聖女として生きる話
この世界は誰でも魔法が使える世界。
だいたいが5大魔法と呼ばれる性質のどれかを持っていて、火、水、風、雷、土のいずれかを使える。どれくらいの強さの魔法を使えるのかは、生まれ持った魔力量によって決定される。
さて使える魔法はだいたいが5大魔法と言ったが、別のものはこんなものがある。それは光だ。光には怪我や病気を癒すという力がある。光という性質を持つ者が現れること事態がとても珍しいのだが、まれにそれに加えて桁外れの魔力量をあわせ持った者が現れることがある。
その者は勇者あるいは聖女と呼ばれ、これまでの歴史上で数々の伝説を残したとされている。
ここはある辺境にある小さな村。そこで小さな3人組が遊んでいる。
「シャキーン! 我が光の剣の技を受けてみよー!」
「私も援護するわ!」
「私はみんなを回復するね!」
どうやら村のアレク、ニーナ、ソフィアが一緒に遊んでいるようだ。これは最近習った歴史学のうちの一場面だろう。
「俺の一撃でドラゴンを倒したぞ!」
「ちょっと! アレク! まだ倒すには何個か出す技が足りてないわよ!」
ニーナがアレクに注意をしている。
「まぁまぁ、落ち着いてニーナ」
「でもソフィア! 私の出す技が足りてないのよ!」
「尊敬する大魔法使い様をせっかく演じてるのに!」
「俺は本当は勇者さまの光の一撃で倒したんだと思う! 絶対強いもん!」
「「なんですって!? それはない!」」
「な、なんだよ2人して……」
「伝説では勇者パーティーの皆さんは力を合わせて進んだって書いてあるのよ」
「それは勇者さまが気をつかったんじゃねーの?」
「違うわね! もし勇者さまだけですべての出来事が解決できていたならば、ずっとパーティーを続ける必要はないわ! それに周りの人々が勇者さま以外のパーティーの面々を敬う伝説が残るわけがないもの!」
「それもそっかー。じゃあ今度は別の場面をしよう! ニーナとソフィアが活躍できるやつ!」
「いいね!」
一度は喧嘩になるかと思われたが、また仲良く遊び始めた。村の人々も通りがかるたびに微笑ましそうに見ていく。
「ニーナ! ご飯よー!」
ニーナの母が呼びに来た。一緒にニーナの妹も迎えにきたようだ。
「はーい! じゃあ私、今日は帰るね! 明日の宣誓式楽しみね!」
「わかった! 俺もたぶん夕飯だ。じゃあまた明日!」
「うん! また2人とも明日ー!」
先ほどまで3人がいた広場に残されたのはソフィア1人。ソフィアの家は貧しいため、母はまだ仕事から帰らずに勤務している。
ちなみに宣誓式とは生まれ持った魔法の性質を神から告げてもらうという式だ。実際に神と話すのではなく、神の使いとされている神官さまに告げてもらうのだ。
その方法は神官だけが使えるとされる本に手を乗せると、その本のページに自分の使える魔法と魔力量が記されるのだ。
「痛っ!」
ソフィアが1人で広場に座っていると、ソフィアより小さい男の子が目の前で転んでしまった。この時間に1人だということはソフィアと同じように貧しい家庭なのだろう。
「大丈夫?」
「……痛いよー!」
最初、男の子は自分が転んだことをわかっていなかったが、ソフィアが声をかけたことで痛みを感じるようになったんだろう。泣き始めてしまった。
血が出ているため、なにかおさえるものはないかとソフィアはバッグを探す。…ハンカチを見つけたようだ。軽く水道で濡らして血が出ている場所をおさえる。
「ちょっとしみるよ」
「痛いー!」
「ごめんね……。痛いの痛いの飛んでけ!」
「あれ……痛くない!」
「ほんと? 良かった!」
「ありがとうお姉ちゃん!」
「いえいえ。気をつけてね!」
おまじないが効いたようで、男の子は泣き顔から笑顔に変わった。そしてニコニコと広場から去っていった。ソフィアのおまじないは良く効くと、幼なじみのアレクとニーナがよく言っている。
「ソフィアー! ごめんねー! 夕飯作ろー!」
ソフィアの母が迎えにきたようだ。ソフィアは嬉しそうに母に駆け寄っていく。そんなソフィアに母は申し訳なさそうな顔をしながら、ソフィアの話を聞く。
ソフィアの家は母とソフィアの2人きりで互いに支え合いながら生活をしている。
