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漫画原作(作画済)

アクマで Bin-Bo神

作者: 阿僧祇

■登場人物>

亜璃寿:亜璃寿=バーモント。くるくるっ毛のハーフの女の子。中3。学校は私立と

 いうことで、制服はかっこよいデザインをイメージ☆

ビン:貧乏神の少年。ボロボロの着物を着ている時代劇風でも、ホームレス・ファッ

 ションの現代風でもOKです。

ダド:亜璃寿の父親。金髪の白人。

マム:亜璃寿の母親。日本人。


牧師さん:教会の牧師さん

上司:バイト先の上司


 ○街の小さな教会

  讃美歌の声が響く。


 ○教会の中

  一口グラスのぶどう酒と、パンのかけらが配られてる。

  亜璃寿、ぶどう酒を飲んだ直後…

亜璃寿「うぇっ」

マム「こら。教会では静かに。」

亜璃寿「はぁい、ママ」

  でも、気持ち悪そうな顔。

亜璃寿(心の声)「ぶどう酒に種が入ってたのかな? 飲み込んじゃった……」


 ○駐車場

  教会の前の狭い駐車場。傷んだ古い乗用車が置いてある。

  何か小さな物(妖精?)が、止まってる車の間を走っていくのが見える。

  亜璃寿、それに気がついて

亜璃寿「?」

ダド「亜璃寿、帰るよ?」

亜璃寿「ダド、いま、そこ走って行ったの、なに?」

ダド「??? 何も見なかったぞ?」


 ○ダドの運転する車の中。

ダド「ファミレスでも寄って何か食べていこうか?」

亜璃寿「ダド! だめでしょ、家計が苦しいんだから。」

マム「そうね…家へ帰って、何か作りましょう。」

ダド「日本は生活費が高いよなあ。」(溜息)

亜璃寿「ダド…後悔してるの?」

ダド「ン?」

亜璃寿「『米国女性と結婚、日本に家、中国人の執事、英国人のシェフ』って、

 『最悪の生活』なんでしょう?」「ダドはその1/4をやっちゃってるもんね。」

ダド「でも『日本女性と結婚、米国に家、英国人の執事、中国人のシェフ』っていう

 『最高の生活』も、1/4はやってるからね。」「愛してるよ、ダーリン。」

マム「あらン-☆」

亜璃寿「運転しながらキスしないで! 危ない!」(悲鳴)


