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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第5章 中学校(下)
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2

 それから千沙と浩一は、修学旅行で東京に行くのが楽しみでたまらなかった。そして、部活でもよく考えてしまう。そして、先生に注意される日々が続いていた。だが、夢中で夢中でたまらない。


「おはよう」

「おはよう」


 2人とも嬉しそうだ。理沙にもその気持ちがわかった。日本の首都、東京に行けるからだ。


「浩一、東京に行けるの、楽しい?」

「うん。それに僕、いつか東京に住んでみたいわ」


 理沙は東京を夢見ていた。いつか東京に住みたい。その為にはもっと勉強を頑張らなければ。


「そっか。僕もやで」


 浩一は笑みを浮かべた。東京で大きく成長するんだ。だが、千沙はそんな浩一を全く気にしていないようだ。


「どないしたん?」

「私は大阪がええよ」


 千沙は大阪がいいようだ。本当は東京に行きたいが、祖母の事があるからだ。


「そっか。人それぞれやな」

「うん」


 と、そこにハルがやって来た。ハルは生まれも育ちも大阪で、大阪がいいと思っている。


「何を話してたん?」

「東京って、ええなって話」


 だが、東京と言われると、ハルも気持ちが高ぶる。どうやら自分も住んでみたいと思っているようだ。


「そう。私もええなと思っとる。いつか住んでみたいわ。浩ちゃんもそう思ってるんやね」

「うん」


 浩一は上を見上げ、東京を思い浮かべた。戦後10年で、東京はどれだけ復興したんだろう。僕はそれを見に行く。そして、東京に住みたいという夢を抱く。


「東京って、ええ所だよなー。夢があって、豊かさがあって」

「修学旅行が楽しみやなー」


 2人とも、東京に行くのが楽しみで楽しみでたまらなかった。前回の修学旅行と違って、今回は2人とも行けることを願いたい。


「うん。前とは違って、行けたらいいな」

「大丈夫。前回みたいな事にはならんさ」


 千沙は浩一の肩を叩いた。前回はあんな事があって、修学旅行に行けなかったけれど、今はもういじめがない。きっと行けるだろう。


 だが、浩一の気持ちは複雑だ。いじめグループがいないのは、雅と千尋が放火殺人で次々と殺したからなのだ。死を持って解決したというのは、よくない事だと思っている。もっと平和的な解決法があったのでは? どうしてそれで人が犠牲にならなければならないんだろう。


「そうそう!」

「初めての修学旅行、楽しみやなー」


 だが、今は修学旅行に行けるのを嬉しく思わないと。きっと、天国のいじめグループも喜んでいるだろうから。彼らの分も楽しんでこなければ。




 部活でも相変わらず修学旅行の事で頭がいっぱいだ。そして、練習がままならない。大会が迫っているので、より一層厳しい練習をしなければいけない。


「先輩! 東京に行くん?」


 浩一は横を向いた。話しかけたのは後輩の谷だ。谷は博美の同級生だ。


「ああ。ええだろう」

「いいなぁ。僕も行ってみたいわ」


 谷は浩一ら先輩が東京に行くのをうらやましく思っている。自分も行ってみたいな。来年には自分たちが修学旅行だ。その時も東京に行くんだろうか?


「来年は君も修学旅行やろ? きっと行けるて」

「そやね」


 谷は笑みを浮かべた。谷も来年は修学旅行で東京に行くだろう。そしてその中で、何かを見つけ、心を動かされ、何かを得るだろうな。


「でも東京って、ええよな。夢があって」

「そやろ。僕、いつか東京に住みたいって思っとるん」


 谷は驚いた。浩一が東京に住みたい、東京で働きたいと思っているとは。夢があっていいじゃないか。じゃあ、自分も東京を目指して頑張っちゃおうかな?


「ほんま?」

「ああ」


 ふと、谷は思った。もし、東京に住み始めたら、家に誘ってよ。そして、東京を一緒に観光しようよ。


「じゃあ、住み始めたら、誘ってさ」

「ええよ」


 と、そこに博美がやって来た。2人の会話が気になっていたようだ。


「何の話をしてたん?」

「修学旅行の行き先が東京なんやて」


 それを聞いて、博美はうらやましいと思った。来年は自分も東京に行くんだろうか? 東京はさぞかしいい場所なんだろうな。あこがれるな。


「へぇ。ええなぁ」

「君は来年に行けるかもよ」


 浩一は笑みを浮かべた。来年はみんなもきっと東京に行けるさ。そして、東京で何かを感じるはずだ。


「そうかなぁ」

「きっとだよ。何も問題がなければね」


 浩一は少し笑った。2人はどうして笑っているのかわからなかった。まさか、浩一は小学校の修学旅行に何らかの理由で行けなかったんだろうか?


「楽しみやなー。国会議事堂を見たいし、浅草に行きたいし」

「僕も行きたいわ。班別行動で行きたい所は絶対抑えておきたいなと思っとる」


 浩一は行きたい場所はすでに抑えてある。だが、どこに行くかは同じ班の子にしか言っていないし、知らない。


「そやね。うーん、僕は特にどこに行こうか見当たらんわ」

「そっか。早く考えた方がええよ」

「そうするよ」


 と、そこに顧問の中井がやって来た。中井は怖い表情だ。


「さて、練習や練習や!」


 その声とともに、3人も練習を始めた。3人はさぼって話をしていたので、中井は厳しい表情をしている。また修学旅行の話をしているんだな。


「よっ!」

「ナイスプレー!」


 浩一は好プレーを連発している。とても頑張っているようだ。


「よーし、もっと頑張っちゃおうかな?」


 浩一はいい気になっていた。中井はその様子を温かく見守っている。

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