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年が明けて1955年になった。今年の千沙と浩一は修学旅行に、高校受験に、大変な年になりそうだ。浩一は考えていた。今回こそは修学旅行に行けるんだろうか? 小学校6年生の頃はトイレに閉じ込められていく事ができなかった。後日、家族で京都と奈良に行ったけれど、やっぱりみんなと行きたかったな。今年こそは本当に行けるのか不安だ。まぁ、行けると信じているけれど。
「いよいよ修学旅行か」
浩一は空を見ていた。今年こそは修学旅行先で夜空を見る事ができるんだろうか? 3年前は悪い思い出だったけれど、今回は行きたいな。
「今回はどこ?」
「東京」
すでにどこに行くかは聞いている。東京だ。東京には行った事がない。東京は日本の首都だ。1945年の3月10日の東京大空襲で焼け野原になったものの、戦後、急激に復興していった。その復興していく様子を、肌で感じたいな。そして、将来の糧にしたいな。
「東京! すごいやん! 日本の首都やで!」
ハルは驚いた。日本の首都に行くのか。それはすごいな。ハルは東京に行った事がない。どんな場所なのかは、資料でしか見た事がない。
「すごいわー。行ってみたいわ!」
「今回は行けるとええね」
千沙は笑みを浮かべている。今度こそは千沙と一緒に修学旅行に行くんだ。判別行動になるらしいけれど、一緒に行こう。
「うん」
「東京はいい所やぞー」
ハルは嬉しそうだ。2人が東京に行き、その景色をその目で確かめるからだ。見てきて、早く感想を聞かせてほしいな。
「ほんま?」
「絶対気に入るで」
「そうかな?」
浩一は照れている。本当は東京に住みたいと思っているけれど、なかなか言えない自分がいた。
修学旅行で東京に行くのは、部活でも話題になっていた。特に後輩はよくその話題を言っている。
「浩ちゃん、修学旅行で東京に行くんやね」
「ああ」
博美は東京での生活を想像した。大阪よりも人口が多くて、活気がある。豊かで、夢があると思っている。博美も思った。いつかここに住んでみたいな。
「東京か。いつか私も住みたいわ」
「なんで?」
浩一は疑問に思った。東京って、そんなに憧れる場所なのかな?
「だって、東京には夢があるし、豊かさがあると思うん」
「ほんまかな?」
浩一は首をかしげている。博美は目をときめかしている。それほど東京に憧れているのだろう。
「うん。やから、東京の人と結婚して、住むのが夢なんや」
「そうなんや」
ふと、浩一は思った。もし、共に東京に住む事になったら、一緒に東京を巡り、そして一緒に飲みたいな。
「どないしたん?」
「い、いや。何もないて」
だが、浩一は何も言おうとしない。博美は思った。浩一は何を考えているんだろうか?
「そっか」
と、そこに理沙がやって来た。何か考え事をしているようだ。
「ここまで私と一緒に暮らしてきて、よかった?」
「うん。楽しい事も、悲しい事もあったけど、みんなええ思い出やよ。やけど、これからもっといい思い出を作らんとね」
それを聞いて、浩一は思った。理沙は、自分が東京に住みたいと思っているのを知っているんだろうか?
「そやね」
ふと、理沙は浩一の表情が気になった。
「どないした?」
「東京って、ええ所かなって思って」
それを聞いて、理沙は笑みを浮かべた。理沙も東京はいい場所だと、東京に住みたいと思っていた。
「ええ所だよ。気に入ると思うで」
「やろ? 僕、いつか東京に住んでみたいわ。そして、もっとええ生活を送りたいわ」
浩一はみんなの前で、初めて東京に住みたいと言った。それを聞いて、みんな驚いた。まさか、浩一は東京に住みたい、東京で働きたいと思っているとは。
それを聞いて、理沙は横を向いた。
「そっか。やけど、時々実家に帰ってきてな」
「わかっとるって」
ふと、理沙は思った。千沙は東京に住みたいと思っているんだろうか?
「千沙はどや?」
「私、住みたい思わん。ここが一番ええと思っている」
千沙は東京に住みたいと思っていないよう見える。どうしてだろう。やっぱり、ハルが心配だから行かないんだろうか?
「そっか。人それぞれやね」
「まぁ、それもいいじゃない!」
浩一は笑みを浮かべた。理沙も東京に住みたいと思っているのか。自分と一緒だじゃないか。
「そっか、理沙は東京に住みたいんか?」
「うん」
理沙は中学校1年生だ。東京に行くのは来年だ。理沙は東京への修学旅行でどんなきっかけをつかむんだろうか? そして、東京に住むのにあこがれるのかな?
「理沙も、来年は東京に修学旅行で行くやろな。楽しみ?」
「うん」
理沙は楽しみにしているようだ。それは嬉しいな。きっと素晴らしい思い出になるだろうな。
「そっか。でも来年までのお楽しみやね」
「うん」
だが、浩一は固い表情だ。東京に住み、働くためには、もっと厳しい勉強をしなければならない。高校受験をもっと頑張らなければ、東京にで就職できない、東京に住めないと思っている。
「そのためには、もっと勉強を頑張らんとな」
「そやね」
理沙も思っていた。東京に住むには、もっと勉強を頑張らないとな。