そしてしばらくするとソフィアの家から美味しそうな食事の匂いが漂ってくるようになった。
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今日は村の皆が楽しみにしている宣誓式の日。あの3人組もすでに教会前に集まって、どの性質の魔法が使えるか予想をたてあっている。
「俺は光! きっと勇者になるんだ!」
「あんたはもっと人の心を考えられるようにならないと勇者になんかなれないわよ!」
「なんだと!? ニーナだってそんなトゲトゲしてる大魔法使いなんていないぞ! きっと魔力量しょぼいんじゃねーの? 笑」
「なんですって!」
ニーナとアレクは今日も言い合いをしている。それをソフィアは仲良しだなと思いつつ、少しなだめる。
「きっと2人ともすごい魔法が使えると思うよ! だっていつも私を助けてくれるもん!」
ソフィアは心優しいため、村の意地悪な子供たちにいじめられることがよくある。そのときにいつも助けてくれるのはこの2人である。
「きゃー! ソフィアどうしてそんなに優しいの!? きっとあいつらもソフィアが可愛いからいじめるんだわ!」
「ソフィア! いじめられたらいつでも俺に言えよ! 悪いやつはぶっ倒してやる!」
「だからあんたはなんでそんなに乱暴なの!?」
またソフィアを挟んで言い合いが始まった。
すると教会の扉が開き、神官さまが中から出てきた。式が始まるのだろう。
「どうぞ希望の子供たち。中へお入りください」
中に入ると想像より広く、天井近くの壁にあるステンドグラスが様々な光の模様を作り出している。
続々と村の子供たちが中に入ってくる。あのいつもソフィアをいじめる子供たちもいる。特にいじめてくるのは村長の息子のミゲルだ。
村長は優しいのにどうしてミゲルは意地悪なのかソフィアにはわからない。
実はニーナの言うとおり、ミゲルはソフィアが可愛いからちょっかいをかけてくるのだ。だがその気持ちにはソフィアは一切気づいていない。
「では式を始めていきます。ルーナさんきてください……」
とうとう式が開始された。一番地に住んでいるルーナから順々に呼ばれ、自身の魔法性質と魔力量が発表されていく。
「ではミゲルくん」
「はい!」
「げっ! ミゲルよ! きっとしょぼいに決まってるわ!」
「ちょっとニーナ……!」
ニーナはソフィアをいじめるミゲルを敵対視している。
「性質は火。魔力量は……なんと1000!? すごい逸材だ!」
神官さまがミゲルの結果を見て驚いている。その理由は、多くの人が魔力量は100ほどで500を越すと珍しいと言われるためだ。一般的に、1000は中央都市に集まる騎士の幹部が勤まるほどだと言われている。
中央都市とは現在ソフィアたちがいる村などの集合体の中心にある都市だ。都市の周りの者たちは様々なものを求め、都市に集まると有名である。
ミゲルの魔力量を活かすには中央都市が一番だろう。神官も同様に思ったため、中央都市の教会へ推薦書を書き始めている。
「すみません……。取り乱しました。さて続けましょう」
続々と子供たちの発表が行われる。ついに3人組の番になった。
「ニーナさん性質は水、魔力量は400」
「アレクさん性質は風、魔力量は300」
2人の魔力量はミゲルには届かなかったが、ミゲルを除けば1位、2位の魔力量だ。この結果に2人は悔しがっていたが、神官は豊作の年だと喜んでいた。
この魔力量であれば、中央都市に行くのではなく村の最前線で魔物を追い払う役割が与えられることが多い。2人のそれぞれの両親もその役割をしているため、2人はその役割を継ぐつもりのようだ。
「では最後にソフィアさん」
「はい!」
「性質は……光!? 魔力量は……10000!? これは……聖女だ!」
教会内のざわめきが大きくなる。皆が信じられない顔をしてソフィアを見つめている。
神官はすぐに中央都市の教会に通信を送ったようでバタバタとソフィアの準備を整え始めた。
「ソフィアさん! 中央都市からすぐに迎えが来るそうです!」
「待ってください! 私まだ中央都市に行くなんて決めてないです! 母がこの村にいるし……」
