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唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~  作者: 専攻有理
第4章 それぞれの思い

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25 朝いちばんに

「ツヴァイさん……!? これってお祈りの効果なんでしょうか……!? こんなすぐに会えるなんて……!」


 森の中にある(やしろ)に泊まっていたツヴァイはお参りをしていた2人の少女、リアとアストライアと遭遇した。

 リアとアストライアはツヴァイが社にある館の中にいるとは全く思っていなかったようで、リアは手で口を押さえ、もう心の底からびっくりしたというようなリアクションをし。


「……」


 アストライアは自分の理解を超える存在を見るような目でツヴァイをじっと見つめていた。


「ツヴァイ、1つ聞いていい?」 

「ん? ああ、どうしたアストライア」 

「この社の建物の扉はどれも今まで一度だって開くことはなかった。誰が何をしても開けられなかった。……ツヴァイ、どうやってこの館の扉を開けたの?」

「どうやって……と言われてもな。普通に開けたとしか言いようがない。確かに昨日の昼間に他の建物を調べた時は全然開かなかったけど、この館は俺が最初に中から出るときに開けたし、昨日の夜はあっちの(さい)(かん)の扉を開けて中で夕食を食べたしな」


 そして、ツヴァイがアストライアの質問に答えると。


「……最初に中から開ける……? 外から開けるんじゃなくて……? それに他の館にも入って、しかも夕食を食べた……???」


 一昨日(おととい)までの常識では考えられないそのツヴァイの返答の意味が理解できず、アストライアは一人、悩み始めた。


「あ、あのツヴァイさん。もしかして、シロキツネ様にお会いできたんですか? あの小さくて可愛らしいシロキツネ様に」


 そして、そんなアストライアと代わるようにリアがシロキツネ様に会ったのかと目を輝かせながら尋ねてきたので。


「ああ、会ったよ」


 特に口止めもされていなかったため、ツヴァイはシロキツネ様と会ったことを正直に話した。


「す、すごいです……! カームの街にずっと住んでいてもシロキツネ様と出会えた人って凄く少ないんですよ! リアも小さい頃に(ほう)(じょう)(さい)(かい)()の側を走って行かれるのをお見掛けしたことがあったぐらいで……!」

「あ、やっぱりあの怪火はみんな知ってるのか。あれには本当に助けられた。怪火の誘導がなかったら俺は社に辿り着けなくて、最悪、野宿をすることに────」

「シロキツネ様の怪火に導かれた……!? 本当におとぎ話そのままです……! あ、あの、そのお話、詳しく聞いてもいいですか……?」

「ああ。少し長くなるけど、それでもいいなら」

「……! ぜひお願いします……!」


 そして、おとぎ話をせがむ小さな子供のように話の続きを求めるリアの姿を見て、ツヴァイは穏やかな笑みを浮かべ、本格的に話をするために館から出て2人の側で昨夜の出来事を話し始めた。 


 怪火による誘導や建物の中で豪華な夕食を出されたこと。シロキツネ様と長い時間話したこと。社の裏に隠された温泉があること。等々、現時点ではまだ確定していない転生転移系の話は(はぶ)いたがツヴァイは昨夜に起きた出来事の殆どを2人に話した。


 リアとアストライアにとってそのツヴァイの話は全てが驚愕の内容だったが、中でも2人はシロキツネ様と長時間会話をしたということに特に驚いていた。


 このカイカの森に隣接する街の住人である2人はシロキツネ様が人と会話ができるということは知っていたが、実際に会話をした人間は街に10人もいない上にその全てが自己申告で証拠がなく、実は虚偽の報告ばかりなのでは? と噂されていることもあり、アストライアはツヴァイの話を疑い最初は質問をよくしていたのだが、ツヴァイの返答が納得できるものばかりだったためか。


「……社の建物の中から出てきた規格外の人を常識に当て嵌めようとするのは無意味かも」


 と言って降参し、その後はツヴァイの話をリアと一緒に黙って聞き続けた。


「……ツヴァイさんってリアの想像よりも、もっともっと、すごい方だったんですね……」


 そして、アストライアと共に話を最後まで聞いたリアは感嘆の息を零し、ツヴァイに尊敬の眼差しを向けたのだが。


「……」


……いや、今の話を聞いて、その結論に至るのはちょっとおかしくないか?


 館でいいもの食べて温泉入って寝た話しかしてないようなものなんだけどな……。と、自分の事を必要以上に持ち上げてくれるリアに対し若干気まずくなったツヴァイは。


「あー……、そういえば、2人はどうしてここに?」


 あからさまでもいいから話を変えようと実際に自分が気になっていたことを2人に尋ねた。

 カイカの森のすぐ隣の街に住んでいるとはいえ、こんな早朝に街から結構な距離があるこの社にどうして来たのだろうかとツヴァイは不思議に思っていて。


「安否確認」


 そのツヴァイの疑問に答えてくれたのは未だに恍惚とした表情でツヴァイを見つめているリアではなく、ニュートラルな表情でツヴァイを見ていたアストライアだった。


「……安否確認? それってもしかして俺の……?」

「そう。ツヴァイらしき人が昨日の夜、森の方に向かっていったという話を聞いて、リアがツヴァイのことを心配してたからここに来た」

「……そうだったのか」


 ……そういえば、さっきのお祈りでも俺に会えるようにと願ってくれていたな。


 そして2人がこの社に来た理由を聞き、ツヴァイは2人の思いやりに感謝するのと同時に心配を掛けてしまったことを謝ろうと思ったのだが。

  

「後、わたしはツヴァイの力量を確認しようと思った」

 

 ツヴァイがその言葉を口にする前に、アストライアがよくわからない発言をした。


「……力量の確認って、何のことだ?」


 そして、そのアストライアの言葉に若干の不穏さを感じ取ったツヴァイは謝罪の前に嫌な予感を払拭しようと疑問を口にした。

 

 しかし。 


「ツヴァイ。────わたしと戦って」


 その(おこな)いは嫌な予感が気のせいではなく正しいということを証明するだけで終わった。


「……は? 戦うって、俺がアストライアと……?」


 それからアストライアは混乱するツヴァイに大量のゴブリンをあっという間に倒した銀に輝く槍を向け。


「ツヴァイ。本気で、きて。わたしなら上手に相手ができるから」


 一緒に踊ろうと誘うように、優しく微笑んだ。

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