 ○自宅。

  自宅は、二階建てだけれどちょっとボロい住宅。

  亜璃寿、着替えて自室で寝転がってる。

亜璃寿「ふう。ダトとマムはらぶらぶで、幸せそうだけど…なぜかうちって、お金が

 いつも足りない気味なのよね。」

  溜息をつきながら天井を見ていると。

亜璃寿「あら?」

ビン「ん?」

  空中に浮いてるビンが。

亜璃寿「ちょっと、何、あなた?」

ビン「ボクが見えるの?」「ボクは貧乏神。貧乏神のビン。」

  ビン、ひらりと着地。

亜璃寿「び、貧乏神ぃぃぃ!? そんなもの、聖書の教えに反するわ!」

ビン「かもね。西洋ではデビルって言われてる。」

亜璃寿「デ、デビ……悪魔よ、去れーーーっ!!」

  ばたばたばた……

マム「どうしたの、大声出して?」

亜璃寿「マム! そこに悪魔が!」

  マム、亜璃寿の額に手。

亜璃寿「熱じゃないってば! そこ、そこ!」

ビン「ムダムダ。僕は普通の人には見えないんだ。」


マム「受験勉強で疲れたのかしら? 今日は、栄養のあるものを作るから、それを

 食べてゆっくりやすみなさい。」


  マムは部屋を出て行く。


  ビンと亜璃寿は同時に溜息。

ビン「君はワンオブミリオンのぶどう酒を飲んだんだね?」

亜璃寿「なにそれ?」

ビン「100万本に1本、特別な種が混ざったぶどう酒ができるんだ。その種のかけら

 を飲み込んじゃった人は、精霊や悪魔が見えるようになる。」

亜璃寿「悪魔なんか見えたって嬉しくないわよ~!」

ビン「だから、日本では悪魔じゃなくて貧乏神っていうんだってば。」

亜璃寿「で、その貧乏神の悪魔がなんでウチにいるのよ? 出てってよ!」

ビン「居たくているわけじゃないよ。貧乏神は貧乏に呼ばれてくるんだ。」

亜璃寿「どういうこと?」

  ビン、講義するようなポーズで

ビン「お金は寂しがり屋だから、仲間がたくさん居るところに集まるんだ。で、お金

 が淋しがってるところは貧乏になる。」「貧乏になったところには涙と溜息が起こる。

 涙と溜息は貧乏神を呼んで、その家はいっそう貧乏に……」

亜璃寿「貧乏は嫌っ! みてなさい、絶対追い出してやるから!」

  亜璃寿、聖書にロザリオにマクラに…と様々なものを投げつける。

ビン「そんな、聖書やロザリオを振り回さなくても…お金が貯まれば自動的に出て

 行くよう。」 


 ○駅の売店前

  亜璃寿、「短気アルバイトで一気に稼ぐ」と特集記事が見えてる求人雑誌を手に。


 ○玄関口、朝。

  マムと仕事に行く前のダドが、学校へ行く亜璃寿を見送る。

マム「ねえ亜璃寿…お金の心配はしなくていいから、受験勉強に……」

亜璃寿「ううん。私も家族の役に立ちたいの。脱・貧乏!」

ダド「すまんねえ、亜璃寿。母国に引っ越せばこんな苦労はさせないんだけど…」

マム「ごめんなさい、私の両親が海外生活は許さないなんて言ったばかりに。」

ダド「君のせいじゃない。どこにいても君と一緒なら僕は幸せさ、ダーリン。」

マム「あらン-☆」

亜璃寿「朝っぱらから娘の前でキスしないで! バイトで帰りは遅くなるからね。

 いってきまーす。」


 ○亜璃寿の部屋。

キャプション「一ヶ月後。」

  おこづかい帳を広げ、現金を計算中。

亜璃寿「時給750円のアルバイトで5万円ちょっと稼いだわ。」

ビン「がんばったね。」

亜璃寿「まだ出て行かないの?」

ビン「5万円じゃ家賃にも足りないだろ。」

亜璃寿「ううう、なんとかして稼がないと…」

  ビン、しらけた表情で。

ビン「そんなに僕に出ていってほしい?」

亜璃寿「あたりまえでしょ!」

ビン「お金持ちがそんなに好き?」

亜璃寿「当然でしょ! ハインリッヒ=シュリーマンは紹介状一枚の一文無しから身を

 起こして世界有数の大金持になったのよ! 私にだってできないわけが…」

ビン「シュリーマンはトロイ遺跡の発掘という目標があったからだよ。君に何か目標

 があるの?」

  亜璃寿、ちょっと考えてから

亜璃寿「……あるわよ!」

ビン「どんな?」

亜璃寿「いい学校に行って」「性格も能力も財産も申し分ないクリスチャンの男の人

 と出会い」「結婚して男の子1人女の子2人を産んで」「シェットランド・シープ

 ドッグのいる家で」「幸せに暮らすのよ!」

ビン「それは目標じゃ無くて希望的観測って言うんだよ…。」

亜璃寿「ほっといて!」


 ○アルバイト

  スーパーでのレジ係。

  ビル清掃。

  引越し屋の手伝い。(!?)

  などなど。女の子でもやってそうなものならなんでもいいです。


 ○亜璃寿の部屋、夜

  亜璃寿、へたり込んでる。

ビン「仕事に失敗はつきものだってば。そう落ち込まないで」

亜璃寿「うん…」

  亜璃寿、ふと気がついて

亜璃寿「ビンの仕事って、貧乏神?」

ビン「そうだけど?」

亜璃寿「やっぱり失敗すること、あるの?」

ビン「…あるけど」

亜璃寿「じゃ、うちを貧乏にしとくことに失敗してくれない?」

ビン(呆れ笑い)「…失敗って、ワザとできるものじゃないと思うよ?」

亜璃寿「そ…そうよね。あはは……」(引きつり笑い)「……受験勉強、しよ。高校は、

 学費の安い国立付属に行かなきゃ」

ビン「…………」

  机に向かう亜璃寿を後ろで見ながらビンは複雑な表情。


  (時間経過)

  亜璃寿は机に突っ伏して寝息を立ててる。ノートや参考書を開き、シャーペン

  を手に持ったまま。

  ビン、心配そうな表情で後ろから覗き込み、

  毛布をかけて

ビン「おやすみ」


 ○事務所

上司「スミマセンじゃ済まないんだよ!」

亜璃寿「すみません! すみません!」

上司「疲れていたのか何だか知らないけどね。こっちは大損害なんだ! 君の給料じゃ

 足りないぞ、ご両親にも弁償してもらわないと……」


 ○亜璃寿の部屋

ビン「ええっ、展示品をぶっ壊しちゃったの?」(大汗)