「聖女や勇者となったものは国のために中央都市に行く必要があるのです」
「そんな……強制なんですか……」
「悲観的にならないで、これは宿命なのです」
ソフィアはそんな宿命などに囚われたくはなかった。だがニーナやアレクが嬉しそうにこちらを見ているし、村の人々もだんだんと集まってきて期待した目を向けている。断れないのだとソフィアは悟った。
「失礼します! 聖女が誕生されたとお聞きしましたのでお迎えにあがりました」
「聖女さまはどちらに?」
「こちらです! このソフィアさんが聖女さまです!」
ぞろぞろと教会に騎士たちが入ってくる。神官が連絡して当日中にましてや、式が終わってすぐに迎えが来るなんてソフィアは思っていなかった。
「すみません! 騎士さませめて考える時間をくださいませんか?」
「申し訳ありません。現在魔物との戦闘が激化しております。一刻を争うのです。ですので、すぐにでもここをたたなければなりません!」
「私にはそんな力も知識もありません」
「いえ聖女さまがいらっしゃるだけで戦況が一気に変わるのです」
ここにいる人々は皆、ソフィアに期待をしている。だがソフィアは思うのだ。例え聖女であったとしても、これまでただの少女だった自分に一体何ができるというのかと。
「ソフィア!」
「お母さん!」
やっと教会に母がやってきてくれた。きっと反対してくれるはずとソフィアは望んだ。だが現実は非情だ。
「聖女さまに選ばれたなんて……お母さんは誇りに思うわ。気をつけてね」
「聖女さまのお母様ですか! それならば……」
ソフィアの母も聖女が世界を救うという宿命に抗うつもりはないようだ。
ソフィア自身もわかってはいるのだ。ただ自分が伝説のような優れた人になれるという自信がないのだ。もし自分の力不足で世界が滅びてしまったら……大切な人たちが危険にさらされてしまったら……。そういったことが怖いだけ。
ただひとりのソフィアとして見てほしい。聖女と判明したときからソフィアという人間が消えて、聖女さまが生まれた気がする。
聖女の家族は安全のために、安定した生活を送れる場所と資金が提供されるらしい。それならば母のために聖女になろうとソフィアは決めた。
「わかりました。私は中央都市に行きます」
「さすが聖女さま! 世界をお救いください!」
「うちの村から聖女さまが誕生するとは!」
ソフィアが宣言すると人々は沸き上がった。
「ではさっそくですが、こちらの馬車にお乗りください」
「はい」
「すみません! 俺も連れていってください!」
ソフィアが馬車に乗るというところで、ミゲルが突然声をあげた。
「君は?」
「彼はミゲルくんで、魔力量1000の逸材です!」
「1000! よしでは中央都市に一緒に行こうか」
「ありがとうございます!」
「馬車は……聖女さまご一緒でも大丈夫ですか?」
「えっ! 大丈夫です」
騎士に問われて思わず了承すると、ソフィアの乗る馬車にミゲルが乗り込んできた。
「では出しますね」
そのままソフィアとミゲルを乗せた馬車は村を出発した。窓から村の人々が小さくなっていくのが見える。
2人が乗る馬車は、馬車と行っても本物の馬が引いてるのではなく、魔法で作られた馬が引いてるのだそうだ。そのため本物の馬車と比べ、何倍も早い時間で移動できるのだそうだ。
「ミゲルどうして一緒に? 推薦書があればあとからでも中央都市に行けるんでしょ?」
「だってソフィアみたいな弱虫が聖女なんて大変だろ? だから俺が特別についてきてやったんだよ」
「でも聖女だから大丈夫なんじゃない……」
「そんな泣きそうな顔して何言ってるんだよ」
「もしかして私が泣きそうだからついてきてくれたの?」
「別に……」
ミゲルは明言しなかったが、彼の耳を見ればすぐにわかった。耳が真っ赤に染まっている。
ソフィアは誰も自分の泣きそうな顔に気づいてくれなかったのに、大嫌いなミゲルが気づいてくれたことがなぜだかとても嬉しかった。
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2人を乗せた馬車は王宮に到着した。この国は代々王家が治めている。初代王は勇者であったと伝承が残っている。
