表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/23

21、クローラというフレンドはいない

 翌朝、私は昨日と同じ食堂に、朝食を食べに行った。昨日は、和定食だったけど、今日は違うみたい。


「お待たせいたしました。本日は、ロッコロッコ星の聖都の定食です」


 うわー。すっごい蛍光色! そういえば、シャルルさんが食べていた酒場の昼定食も、すごい色の液体があったっけ。


「どうやって食べるのでしょうか」


「こちらの細長いものが、パンです。スープに付けて、お召し上がりください。ロッコロッコ星以外の皆さんは、フォークとナイフを使って、切りながら食べられるようです」


「えっ? 切るんですか? どれもドロッとした液体に見えますけど」


「手前のスープは、スプーンですくえると思いますが、少し難しいかもしれません。いろいろとお試しください。初めてご覧になると、色に驚かれる方が多いですが、とても楽しい料理ですよ」


 店員さんは、笑顔で軽く会釈して、離れて行った。楽しい料理? 美味しいではなく、楽しい?


 周りの人達の様子を見てみると、確かに二人以上で食べている人達は、笑顔ね。味は悪くないということかな。



 とりあえず、細長いパンを手に取って、ちょっとかじってみた。焼き立てでカリッと香ばしくて美味しい。やはり、この食堂のクオリティは高い。


 トレイには、大小の深皿が4つ。蛍光色ばかりで、オレンジ、黄色、ピンク、緑かぁ。目がチカチカしてくる。


 蛍光色のオレンジにパンを入れてみると、ポキッと折れた。ええっ? 硬いの? 黄色もパンに付かない。緑は、パンを付けると、まるでスライムのようにミョーンと伸びる。ピンクはパンが刺さる。緑がスープってこと?


 緑をパンにクルクルと巻き取り、やっと深皿から取り出せた。パクッと食べてみる。あっ、美味しい! ポタージュスープに似た味がする。スプーンでは、すくえないな。どれだけ伸びるの?


 フォークとナイフを持って、蛍光色のオレンジの液体に見える物に挑む。フォークを刺しても結構な弾力がある。小さくカットして、口に放り込んだ。あっ、鶏肉のソテーっぽい味がする。透明なオレンジ色のゼリー状なのに、不思議すぎる。


 次は、蛍光色の黄色ね。これは口に入れると、スーッと溶ける。ミルクっぽさもあるけど、何だろう? パンが刺さらない硬さなのに、すぐに溶けて無くなった。


 あとは、蛍光色のピンクね。パンが刺さったままになってるから、パンも一緒に口に入れる。あっ! 冷たくて甘い。デザートなのかな。




「オモチさん、おひとり? ご一緒してもいいかしら。席がいっぱいなのよ」


 不思議な朝食を食べていると、20代前半くらいに見える綺麗な女性に声をかけられた。


「あ、はい、どうぞ」


 私は、携帯機の地図を開いた。同じ宿屋に宿泊しているフレンドさんは、二人いる。どちらだろう?


「あぁ、お話するのは初めてだったわね。私は、クローラよ。始まりのカフェで、お友達になったでしょう?」


 ん? クローラという名前はない。だけど指摘しない方がいいか。絶対にフレンド登録させられる。


「あの、私はまだ、フレンドさんの顔と名前がわかってなくて……」


「たくさんのお友達が急に増えたからかしら。今日は、この後は、どうするの?」


「待ち合わせがあるので、朝食後に出かけます」


「あら、残念ねー。オモチさんは、ウィル推しだと聞いたんだけどー」


 彼女の分の定食が運ばれてくると、何かの魔法を使ったみたい。あっという間にカットされていて、フォークで食べ始めた。



「何か、あるんですか?」


「ええ、今日は、ファン会館に『月の世界の王子様』の攻略対象が来ることになっているわ。ウィルも来るはずよ」


「えっ? ファン会館?」


 そんなのがあるの? ウィルが来ると聞いて、一瞬テンションが上がったけど、危険だという話を思い出した。


「まぁ、主人公は転移屋は無料だから、いつでも会いに行けると思っているかもしれないけど、彼らは、あちこちの街を回っているのよ」


「そうなんですね。待ち合わせているフレンドさんに、話してみてもいいですか? 他のゲームの攻略対象に会いに行く約束をしてるんですけど」


「ええ、構わないわよ。ファン会館には定員があるから、行くなら早めがいいと思うわ。じゃあ、また会いましょう」


 彼女は、素早く食べると、すぐに席を立った。忙しい人なのね。でも、クローラというフレンドはいないんだけど。




 食後の温かい飲み物が届いた。白いからミルクかと思ったら、少し青臭いお茶だった。でも、後味は悪くない。


 ラムネさんとは、待ち合わせ時間を決めてなかった。朝に迎えに行くと言われただけだ。


 地図で、ラムネさんが来てないかを見ることができるのは便利だけど、逆に皆から、私も監視されているということか。



 フレンドのアイコンを開いてリストを表示すると、友好値の順に並び替え機能があることに気づいた。並べ替えてみると、私の胸がトクッと跳ねた。


 一番上に出てきたのは、セルさんだった。そして、シャルルさん、ラムネさん、サフスさん、その下は友好値ゼロだから、ランダムみたい。


 セルさんをポチッと押して、地図と連動させてみた。でも、圏外。シャルルさんも圏外になってる。私の地図は、この街しかないからかな。


 サフスさんは、ここから少し離れた場所にいる。屋台が終わって、家に帰ったのかな。自分で見ててアレだけど、この機能って怖いな。家までバレちゃうのか。


 そしてラムネさんは……あれ? 圏外じゃないのに、表示されない。どういうこと? 移動中? 


 時計を見ると、もうすぐ9時になる。朝に迎えに来るなら、そろそろだよね。



 私は、部屋に戻って、歯磨きをした後、フロントでチェックアウトをした。そして、ミッションになっていた宿泊予約も忘れずに済ませておいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