第二十三節 旅立つ者と引き留める者
ユリナは、街道を全力で走っていた。
理由は明快だ。
連合長に今回の作戦の犠牲者を報告した後だった。
「そういえば、ソルト君が旅に出ると行っていたのだけど、理由を知らないかい?」
全く持って聞いていない。
なぜ? それを問い詰めるために彼を追いかけている。
「…………!!」
前方に人影が見えた。
*-*-*
「はぁ……」
ソルトは思わずため息をついてしまう。
食料は買い込んでいたはずなのだからまだまだ余っている。そう思っていたのだ。
だが、実際には3日分しか無かった。
「いつの間に食べたんだよ……」
一度街に戻ろうかと考えたが、そんな時間の余裕はないとキッパリ諦めた。
刹那、展開していた索敵魔法が反応した。
「――――!?」
弾かれたように振り向き、腰の剣を抜く。
が、走ってきた人物は
「ソルト君――――!」
ユリナだった。
「どうしたんだ?」
「はぁ……はぁ…………」
「息切れ過ぎるだろ」
呆れながら言う。
「はぁ…………ゴメン、もう大丈夫」
「で、なんでそんなに必死なんだ?」
「それはこっちの台詞だよ!!」
ユリナが身を乗り出してくる。
「私たちに言わずにどこに行こうとしてたの!? どうして、教えてくれないの!?」
「それは……」
思わず口ごもる。
「それは?」
「…………」
答えに困る。どうすればごまかせるだろうか?
「いや、何となく旅に出たいなぁ~みたいな?」
すると、ユリナが満面の笑みを浮かべながら腰の細剣を手に取り……
「わかった、解ったからちょっと待って!?」
「で、なんでなの?」
「はぁ……めんどくさいなぁ」
ユリナが無言で細剣を少しだけ抜く。
「弟から手紙が来たんだ。だから、急いで会いに行かないといけないから連絡する余裕もなかったんだよ」
だが、ユリナのジトッっとした視線は変わらない。
「ホント?」
「ホントホント」
どうやらごまかし切れそうだ。そう思ったところで、予期せぬ追求をされた。
「じゃあ、なんで宿屋まで解約してるの? しかも、それ『冥府の指輪』でしょ? 弟に会うだけの旅のために使う道具じゃないよ」
内心で思わず毒づく。ごまかしきれない。そう思った。
「もう、行かないと」
そう言ってその場を離れようと振り向くと、右手を捕まれた。
「どうして隠すの? 仲間でしょ?」
綺麗事を言うな
心の中で絶叫する。どうせ、刻印のことを知った途端態度が変わるのは目に見えている。
「一つだけ教えるよ。俺は…………人間じゃない」
振り向きながらこれだけのことを告げるのに、誰にも心を許していなかったはずなのに幻想の痛みが心を切り裂く。
彼の目は真紅に染まっていた。
「…………そ……れは…………『殲光眼』」
それは恐怖の、破壊の象徴。
彼女の顔は、恐怖と驚愕に染まっていた。
13000PV超えました!!
思ったよりも順調です! 更新頑張るので、楽しんで下さい!




