14、彼は恋人を殺したの?
「お待たせしましたー」
シャルルさんの問いに、どう答えるべきかと考えていると、昼定食が運ばれてきた。同じ注文だったはずなのに、私達の料理は全く違うものだ。
私の前には、ハンバーガーとフライドポテトとオレンジジュース、シャルルさんの前には、不気味な紫色の蛍光色のドロッとした液体と細長い形のパンと白い飲み物が置かれた。
「昼定食の料理が違いますね」
「酒場で昼営業をする店は、これが売りなのよ。乙女ゲームが配信される星の主要な料理を、日替わりで提供しているの。個室は一人では使えないから、アナタに付き合ってもらったのよ。それに私のミッションも一つ達成できたからね」
「えっ? 酒場なら、私も……」
「あら、酒場のミッションが出てたのに、昨夜行かなかったの? あー、恋人が行かせなかったのか。ということは、昨日の恋人はセルシードね? 素早く主人公を捕まえたから、そうじゃないかとは思ってたんだけど」
当てられた! どうしよう……。だけど、下手にごまかすのもマズイ気がする。私は携帯機に触れ、フレンドを開いた。そして、恋人履歴を開く。
彼女の視線を感じる。すぐに返事をしないと、見透かされてしまいそう。ん? 何を見透かされるの? 私は、頭が真っ白になってしまった。
「オモチさん、どうしたの? 恋人履歴で名前を確認したんじゃないの?」
彼女にそう指摘されて、セルさんの名前に触れた。プロフィールは出てくるけど、顔写真は消えている。
「写真が消えていると思って……」
「そうなの? 彼が非表示にしているのかもね。プロフィールは消せないけど、履歴の顔写真を非表示にしている人も少なくないよ。セルシードだったでしょ?」
嘘はつけないな。
「はい、セルシードさんです。でも、通称の方のセルさんと呼んでいました。通称のある人も多いんですか?」
「それで、わざわざ名前を確認してくれたのね。オモチさんは、本当に真面目ね。通称のある人は、乙女ゲームの攻略対象になった人よ」
「えっ? 攻略対象って……」
これは、彼に黙っているようにと言われたことだ。つい、ギクッとしてしまったな。どうしよう……。
「オモチさんは、アース星の新作をプレイしていたんだよね? 結構古いから知らないかな。この人工星スープラが出来てすぐの乙女ゲームの一つだから、制作は15年以上前だと思うよ」
ここはスルーか、いや、突っ込まないとおかしいかな。
「でも、セルさんは20代半ばくらいに見えましたけど、15年以上前に制作されたゲームの攻略対象って……」
「それも知らないのね。アバターは見た目が成長しないのよ。だから一定期間での転生を予定しているみたい。あっ、オモチさんは成長するわよ。アース星の人の魂は魔力に触れてなかったから、アバターに従順だからね」
始まりの宿のチビタさんは、地球の人だったのかな? 40代前半くらいに見えたけど。
「そうなんですね。でも私は永住する気はないんです。あと29日以内にミッションを終えて、帰るつもりです」
シャルルさんは軽く頷くと、無言で食事を始めた。何か考え事をしているみたい。私が何か変なことを言ってしまったのかな。
私も、少し冷めたハンバーガーをかじる。昨日のコンセプトカフェとは、全く味が違う。結構、塩味が強い。昨日の店の方が美味しかったな。
シャルルさんは、不気味な液体をパンですくって食べている。美味しいのかな? 興味はあるけど、食べたいとは思えない色ね。
食事が終わると、シャルルさんは再び口を開く。
「セルシードが、オモチさんに構う理由がわかったよ。私と目的は同じだね。あまりセルシードとは喋りたくないんだけど、協力はできそうかな」
「えっ? 目的って……」
「私は、自分の星に帰りたいのよ。あと43日以内に、主人公にミッションを完了させる必要があるの。だから新たな主人公が来ると、必ず友達になってるんだけど、上手くいかないのよね」
「43日以内?」
「ビンゴミッションのリセット日よ。年に一度、リセットが入るの。今回は、あと一つで、10枚目がクリアできるチャンスなのよ」
ビンゴミッションは、彼が手を出すなと言ってたっけ。
「主人公がミッションを完了すると、シャルルさんは帰れるのですね。じゃあ、セルさんも?」
「私は帰れるけど、セルシードは無理よ。彼は、頻繁に研究室送りになっているもの。街から追い出されたら、フリーミッションがリセットされるから、5枚もクリアできないんじゃないかな」
話が全然わからない……。
シャルルさんは、主人公のミッション30個達成を手伝えば帰れるみたいだけど、セルさんには、何のメリットがあるの?
「ミッションは、全然わからないですけど、シャルルさんとセルさんの目的は、私がミッション30個を達成することですか?」
「あぁ、まだフリーミッションは開放されてないのね。ええ、私もセルシードも、オモチさんを帰れるようにすることが、アナタに近寄った目的よ。ただ、理由は違うわね。私は、自分が星に帰るためだけど、セルシードは罪滅ぼしじゃないかな?」
「罪滅ぼし?」
「ええ、セルシードは、私の親友を殺したのよ」
「えっ……殺した?」
だけど、シャルルさんの表情には、怒りはない。
「ええ。だから、オモチさんのことは、帰らせてあげたいんだと思う。少し似てるのよ。アナタの真面目な性格や、なんだか小動物みたいな雰囲気がね」
「シャルルさんの親友さんに?」
「そうよ。彼女は、私の親友であり、セルシードの本当の恋人だったわ。もう15年以上も経っているのに、セルシードは、ずっと、彼女を忘れてないみたいね」
彼は恋人を殺したの?




