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孤高の魔術士  作者: 雪の里
第一章 『少年の決意』
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第十二節 刻印の力

 懐かしい感覚が体を包む。


――サア、ちからヲ解放シロ!


 声が聞こえる。


 右目の血のような輝きが強まる。


「「「グアァァァ!!」」」


 三体のスコルピオンの雄叫びが重なる。


 その瞬間、視界に数値が、グラフが、攻撃予測範囲が表示される。


 これが、『殲光眼グリームアイズ』の力の一つだ。


 『属性:炎撃系広範囲魔法攻撃/威力:80/攻撃速度:中』


 それに加え、攻撃予測範囲が赤く染まる。


 それを見て、ソルトは跳躍する。


 刹那、ソルトがさっきまで立っていた辺りを爆炎が包む。


「ははははははは」


 意識していないのに、口から声が漏れる。


 次々と攻撃が繰り出されるが、ソルトはそれをよけ続ける。


 よけて、よけて、またよける。


「その程度なのか?」


 ソルトの声に、イラだったのか、攻撃が激しくなる。


 だが、当たらない。


 擦りもしない。


 紙一重で攻撃をよけながら、ソルトは狂ったように笑う。


「あはははははははははははははは!!」


 もう一度、範囲攻撃が来る。


 それをふたたび跳躍してよけ、空中で声を発する。


「その程度なら、もうおまえらに用はない」


 彼の全身から、漆黒の魔力が吹き出し、炎のように揺らめいている。


 魔力には、1人1人の固有の色がある。


 色によって、得意な魔法も変わる。


 緑に近ければ防御系の魔法が、赤や青に近ければ攻撃系の魔法が、白に近ければ回復系の魔法がそれぞ

れ得意である。


 だが、今のソルトから吹き出している魔力の色はどれにも分類されない黒だ。


 さらに、彼の魔力の色は淡い蒼である。


 何が起こっているのか?


 それは、ソルトにも分からない。


 だが、こいつらを殺すことが出来る力だと言うことは分かる。


 空中でソルトは剣帯から、愛剣を抜く。


 純白の刃が、漆黒に染まっていた。


 魔力の尾を炎のように引きながら、スコルピオンに内一体の方へ移動する。


 そして、着地する動作とともに、スコルピオンを切り裂く。


「グオォォォォォォォ!?」


 断末魔の叫びを上げながら、火の粉となって消える。


 一撃だった。


 あれだけ苦戦した敵を、ソルトは一撃で倒してしまった。


 これが、彼の力だ。


 決して欲しかったわけではない。


 誰かに譲ることが出来るなら、迷わず譲るだろう。


 なぜなら、この力は呪われているから。


 忌み嫌われているから。


 この瞳の呼び名は、たくさんある。


 『血に染まった眼』 『虐殺の刻印』 『呪われし瞳』まだあるが、その中でも『殲光眼(グリームア

イズ』意味は、殲滅の光を放つ眼。


 これを聞いたとき、確かにそうだと思った。


 彼は、この力で敵を殺してきたから。


 忌み嫌われし化物。


 そう呼ばれた。


「……っ!?」


 幻想の痛みが走る。


 すると、また声が聞こえる。


――コンナ所デ立チ止マッテイル暇ハナイ。殺セ、敵ヲ殺セ。


「ああ、分かってるよ」


 ふたたび襲ってきた敵の猛攻をよけながら、そう答える。


「殺せば、いいんだろ?」


 満足したような笑いが聞こえる。


「はっ……!!」


 一瞬でスコルピオンの下に潜り込む。


 スコルピオンは真上へ跳躍した。


 どうやら、彼を押しつぶす気のようだ。


 落ちてくる敵に向かって、左の手を向ける。


 真紅の魔法陣が現れ、その中心から莫大な衝撃波が発生する。


 それだけでで、また一体なぎ払われる。


 異常、異常な強さだ。


 ソルトはこちらを向いている一体に向き直り、残像すら残さずに一瞬で移動する。


 そのまま顔面に蹴りをたたき込むと、遙かに巨大ははずのスコルピオンが吹っ飛んでいく。


 結界で閉じてある入り口の瓦礫の山を吹き飛ばし、外に飛んでいく。


 空中に足場を作り、もう一度跳躍する。


 地面にひっくり返っているスコルピオンの腹に乗る。


「……終わりだ」


 右手に持っている剣を限界まで引き絞り、スコルピオンの顔面に向かって魔法を併用した突きを放つ。


 近距離専用魔法剣技『貫通破砕ピアーシング・ストライク


 漆黒の波動を伴って放たれた突きは、スコルピオンの顔面を吹き飛ばす。


 戦闘が終わるとともに、何かが去っていく感覚を覚えた。


 ソルトの右目は、漆黒の、深い悲しみを覚えたいつもの目に戻っていた。

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