第四十節 過去の追憶3
お久しぶりです! 具体的には一年間半ぶりです!
これからまたぼちぼちと再開していきたいと思います!
今回はかなり短いですけどw
私はいま、かつてない窮地に立たされたいる。
己の全てをかけた勝負に負け、全てを失ったのだ。もう、私には何も残っていない。
「へへ、毎度あり。良いカモだったぜ」
要するに、賭博場で負けて一文無しになったと言うことだ。
「アンタ、……その、馬鹿?」
「ムキィィィイ、今日はちょっと運が悪かっただけだもん! そうだ、私は悪くない!」
そう開き直って見たは良いものの、隣にいる少年の哀れむような目線が心をガリガリと音を立てて削っていく。
「だいたい資金調達に来て一文無しになるなんて、何考えてるんだ」
「だから、ちょっと調子が悪かっただけだって。……そう言うソルト君こそ、何もしてないじゃない」
彼はそう言っている私を一瞥すると、はぁ、と小さく息を吐いた。
「じゃあ、俺がやってやるよ」
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「旦那ぁ、もう勘弁してくだせぇ!」
私は、悲鳴を上げるようにソルト君を止めようとする賭博屋を見て唖然としていた。
彼はスロットをしていた。
彼がボタンを押すたびに必ず絵柄が揃い、コインが音を立てて落ちてくる。
見ているこっちが夢ではないかと疑ってしまうほどの日現実的な光景だ。
「ん? そうだな、資金も十分稼いだしここら辺でやめとくか」
そう言いながら彼はとどめとばかりに5つ並んでいるボタンを立て続けに押し、大量のコインをせしめてから立ち上がる。
「俺はこんな感じだが何か?」
振り返りざまに、そんなセリフを吐いて来た。
特大のドヤ顔とともに。
「ああもう! 不公平だ! 賭博師か君は!」
「なんで不幸へ日になるんだよ」
呆れた顔でそんなことを言われる。
「だいたいなんでスロットがあんな簡単に揃うの? 何かイカサマでもしてるの?」
「ん? いや、あんなの回ってる絵柄を見ながら押せばいいだけだ」
「……見えてるの?」
「? 別に普通に見えるぞ」
思わす天を仰いだ私を責める人はいないだろう。
ここの賭博場にはかなりの実力者たちもやってくるため、スロットの回転速度は様々な絵柄が繋がって不思議な模様になるくらい早くしてあるはずなのだ。
どんな動体視力してるのよ。
これ一つとっても、この少年は間違いなく超一流であると言えるだろう。
何者なんだろう?
「金はたっぷり稼いだし、祭りを見るんだろ? どこに行くんだ?」
「そうだね、取り敢えずいろいろ回ってみようよ」
食べ歩きもしたいしね、と私が言うと彼は軽く頷いた。
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「わぁ、これも美味しい!」
右手に串焼き、左手に飲み物を持ち、私の気分は絶頂だった。
やっぱり、食べ物を食べると幸せになれるね!
「……どんだけ食うんだ、アンタ」
……隣には財布の中身減り様と、私の食べっぷりを見ながら呆れているがいるが。
「そんなこといってないでソルト君ももっと食べなよ、せっかくのお祭りなんだからさ」
右手に二本持っていた串焼きを片方彼に差し出す。
「いや、俺はもういらな……モガァッ⁉︎」
口にねじ込むと、おとなしく咀嚼し始めた。
最初から食べておけば良いのにね。
「アンタ……もぐもぐ……楽しそうだな」
「ん? だって誰かと一緒にいろんなことするのって、楽しいでしょ?」
そう言うと、彼は驚いたように軽く目を見開いた。そして、小さく笑みをこぼす。
「……そうだな」
祭りの時は駆けるように過ぎ去って行く。




