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就職先の決定




「選べ」


机を指で叩きながら、女はもう一度言った。


「このまま罪人として裁かれるか、我々に協力するか」


(はい出ましたテンプレ二択)


いやでもこれ、ゲームとかラノベでよくあるやつだよな。

だいたい「協力する」を選ぶとストーリー進むやつ。


逆に「断る」を選ぶと――


(即バッドエンドだろこれ)


「……ちなみに、断った場合って?」


一応聞くだけ聞いてみる。


女は一切表情を変えずに答えた。


「通常通り裁く」


「ですよねー!」


知ってた!!


俺は天井を仰いだ。石造りの冷たい現実がそこにある。


(異世界来て三分で人生詰みかけたけど、ギリ分岐入ったな……)


「……協力します」


観念してそう言うと、女は小さく頷いた。


「賢明だな」


いや選択肢なかったけどな?


女はペンを取り、書類にさらさらと何かを書き始める。


「ではまず、基本情報の確認からだ。名前は?」


「あー……」


ここで一瞬、変な感覚がよぎる。


そうだ。俺、死んだ……んだよな?


気づいたらここにいた。つまりこれ、完全に“転生”ってやつで――


(名前、そのままでいいのか?)


いや、でも下手に偽るのも怪しいか。


佐藤悠斗さとう ゆうと。26歳」


「……サトウ、ユウト」


女は少しだけ発音に戸惑いながら、書き留める。


「聞き慣れない響きだな。どこの出身だ?」


「えっと……日本っていう国で」


「ニホン……聞いたことがないな」


だろうな!!


俺もこの世界知らんし!!


「まあいい。次に――」


そこまで言って、女はペンを止めた。


「こちらも名乗っておこう」


姿勢を正し、俺をまっすぐ見る。


「リシェル・アルヴェイン。20歳だ」


(若っ)


見た目は大人びてるけど、普通に年下じゃん。


でもこの空気、この立場。どう見ても現場のトップだよな……?


俺がじっと見ていると、リシェルはわずかに眉をひそめた。


「何か?」


「いや、その……若いなって」


「……よく言われる」


あ、これ地雷踏んだか?


一瞬空気が冷えた気がしたんだが。


だがリシェルはすぐに視線を逸らし、淡々と続ける。


「一応言っておくが、この立場は実力と実績によるものだ」


「お、おう……」


(絶対それだけじゃないだろ)


というか、さっきから周りの兵士の態度がやけに丁寧なんだよな。


敬語っていうか、明らかに“上”として扱ってる。


俺の視線に気づいたのか、リシェルは少しだけため息をついた。


「……まあ、家の影響がゼロとは言わん」


「やっぱり」


「父がこの国の重鎮でな」


さらっとすごいこと言ったぞこの人。


「え、どのくらい偉い人なんですか?」


「治安機関の統括責任者だ」


「トップじゃん!!」


思わず声が裏返った。


つまり何?この人――


(コネ最強じゃん)


いや、それでこの若さでこのポジションって、納得しかないわ。


でも同時に、めちゃくちゃ厄介な相手に捕まった気がする。


リシェルはそんな俺の反応を気にした様子もなく、話を戻した。


「話を戻すぞ、ユウト」


自然に名前呼びされた。距離近くない?


「お前には、暫定的に“管理下”に入ってもらう」


「管理下?」


「簡単に言えば、監視付きだ」


「やっぱりかー……」


自由な異世界ライフ、完全終了のお知らせ。


リシェルは続ける。


「その代わり、処罰は保留。住居と最低限の生活は保証する」


「え、意外と優しい……?」


「ただし」


はい来た。


絶対ここから本題だ。


「任務には従ってもらう」


「任務?」


「お前のその“規格外の魔術”――」


リシェルの視線が、まっすぐ俺を射抜く。


「放置するには危険すぎる」


ごもっともである。


「そこでだ」


リシェルは椅子から立ち上がり、こちらに歩み寄ってきた。


コツ、コツ、と靴音がやけに響く。


そして、俺の目の前で止まる。


「その力、国のために使え」


近い。というか圧がすごい。


断れる空気じゃない。


というか断ったら人生終了ルートだこれ。


でも――


(なんか、ちょっとワクワクしてる自分がいるんだが)


牢屋スタート、監視付き、半分強制労働。


普通に考えたら最悪だ。


だけど。


「……具体的には、何するんです?」


そう聞くと、リシェルはほんの少しだけ笑った。


「まずは簡単なところからだ」


そして、あっさりとこう言った。


「犯罪者の捕縛に協力してもらう」


「……はい?」


「無許可魔術師のな」





――どうやら俺の異世界生活、



犯罪者から犯罪者ハンターになるところから始まるらしい。





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