2人が謁見の間に案内されると、そこには国王、王妃、第一王子、第二王子がすでにいらっしゃった。第二王子はミゲルやソフィアと同じ年だとの噂だ。
「この者が……?」
「はい。こちらの少女はソフィアさまといって聖女さまでございます」
「ふむ。可愛らしい聖女さまだな。ぜひ世界を救ってほしい」
国王がそう言って頭をさげた。いくら聖女とはいえ年端もいかぬ少女に国王が頭をさげたことで、周りの家臣たちは慌てている。ソフィアは慌てて答えた。
「はい、聖女として頑張りたいと思います。彼と一緒に」
「これは頼もしい。それでそこの彼は?」
「はい! ミゲルと申します。聖女さまと同じ村出身で、魔力量が多いため護衛として参りました」
「ほう……どれくらいの魔力量だ?」
「1000でございます」
「1000!?」
ミゲルが自己紹介と共に自身の魔力量を告げると、皆驚きの声をあげた。実はここ数年1000の魔力量を持つものは現れていないためだ。
だかソフィアはそんな皆の驚き様ではなく、ミゲルがまともな敬語を長々と話したことに驚いていた。ソフィアの中では彼は子供みたいで、自分より遥かに精神年齢が低いと思っていたからだ。
「ほうほう、なんとも頼もしい2人だな」
「えぇこれで平和な世界ができるかもしれませんね!」
「それに陛下のご子息さまたちも頼もしい限りです」
「あぁ。これから2人は訓練を受けつつ、実戦に行くとは思うのだが、第二王子のレオンも一緒に同行させようと思う」
「ご紹介にあずかりましたレオンと申します。ソフィア様、ミゲル様よろしくお願いいたします」
「「よろしくお願いします。」」
「レオン様、私のことはミゲルとお呼びください。それに敬語はなくて大丈夫です」
「わかりました。よろしくミゲル」
まるで伝承にあった勇者パーティーの誕生のときのように、王宮中がお祭りのように盛り上がった。
そこからの日々は、ミゲルとレオンは魔法や剣を使った訓練。ソフィアは光魔法の練習。そして国の実力者数人と魔物退治の実戦を繰り返した。時々送られてくるニーナやアレクからの手紙に、ミゲルと2人で考えながら返信をした。
そんな日々が過ぎ、数年が過ぎた。とうとう旅に出る時がきた。パーティーメンバーを選ぶ必要があった。ミゲルとレオンの他に実戦のときに出会った獣人の少女エリー、国一番の魔法学校の主席リリア、そしてソフィアの5人で旅に出ることにした。
出発の日、たくさんの人が見送りに出てきたため、まるでパレードのように聖女パーティーは出発した。
冒険では様々な出来事があった。エリーが間違えて毒きのこを食べたり、レオンが初めて料理をしたためゲキマズ料理ができたり、面白いことがたくさんあった。
ミゲルが魔法の威力を間違えて、山を1つ吹き飛ばした際には(誰も住んでない山。汚染されてたため動物はいなかった。)ソフィアは年甲斐もなく、小さな子供のように喧嘩した。
そして伝説であったように、ソフィアたちも悪行をしていたドラゴンの討伐をすることができた。
ドラゴンを倒したときに、ソフィアは子供のときにしていた遊びが現実になったと信じられない気持ちでいた。皆が喜んでいるときに、ニーナとアレクを思い出して感傷に浸っていた。
「アレクとニーナでも思い出した?」
「ミゲル! どうしてわかったの?」
「実はいつも広場でいつも遊んでたろ? あれ見てたんだよ」
「何? まぜてほしかったの? 笑」
「……そうかもしれない笑」
ミゲルにはいくつになってもソフィアの感情はお見通しのようだ。
ドラゴンを倒した聖女パーティーのもとに、魔王の情報が入ってきた。魔王は魔物を操って、世界を混乱に陥れた原因である。
その魔王がとある村に現れたというのだ。その村の名前を聞いたときに、ソフィアとミゲルは驚愕した。なぜならば、その村は2人の生まれ育った村だからだ。
焦る気持ちで聖女パーティーはあの村についた。
ついたときには様々な建物が壊され、怪我人が大勢いる状態だった。知り合いもたくさん見える。
