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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第5章 中学校(下)
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3

 3月10日の夜、浩一は空を見ていた。いつもはそんな事ないのに。今日も大阪の夜は静かだ。繁華街はいつものようににぎわっている。戦前に活気が徐々に戻ってきて嬉しいようだ。そういえば今日は東京大空襲から10年だ。その後、戦後を迎えて、東京はどうなったんだろうか? 復興しているんだろうか? この目で確かめたいな。


「どないしたん?」


 理沙は振り向いた。浩一は驚いた。理沙が来ると思っていなかった。


「3月10日に、東京は大空襲に遭ったんやね」

「ああ」


 理沙も知っている。夏休みの登校日の平和学習で知った。戦前に生まれたが、戦争の事はあまり知らない。東京大空襲も、大阪大空襲も知らない。


「絵本とかで見たんやけど、相当悲惨だったんやね」

「うん。もう戦争なんてこりごりやわ」


 2人とも、図書室や図書館、書店で戦争関連の絵本を読んだ事がある。あまりにも衝撃的だったな。どうして人々は戦争をするんだろうとつくづく思う。


「そやね。日本って、これから復興していくんかな?」

「きっとそやで」


 2人は願っていた。これから日本は戦争のない、平和な日々になっていくだろう。そして、復興していくだろう。その為には、戦争を起こさない事が大切だな。


「どんな日本になっていくんやろな」

「それはわからん。それを決めるのは、これからを生きる子供たちなのさ」


 理沙は笑みを浮かべている。確かにそうだ。未来を決めるのは僕たちだ。そして、それだけではない。平和な日々を送っている世界中の人々なのだ。


「そうだね」

「もう戦争なんて起こしてはならない。戦争による破壊はもうこりごりや」


 2人ともわかっていた。戦争なんて破壊や死しか想像しないものだと思っている。絶対に起こしてはならないと思っている。その願いは、世界中の人々に届くんだろうか?


「僕もそう思っとる!」

「おおきに」


 浩一は思っている。東京はこれから、どんな風に発展していくんだろう。もうすぐ修学旅行で東京に行く。その様子をその目で確かめてくる。


「東京は、どうなっていくん?」

「わからんわ」


 理沙も気になっている。そして、浩一同様、東京に住みたいと思っている。


「東京の移り変わりか、東京に住んでみてみたいわ」

「そやな」


 浩一は東京の姿を思い浮かべた。東京って、どんな場所なんだろう。きっと、夢であふれているんだろうな。


「修学旅行で東京に行って、それを確かめてこよか」

「感想を待ってるで!」


 理沙は笑みを浮かべている。きっと、素晴らしい感想を伝えてくれるだろうな。


「ああ。待っててや!」


 ふと、浩一は思った。大阪大空襲は、どんな光景だったんだろう。絵本などででしか見た事がない。実際に体験した事がない。きっともっと大変だっただろうな。


「どないしたん?」

「大阪空襲の頃は、どんな感じやったんやろ」


 理沙は思い浮かべた。だが、思い浮かばない。


「あの時も悲惨やったんだよ。日本が早く降伏すれば、こんな事にならなかったんかな?」

「そうかもしれんね。負けるとわかったら、降参すればええのに」


 2人は思っていた。日本が早く降伏すればこんな事にならなかったのでは? 多くの犠牲者が出て、悲しむ人が少なくなってよかったのでは?


「やから、広島や長崎に原爆が落とされたんかな?」

「うーん・・・」


 言われてみればそうだ。あの後、広島と長崎に原子爆弾を落とされた。もっと早く降伏していれば、こんな恐ろしい爆弾を落とされることはなかったのでは?


「なんで戦争でこんなに多くの人が死ななあかんだん?」

「そやね」


 次に、浩一は特攻隊の事を思い浮かべた。これも平和学習で知った。片道分の燃料と大型爆弾を積んで、飛行機ごと体当たりをする部隊だ。そのほとんどが若者で、出撃して死んでいった若者がかわいそうでしょうがない。もっと生きたかっただろうな。また家族と会いたかっただろうな。


「特攻隊の人々がかわいそうでかわいそうで」

「その気持ち、よくわかるわ」


 突然、理沙は浩一の肩を叩いた。理沙は浩一の想いがわかっているようだ。


「戦争は起きてほしないわ」

「うん」


 こんな暗い話をして、申し訳ない気持ちだな。これから修学旅行で東京に行く予定なのに。


「暗い話をして、すまんね」

「いいよ。東京の移り変わりを、その目で見てきてちょうだい」

「わかった。見てくるよ」


 理沙は浩一に期待していた。自分の目で、東京の移り変わりを見てくるよ。


「浩ちゃん・・・」


 2人は振り向いた。そこにはハルがいる。どうしたんだろうか? 夜遅くまで起きていて、おかしいと思ったんだろうか?


「おばあちゃん、どないしたん?」


 どうやら、ハルは戦争の事を話していたので、反応したようだ。だが、戦争の事はもう口に出さないようにしよう。負の歴史なのだから。


「いや、何もないて」

「そっか」


 と、ハルは笑みを浮かべた。暗い話をしたので、明るい話をしようと思っているようだ。


「修学旅行、楽しんできてや」

「うん」


 もうこんな時間だ。早く寝ないと。


「じゃあね、おやすみ」

「おやすみ」


 ハルは部屋を後にして、ドアを閉めた。2人はその様子をじっと見ている。

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