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捕まる





気がついたとき、俺は石畳の上に転がっていた。

空はやけに高くて青く、見慣れない形の雲がゆっくり流れている。スマホもない、電線もない、車の音もない。ただ、どこか遠くで鐘の音が鳴っていた。


「……は?」


口から出た声が、自分のものとは思えないほどかすれている。身体を起こそうとすると、やけに軽い。いや、違う。軽いというより――妙に調子がいい。昨日までの肩こりも腰痛も、嘘みたいに消えていた。


その代わり、目の前に広がる光景が、どう考えてもおかしい。


石造りの建物。木製の看板。マントを羽織った人間。腰に剣を下げているやつまでいる。


「……コスプレイベント?」


呟いた瞬間、通りすがりの男に怪訝な顔をされた。いや、違うな。この空気、この匂い、このリアルさ。どう見ても作り物じゃない。


まさか――


「異世界、ってやつか?」


そう言った瞬間、胸の奥が妙にざわついた。試しに手をかざしてみる。意味なんてないはずなのに、なぜか「できる」と確信していた。


――何かが。


「……出ろ」


その一言で、空気が震えた。


次の瞬間、俺の手のひらから、青白い光が弾けた。


ドンッ!!


爆ぜるような音とともに、目の前の木箱が粉々に吹き飛ぶ。破片が四方に散り、近くにいた人間たちが悲鳴を上げて飛び退いた。


「うわっ、ちょ、待っ……!」


やばい。完全にやばい。今の、絶対ただの発光とかじゃない。明らかに攻撃魔法っぽいやつだ。


「な、何者だ貴様!!」


振り向くと、銀色の鎧を着た男たちが数人、こちらに駆け寄ってきていた。胸には見たことのない紋章。腰には剣。顔は真剣そのもの。


「いや違うんです!ちょっと試しただけで――」


「魔術の無許可行使は重罪だ!大人しくしろ!!」


「無許可って何!?」


言い終わる前に、背後から腕をねじ上げられた。驚くほど力が強い。さっきまで身体が軽いとか思ってたのに、全然抵抗できない。


「ちょ、痛っ、痛いって!」


「暴れるな!」


ガチャリ、と金属音がして、手首に何か冷たいものがはめられる。手錠……いや、この世界的には拘束具か。


周囲の視線が突き刺さる。さっきまでのざわめきは、今や完全に「危険人物を見る目」に変わっていた。


「連行する!」


「だから話を――!」


そのまま強引に引きずられ、俺は石畳の上を歩かされる。さっきまで感じていた“異世界に来たワクワク感”は、すでにどこかへ消えていた。


代わりに浮かんできたのは、ひとつの現実的な疑問だ。


(これ……詰んでないか?)


魔法が使える世界に転生した直後、理由も分からず逮捕。


――俺の異世界ライフ、開始三分で終了の危機だった。





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