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2、物語の始まりの宿

「皆様、私はスープラ社の森下でもありますが、この世界では、案内人キコリと申します」


 スーツ姿だったオジサンが、村人風のお兄さんに変わっている? 船に乗っていた人達も、皆、見た目が変わっていた。互いに顔を見合わせ、ザワザワと騒がしくなってる。私も服が違うから、顔も変わってるのかな。



「キコリさん、どういうこと? アバターって言ってたけど、つねったら痛いし、何かを身につけている感じもないよ」


 見た目は少女なのに、中身はオバサンかな。でも、こういうときは、ビシッと言ってくれる人がいると助かる。


「はい、これからご説明します。皆様にはアバターと言う方が理解していただけると考えました。正確には、転生です。弊社が異世界の方々と開発した、自動入れ替え装置を通っていただきました。皆様の元の身体は、弊社が責任を持ってお預かりしています」


 転生? 生まれ変わってないよね?


「ここにおられる皆様は、弊社の新しいゲーム開発にご協力いただく方々です。この後、ランダムに選ばれた地へ運ばれます。30日以内に、携帯機に送られるミッションをすべてクリアしてください。早く達成していただいた方は、早めに地球に戻っていただくこともできます」


「は? クリアできなかったら、どうなるんだ?」


「クリアしていただけないと、この人工星スープラからは出られません。リタイアの場合は、高額な違約金が発生しますので、ご了承ください」


「そんなの詐欺じゃないか! 地獄行きの船だとわかっていたら、応募なんてしなかったよ」


「ご安心ください。地獄ではありません。これまでの参加者の皆様は、ミッションをクリアしても、元の身体を放棄して、この世界への永住を希望される方も多くいらっしゃるのですよ」


 案内人のお兄さんは笑顔だけど、私も含めて全員が騙されたって思ってるよ。



「さぁ、皆様、新たな物語の扉を開くことに致しましょう。この世界には、魔法が存在します。それでは、良き出会いを。いってらっしゃいませ」


 彼は空に向かって光を放った。私達は降り注いだ光に包まれ、光の粒となって、あちこちに運ばれていく!?


 何なの? このファンタジーは!





 ◇◆◇◆◇




 あれ? ここはどこ?


 目が覚めると、見慣れない天井が見えた。そうか、船の旅に来てるんだっけ。妙にリアルな夢を見たせいか、ちょっと混乱する。


 ピロン!


 着信音のような音が聞こえた。起き上がってみると、ベッドサイドの小さなテーブルに、携帯機が置かれていた。ピカピカと光っているのが気になって、それを手にする。



『おはようございます。オモチ様、お目覚めはいかがでしょうか。この魔道具は、常に持ち歩いてください。また質問などは、メールにて承っております』


 画面には、こんな文章が表示された。次へのマークに触れると、スマホのホーム画面に変わった。だけど、アイコンは二つだけ。メールとミッション?



 オモチという名は、私が乙女ゲームで使っていた名前だ。子供の頃に実家で飼っていた白い猫の名前でもある。ずっと前に死んじゃったけど、後ろ姿が鏡餅みたいで可愛い子だった。正確には、おもちなんだけど、ゲームでは平仮名が使えなかったから、オモチにしていた。



 ミッションのアイコンに未読マークが付いている。私は、そっと触れてみた。



【ミッション1】未達成

 友達を作ろう!

(残り16時間50分)



 何? 友達を作れ? 制限時間があるの? 見学会に行く船の旅のはずなのに、意味がわからない。それより私のスマホは?


 ベッドから降りて、周りを見回したけど、私のスーツケースがない。この部屋は船の個室だろうか。いつの間に運ばれたんだろう?


 リアルすぎる夢を見たせいで、現実との境界線があやふやだった。とりあえずシャワーを浴びてスッキリしたい。部屋にはシャワーはなさそうだから、船内地図をもらわなきゃね。


 スーツケースがないから着替えもない。スーツケースは座席に置きっぱなしかな。いろいろと考えつつ、私は、ふと鏡を見た。


 えっ?


 鏡の中には、驚いた顔で固まっている高校生くらいの可愛い女の子がいる。私はアラサーなのに、どういうこと?




 コンコン!


「オモチさん、おはようございます。朝食は食べられそうかしら」


 優しい女性の声がした。オモチさんって、私のこと?


「は、はい! あの……」


 私が返事をすると、扉が開いた。40代前半くらいの背の低い優しそうな女性が入ってきた。



「何もわからず、ご不安でしょう。私は案内人のチビタと申します。ここは、物語の始まりの宿です。あっ、魔道具は常にポケットに入れておいてくださいね」


「チビタさん? 携帯機が魔道具? 私のスーツケースは……それに、この姿って……」


「オモチさんは、新しいゲーム開発に協力されることになりました。夢を見たと思われる方が多いのですが、その記憶はすべて現実です。オモチさんは、この世界に来られた転生者なのですよ」


 転生者?


「転生者ってことは、死んだのですか?」


「この世界では、器の交換を転生と呼んでいます。オモチさんの以前の身体から、新たに作られたアバターへと、記憶と共に魂が移動した状態です」


「ええっ!? あ、よくわからない説明をされたような気がします。30日以内にミッションをクリアしろとか」


「はい。30日を過ぎてしまうと、元の身体へは戻れなくなります。アース星に帰りたいなら、今日から30日という期限になりますが、ここに永住される方も少なくありませんよ」


 いやいや、絶対に私は帰るよ。地球のことをアース星って呼ぶのね。


「私は帰りたいです」


「では、食堂に移動して、お食事をなさってください。最初のミッションは、私がお手伝いしますね」



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