表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/15

4、突然の3秒間のキス

 始まりのカフェを出た私は、全力で走った。身体が軽い。逃げながら、本当に転生したのだと実感する。


 とにかく店から離れようと走っていると、誰も追いかけて来ないことに気づいた。シャルルさんに、逃げる方がいいと言われたけど、その必要はなかったのかも。



 あっ! ポスターが貼ってある!


 この道は、乙女ゲーム『青に染まるキミの春』の中で登場する石畳の学生通りかな? 道沿いにたくさんの立て看板が並んでいる。いろいろなゲームの攻略対象の名場面がズラリと並んでいて、最高すぎる! 私の知らないゲームもたくさんあるみたい。


 新作の『月の世界の王子様』のポスターもあるけど、やはり、この街ジュエンがメイン舞台の『青にに染まるキミの春』のポスターの方が多いかな。


 くぅ〜っ! スマホがあれば撮り放題なのに、何もできないのが悔しすぎる〜。




「やはり、ここに来たか」


 あれ? この声……。始まりのカフェで、画面を閉じろと言ってくれた声に似てる。


 振り返ると、20代半ばくらいのクールな雰囲気の男性がいた。この街にいる人は、みんな美形だけど、彼は少し異質な感じがする。笑顔じゃないからかな。


「さっき、始まりのカフェにいた人?」


「あぁ、看板通りで惚けていていいのか? 地図を確認しろよ。あの女が言っていたように、主人公には自由なんてないんだぜ?」


「えーっと?」



 意味はわからないけど、私は携帯機に触れた。フレンドのアイコンの横の数字は、もう3桁になっている。地図のアイコンに触れると、私が走った経路には色が付いていた。自分の現在地もわかる。


 ここまではチビタさんと一緒の時にも見たから良いとして、たくさんの動く点も表示されていた。私がいる場所にジワジワと近寄ってくる。


「ちょっと見せろ」


 彼が私の携帯機を覗き込んできた。顔を近づけられて、一瞬ドキッとしてしまった。この人も美形だもんね。


「あの、この点は……」


「あんたの友達だろ? すべての道を塞がれたな。あのまま走ってれば、よかったのに」


 動く点は、どんどん近づいてくる。


「アナタは、なぜ……ひゃっ」


 彼は、私の腕を掴んで、ポスターの看板が並ぶ裏側へと連れて行った。看板に沿って、芝生の分離帯のような物がある。その芝生には、多くの人が座っていた。だけど、なんだか様子がおかしい。



「あんた、中身は成人してるか?」


「えっ? 中身?」


「ここに来たときの話だよ。今の見た目よりも中身年齢が若い、なんてことはないよな?」


「あ、はい。成人してますが?」


 携帯機の地図では、この石畳の道に多くの点が集中している。ポスターの看板でさえぎられてるけど、看板の前には、さっきの店にいた大勢の人が集まって来てるってこと?



「やべっ、もうすぐ時間だ。交渉だ! 3秒間だけ我慢すれば、24時間自由になる。無知なあんたが知りたいことも教える。あんたは助かるし、俺も助かる。どうだ?」


「3秒間? 何をするんですか」


「目を閉じろ。たいしたことじゃない。早く!」


 意味がわからないけど、とりあえず目を閉じる。



 えっ!?



「ちょっ、何するんですか!」


 私が目を閉じた直後に、唇に柔らかい何かが触れた。


「あー、もうっ! 3秒経ってないぞ。もう一度だ! 3秒間だけ我慢しろ!」



 目を閉じてないのに、彼は強引に私の唇を奪った。



 私、なぜ、知らない人とキスをしているの? 3秒を数えたわけじゃないけど、長く感じた。ようやく唇が離れると、今度はキュッと抱きしめられている。


 頭の中は大混乱していた。この人はキス魔なの? 看板の向こう側から、大勢の話し声が聞こえる。何を言っているかは聞き取れないけど。




「よし! なんとか間に合った。突然、悪かったな」


 私から温もりが離れた。彼は芝生に座り、緊張感から解放されたのか、ホッとした穏やかな表情をしている。


「一体、何だったんですか!」


「説明するから、あんたも座りな。この芝生には弱い結界があるからな。内緒話は、芝生に座ってするもんだぜ」


 彼から少し離れた芝生の上に座った。すると、看板の向こう側の音が聞こえなくなった。



「地図を見てみな」


 そう言われて、携帯機の地図を見てみる。ここに密集していた点が、移動を始めたようだ。点に触れると、友達サフスと表示された。名前が出るのね。


「離れて行くみたいですけど、どういう……」


「フレンドを開いてみな」


「いや、自動承認になるんですよね?」


「ならないよ。始まりのカフェでは、フレンドリストを表示していただろ? まぁ、あの店に集まっていた全員が、新たな主人公と友達になりたかったからな。誰でも、同じ結果になる」



 私は、フレンドのアイコンに触れてみた。


 始まりのカフェでは、すぐに空っぽのフレンドリストが表示されたけど、今は、友達申請リストが表示されている。この画面は、乙女ゲームとほぼ同じかな。


 あれ? フレンドリストだけじゃなく、恋人リストもある。


「恋人リストが増えてるけど、開けたらまた自動承認になるのですか?」


「は? あぁ、自動承認に怯えてるのか。じゃあ、自動承認不可にしておけばいいぜ。その下にタスクバーがあるだろ。恋人リストは、恋人の履歴が載るだけだ。履歴だから消せないけどな」


 私は、自動承認を不可にして、恋人リストを開いてみた。


 一人だけ名前がある。それに触れると顔写真と簡単なプロフィールが表示された。



 ───────────────

【名前】セルシード/通称セル

【役割】悪役各種

【所属】開発研究室

【前世】ロッコロッコ星、魔導士

 ───────────────



「えっ! えっ? 恋人って……」


「騒ぐな。残り時間の表示もあるだろ? 3秒間キスをすると、24時間だけ恋人になるんだよ」


 残り時間は、23時間54分と表示されていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