ転がしている僕の姿は、さながら岩を転がし続けたというギリシア神話のシーシュポスである。

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