  亜璃寿、半泣き。

亜璃寿「まさかあんな所で転ぶなんて…」

ビン「働くだけマイナスになっちゃったってこと? …運の悪い話」

亜璃寿「あんたが居るせいじゃないの!?」

ビン「そうかもしれないけどさ。」

亜璃寿(怒)「…出てって! 出てってよおっ!」

ビン「…………ごめん」

亜璃寿(泣)「え~ん、これで一層貧乏よ~!」

ビン「貧乏から抜け出すのは簡単なことじゃないんだよ。」「飽くなき努力と」

 「欲望に裏付けられた執念」「それに幸運が必要なのさ」

ビン「君のパパは真面目なクリスチャンで、努力以外の2つが無いんだ」

亜璃寿「うわああああん!」

  亜璃寿、大泣き。


  やがて泣き疲れ、ベッドに突っ伏して眠ってしまう亜璃寿。


  暗い部屋の中。ビンが見下ろす。

  亜璃寿は、泣き疲れた寝顔。

ビン「神様はなんで貧乏神をこの世に作ったんだろう? こんな純粋な魂を苦しめる

 ため?」

  ビン、ペン立てのラシャ切りはさみを見て。

ビン「この数ヶ月、知り合えて楽しかったけれど…もう君が苦しむのは見たくない

 よ。……さよなら、亜璃寿」

  ビンは亜璃寿の瞼に軽く唇で触れると

  ラシャ切りはさみをとり

  自分の喉に向けた。


亜璃寿「ン… ?」

  その時、目が覚めてしまった亜璃寿。

亜璃寿「!!」

  亜璃寿は驚いてビンに飛びつく。

亜璃寿「だめっ! 自殺なんかしたら地獄行きよ!」

ビン「悪魔は地獄行きじゃなくてもといた所に帰るだけじゃないかな?」

亜璃寿「でも駄目っ!」

ビン「貧乏なのは僕のせいだろ? 僕が居なくなれば…」

亜璃寿「嫌っ! もうビンのせいにしたりしないから!! どんなに貧乏になっても、

 私、自分の力でがんばるから! だから死ぬなんて考えないで!」

ビン「……どうして?」

亜璃寿「せっかく、何でも言える友達ができたのに! 嫌よ、そんな別れかた!」

  また泣き出してしまった亜璃寿。

  ビンは溜息をついて

  ハサミをペン立てに戻し、

  亜璃寿の頭を抱いた。


  その時。亜璃寿の両親が突然扉を開ける。


ダド「亜璃寿、亜璃寿!」

亜璃寿「どうしたの、ダド、マム?」

マム「外国にある本社から連絡があったの。ダドの給与計算と必要経費が一桁間違っ

 ていて、いままでに合計100万ドルも、未払金があったんだって!!」

亜璃寿「えっ!? 100万ドル…えっと…」

  亜璃寿、指で計算して

亜璃寿(驚愕)「いっ、いっ、いちおくえん~~~!!?」

ダド「どうも変だと思ってたんだ、税金ばっかり高くて」

マム「あなたって、お金の計算、苦手ですもんね。でもそういう茫洋としたところも

 好きよ☆」

ダド「ダーリン。」

マム「あらン-☆」

亜璃寿「はいはい、キスは自分達の部屋で!」

  両親を部屋から追い出して

  亜璃寿は扉を閉めた。


亜璃寿(嬉しそうに)「ねえ、聞いた、ビン!? これでウチはもう貧乏じゃ……」

  しーーーん。。。

亜璃寿「ビン? ビン!?」

  しーーーん。

亜璃寿「うそ…もしかして……ウチが、貧乏じゃ無くなったから、いなくなっちゃっ

 たの!?」

  部屋の中は静まり返ってる。

亜璃寿「ビン! 返事してよ、ビン! ビぃぃぃーン!」

  …暗転。


 ○新しい家

  ま新しい洋風の一軒家。

  庭にはシェットランドシーブドッグが。

シェットランドシープドッグ(嬉しそうに)「わふ!」

  「お引越しは猫の手運送」と書かれた猫の手マークの引越し屋のトラックが去っ

  ていく。


 ○新しい部屋

  亜璃寿はベッドに座り、

  ぼーっと窓の外を見ていた。

  すると……

声「ふーん…あれからいい学校に入って、シェットランドシープドッグも飼ったんだ?

 次はクリスチャンの結婚相手だね」

  亜璃寿が上を見上げると

亜璃寿「ビン!?」

  しかし、宙に浮いてるビンの服装は華美なもの(福の神風orアラビアンナイト風or

  天使風or英国紳士風など、美々しいイメージ)に変わっていた。

ビン「涙と溜息は貧乏神を呼び、笑う門には福来たる」「君のご両親はとうとう、

 笑顔と愛情で福を勝ち取ったね」

亜璃寿「そんなことより…どうしたの、そのカッコ!?」

  ビン、着地しながら

ビン「ああ僕? こんど、貧乏神から福の神に転職したんだ。福の神のビン。西洋では

 エンジェルって呼ば…」

  亜璃寿、いきおいよくビンに抱き着く。

亜璃寿「ビン、会いたかった! 会いたかった!」

  ビン、亜璃寿を受け止めて最初は驚いていたけれど

  髪を撫でながら、優しい顔で。

ビン「…そんなふうに涙を流してたら、また貧乏神の悪魔がきちゃうかもよ?」

亜璃寿(泣き笑顔)「いいもん……悪魔でも貧乏神でも、それがビンなら!」


  ハートマークが飛びます-☆ (…キスシーンの方がいいですか?)



   <おしまい>

ウェブ漫画 『アクマでBin-Bo神』 (作画:綾瀬美春)

http://mangayomo.com/indies/ribon-cartoonist/view?id=2450

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[一言] おもろいっ!! 金持ちになるっちゅーのは、ホンマに大変なんやなぁ・・・
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