第二十七節 死闘と出会い
闇に紛れて強大な気配が動き始めたのを感じる。
俺でも倒せるかどうか解らないほどの気配を放っている魔物もいる。
背中の悪寒はすでに消えていた。もう、動揺はしていない……はずだ。
ここには自分の限界を確かめに来た。だが、死んでもいいのか? その問いが心の中に渦巻いている。
仲間を守るために死んではならない。だが、死線をくぐらなければ限界など見えるはずがない。
自分でも優柔不断だとは思う。しかし、すぐに決めることが出来る問題ではない。
だが、その迷いを断ち切るように状況は動いた。
強大な気配がこちらに迫ってくる。
「くそ……」
吐き捨てるように言いながら眼に意識を集中する。右目が鮮血のような色合いを帯びる。
数m先が見えないほどの暗闇が亜有りを覆っていたが、一気に視界が鮮明になる。強大な気配の持ち主の姿が眼にはいる。
「――――ッ!?」
現れたのは人型の影だったが、人間ではなかった。
簡単に言い表すと「狼人間」だった。漆黒の毛並みに覆われた体を揺らして経つ姿を見ると、凄まじい悪寒が駆け抜けた。
「グルゥゥ…………」
紅の瞳を持ったその獣は低く唸りを上げながら間合いを計るように近づいてくる。
剣を抜刀し低く構える。光をそのまま固めて鍛えたような刀身が放つ暖かい光が辺りの闇を祓う。
戦闘開始までの時間は一瞬だった。予備動作すらなく低い体勢で突進してくる姿からは、野生の本能がにじみ出ていた。
左右から迫るかぎ爪をバックステップでかわし、着地と同時に鋭い突きを放つ。純白の光を引きながら放たれた突きが獣の胴体をかすめる。
滑らかに呪文を唱えながら剣を引き戻す動作と連動して横切りを繰り出す。だが、爪で受け止められる。
神器を受け止められたことに少しだけ動揺が走るが、幸い致命的な隙とはならなかった。
左のかぎ爪の反撃が来るが、右に回り込むようにしてよけ、魔法を発動する。
炎が獣を覆う。動きが止まり、少しだけ緊張を解く。拘束系の高位魔法だから、しばらくは動きを止めることができるだろう。
そう思って獣の方を見ると、そこには信じられない光景があった。
炎の拘束を両手のかぎ爪で切り裂き、こちらに向かって突進して来る。
「な…………ッ!?」
あまりの光景に理解が追いつかず、隙だらけの姿をさらした。
右のかぎ爪が左の肩から右側の腹まで切り裂かれる。
「ぐっ…………」
あまりの事に、痛みを感じない。だが、生々しい傷跡を見た途端焼け付くような痛みが襲ってきた。それと同時に、有ることを悟った。
これは……致命傷だ。
回復系の高位魔法を使えないためもう助からないが、それでも諦めはしない。
「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴のように叫びながら突進する。決死の迫力に蹴落とされたのか、獣がわずかに下がる。
魔法によって加速された動きは、常人の目には捕らえられないほどの動きだった。
剣が横薙ぎにふるわれる。
獣の首が、宙を舞った。だが、それと同時に体から最後の力が抜けるのを感じる。
「大丈夫!?」
意識が暗転する寸前、そんな声を聞いた気がした。
闇がすべてを飲み込んだ。
展開が早くて済みませんm(_ _)m
すこし、内容が薄いかと思いますが、そこは目をつぶって下さい
それはおいといて、20000pv突破しました!!
皆さん、ありがとうございます!!
これからも更新するので、ぜひ見て下さい!!!