本当は村から魔王を離して戦いたかったが、聖女の生まれ故郷とわかっているのか、魔王はそこから離れようとしない。仕方なく、聖女パーティーは魔王との戦闘をそこで開始した。皮肉にもそこはかつて村の広場だった場所だった。
魔王との一進一退の戦いが続く。だがその均衡が崩れるときが来る。魔王の一撃で聖女パーティーの面々と民間人がなぎ払われたのだ。そして魔王は手をのばす。
右手には一番近くに倒れていたレオンが。左手には巻き込まれて倒れていたニーナが捕まれていた。ソフィアは息を飲む。
本当はどちらも助けたい。だがパーティーの面々は満身創痍で片手の人間を救うのだけで限界だ。片手を切って救っている間に、もう1人は握り潰されてしまうだろう。
村の人々はどちらも助けられるんだろうという希望の目を向けてくる。エリーは気絶している。リリアはレオンを助けた方が生存率があがると訴えかける。……ミゲルは? ソフィアは恐る恐るミゲルを見る。
「おまえはニーナを救え。俺はレオンを救う」
ミゲルがそう言って笑う。だけれど魔王にはソフィアの光魔法を帯びた攻撃しか効かない。魔力が余っているうちは複数に付与できるが、もう魔力がほとんど残っていないため1人にしか付与できない。レオンがいれば、彼は光魔法の使い手のためもう1人攻撃できるのだが……。
ミゲルは自分には光魔法はかけなくていいと言う。剣で物理的に斬って戦うつもりなのだ。だが光魔法を使えない彼はガードができない。レオンは気絶しているけれど光魔法が体内にあるため、ある程度のガードはできるだろう。
「そんなのだめよ! ミゲルが死んじゃう!」
「大丈夫。あの日おまえと中央都市に行ったときから俺は弱虫のおまえを守りきるって決めてたんだ。
じゃあいくぞ!」
ソフィアに反論の隙を与えないままミゲルは飛び出した。ソフィアも泣きながら飛び出す。
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すぐにレオンとニーナを回復すると、レオンが魔王に聖剣を突き刺す。倒した! と思ったが、魔王の動きが止まらない。皆の魔力はもうない……誰もがだめだと思った。
そのとき聖剣を掴んでだめ押しで刺しなおしたものがいた。アレクだ。その一撃で魔王の動きがとまり、消えていった。
魔王の消滅を確認し、あたりは喜びに包まれた。
ソフィアは戦場でミゲルを探していた。ミゲルはレオンを救ったあと、魔王の攻撃で見えない範囲まで吹き飛ばされてしまったのだ。
「ミゲル……ミゲル……どこ……」
ソフィアは血を流しながら戦場を歩き回る。そしてミゲルの剣を見つけた。急いで周辺を探すと、瓦礫のしたにミゲルがいた。
「ミゲル! すぐどかすから!」
急いで瓦礫をどかし、ミゲルに話しかける。返事がない。ソフィアはミゲルが気絶していると思い、回復させる。
……いくら魔力を注いでも起きる気配がない。
「嘘よ……冗談でしょ!?」
ミゲルは死んでいた。呼吸も鼓動もとまっている。いつもみたいにソフィアをからかったりしないし、泣きそうなときに慰めてくれることもしてくれない。
ソフィアは絶望した。これほど絶望したのは聖女に選ばれたときにミゲル以外が、ソフィアという人間を殺したとき以来だ。
「なんで……こんな……。何が聖女よ……。私はこんなの望んでない!」
ソフィアの嘆きの声が響きわたる。そのとき日の光のようなものが、ミゲルとソフィアを優しく照らす。ソフィアはなぜだか、今こそ魔法を使うときだと思い、残っている魔力全てを使って回復した。
「ソフィア……? 何泣いてるんだ。相変わらず泣き虫だなぁ」
「……ミゲル!」
神が見ていたのかもしれない。ミゲルは息を吹き替えした。
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ソフィアは聖女ではなく、ソフィアとして子供たちに囲われて幸せな生涯を閉じた。彼女は愛する夫のもとへ旅立ったのだろう。きっと天国でも子供のような夫婦漫才をしているはずだ。
突然選ばれた聖女に喜ぶ人と悩む人っていると思うんです。私は比較的平凡な人間なので、ヒーローとかに選ばれてもモブみたいな活躍すると思うんです。そういった苦悩が書けていたらいいなって思ってます。




