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1、制作地の見学会へ

新作を始めました。

よろしくお願いします。

『さぁ、キミの返事を聞かせてくれないか?』


 そのセリフと同時に、画面いっぱいに赤い薔薇の花びらが舞う。そして表示された二つの選択肢。イエスかノーか。私が選ぶのは、もちろんイエスに決まってる。


『ウィル様と一緒なら、どこへでも行けますわ』


『ありがとう。愛しているよ。画面の向こう側のキミにも会いたいな』


 ん? 画面の向こう側のキミ?


 ハッピーエンドの優雅な音楽と、様々な名場面の回想シーンが流れるエンドロール。ウィル攻略ルートは難しかったから、達成感も半端ない。ウィルの笑顔が最高すぎる!



 この配信型の乙女ゲーム『月の世界の王子様』は、世界中に多くのプレイヤーがいる。制作配信をするスープラ社は、数多くの乙女ゲームを大ヒットさせ、巨大企業へと成長したみたい。


 前作の『青に染まるキミの春』は青春モノで、キュンキュンする乙女ゲームだった。でも、攻略対象の雰囲気や世界観は、この新作ゲームの方が私の感覚に合っている。全8ルートをすべてハッピーエンドで終えることができた。無課金でも頑張れば、スチール画像までコンプリートできるなんて、神仕様すぎる!



『私に会いに来てくれないか?』


 エンドロールの最後に、最高に素敵すぎるウィルが、ドアップで微笑んでいる。今まで、こんな画面はなかったよね。あっ、コンプリートのご褒美かも。


 パシャッとスクショを撮り、余韻にひたっていると、音楽が終わった。だけど、画面はスタート画面に戻らない。


 あれ? あ、選択肢が出てる。


 イエスノーではなく、『会いに行く』『やめておく』の二つ。もしかすると、ファンミーティングがあるのかな?


 私は『会いに行く』を選択した。



 画面は、お知らせに切り替わった。へぇ、制作地の見学会があるのね。船の旅で、期間はひと月か。出航は、運営会社の本社がある神戸からみたい。7月下旬ということは、夏休みを狙ったのかな。参加費用は80万円? 高っ! フリーターの私には無理すぎる。あっ、でも新規のゲーム開発に協力したら、無料って書いてある。


 無料って怪しくない?


 逆に考えれば、ただ働きをしに来ませんか? ってことか。でも、旅の間の食事代や宿泊料も無料だから、ただ働きというわけでもないかな。



 次の画面に進むと、旅の間はアバターで行動するって書いてある。仮装空間にアバターで入るのかな。会いに来てくれないか、というのは、自分のアバターでウィルに会えるってことかも。


 ちょっと面白そう。


 乙女ゲームは自分が主人公になるから、アバターなんてなかったけど、私のアバターとウィルが並んで写真を撮れるなら、最高すぎる!



 さらに次の画面に進むと、アバターを選ぶ画面になった。決まった中から選ぶのではなくて、目も鼻も口も髪型も体型まで、全部自由に組めるようになっている。


 私は結構な時間をかけて、アバターを作った。なんだか、少しだけ自分に似た顔になった気がする。アバターの方が、圧倒的に若くてかわいいんだけど。



 次の画面に進むと応募画面だった。無料参加は抽選になるみたい。まぁ、当然か。


 連絡先を入力し、当たりますようにという願いを込めて、無料の応募ボタンを押した。





 ◇◆◇◆◇




「皆様、私はスープラ社の企画担当の森下と申します。弊社の企画にご参加いただき、ありがとうございます。船は、これより出航いたします」


 私は、当選した!


 豪華な客船に乗るのは、生まれて初めてだから、ちょっと緊張する。他に個室があるのだろうけど、今、私が座っているのは、新幹線のグリーン車のような座席。数列あるから、新幹線というより飛行機かな。


 すぐに飲み物が配られた。それと同時に、スマホのような物も配られている。荷物は座席に置けるスーツケースひとつで、というお願いがあったけど、スマホくらい持ってるよ?



 しばらくすると、外を見ていた人達が文句を言い始めた。窓にシャッターが閉まったのね。夜でもないのに外が見えない状態になっている。


「皆様、これよりワープに入ります。命に関わりますので、絶対に立ち上がらないでください」


 へ? ワープ?


 ザワザワしてるけど、誰も席を立つ人はいない。参加者は、年齢層がわりと高めだから、用心深いのかも。



 ブーンと変な音がして、身体に圧を感じた。水の中に入ったときみたいに、耳には変な感じで音が伝わってくる。不快な感覚に耐えていると、突然ガクンと揺れた。あっ、耳は治ったみたい。


 窓のシャッターが、スーッと開く。窓から見えるのは夜景なのか、窓の外は真っ暗だった。地球の裏側にワープでもしたの? なんて、あり得ないよね。




「皆様、お疲れ様でございました。人工星スープラに到着しました。月より少し大きな人工衛星です。弊社の乙女ゲームは、この人工星スープラにて制作しております」


 えっ? 人工星? 宇宙にいるの? あっ、そういう世界観の演出か。どこかに寄港したのね。


「船から降りるときに、皆様には、申し込み時に申請いただいていたアバターを身につけてもらいます。お配りした携帯機以外のものは、すべてスーツケースに入れ、そのままにしておいてください。アバター装着の妨げになります。なお、お荷物は弊社が責任を持って、お預かりします」


 荷物を座席に置いて行けってこと? 何か特殊な装置の中を通るのかな。スマホと離れるのは不安だけど、持っていたら壊れるのかもしれない。


 私は、配られた携帯機を持ち、他の人達の流れに従って、船から降りていった。



皆様、本作を見つけていただき、ありがとうございます。

今夜、もう一話更新予定です。続けて読んでいただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

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