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その翌日も、またその翌日も、晋一は一緒に帰ってくれない。千沙は次第に、晋一は千沙の事が好きじゃないんだろうかと思い始めてきた。日に日に千沙の機嫌が悪くなってきた。それは、理沙や浩一も感じていた。
「おはよう」
「おはよう」
千沙はいつもの時間に起きた。だが、千沙の機嫌が悪い。
「最近、晋一くんが一緒に遊んでくれへんねん」
千沙はため息をついた。みんな、その理由はわかっている。遊んでくれないからだ。そんな日もあるさと思っていたのに、それが毎日だ。明らかにおかしい。理沙や浩一はそう思い始めてきた。
「ふーん。そんな日もあるて」
「そんな日が続いとるねん」
ただ1人、ハルは励ましたが、千沙は疑わしいと思っている。千沙は深くため息をついた。
「うーん。おかしいね」
と、理沙は思った。晋一を付け回してみよう。何か手掛かりがつかめるかもしれない。
「ちょっと、つけ回してみやへん?」
「そやね」
浩一もその意見に賛成だ。晋一を付け回そう。
「やってみよう」
2人は晋一を付け回す事にした。もちろん、晋一には内緒だ。
「浩ちゃん」
「どないしたん?」
千沙は振り向いた。どうして振り向いたんだろうか? まさか、晋一の事でだろうか?
「晋一くん、最近おかしいから、つけ回すことにしたん。やから、遅くなるね」
「わかった。怪しまれんようにね」
「うん」
千沙は2人に期待していた。この2人なら原因がわかるだろう。
そして、今日も中学校の1日が終わった。さて、これからだ。
「起立、礼!」
「さようなら」
千沙はすぐに、晋一の元に向かった。今日は一緒に帰ってくれるんだろうか? 今日もダメなんだろうか?
「晋一くん、今日もダメなん?」
「うん。ほんますまん」
晋一は謝っている。だが、笑みを浮かべている。どうしてだろう。こういう時は残念そうな表情が普通なのに。
「ええよ」
千沙は受け入れた。その表情を見て、晋一は思った。いつもとは違う。どうして残念そうな表情じゃないんだろう。徐々に慣れてきたんだろうか?
「どうやて?」
千沙は振り向いた。そこには浩一がいる。
「やっぱりダメやて」
「そっか。じゃあ、付け回さんとね」
「うん」
浩一は決意した。部活の後、晋一を付け回してみよう。晋一の所属しているテニス部は、野球部と同じ時間に終わる。そこを狙おう。
夕方、帰る時間になった。浩一は晋一の様子を見ていた。やはり千沙と帰っていない。
「あっ、あれが晋一くんだな」
と、浩一はその横にいる女が気になった。それは、同級生の昌子だ。まさか、この人と帰るんだろうか?
「あれ? この子・・・」
2人は仲睦まじそうだ。ひょっとして、一緒に帰ろうとしているんだろうか? もしかして、昌子と一緒に帰るから、千沙と一緒に帰ろうとしないんだろうか?
「千沙ちゃんに言わんと」
晋一と昌子は一緒に帰っていた。その後ろを、浩一は走っている。浩一はじっと見ている。これは千沙に言わないと。
浩一はいつものように家に帰ってきた。千沙と理沙はすでに帰っているようで、部屋には明かりがついている。
「ただいまー」
浩一が家に入ると、すぐに千沙がやって来た。千沙は浩一が気になっているようだ。晋一がどうして一緒に帰らないのか、知りたかった。
「どやった?」
「昌子ちゃんと会っとったわ」
それを聞いて、千沙はため息をついた。まさか、昌子と一緒に帰っていたとは。まさか、浮気だろうか?
「本当? 別の女と付き合っとったん?」
「うーん、僕にはわからんけど、そうかもしれん」
浩一には浮気という物が何なのかわからなかった。だが、してはいけない事のように見える。
「信じられん。もうあんな奴、もう付き合いとうない」
「そっか・・・」
千沙は怒っていた。明日の朝、晋一に言わないと。
朝、晋一はいつものように登校してきた。もちろん、千沙と浩一が昌子と一緒に帰っていた事など、知らない。千沙があきれているという事も知らない。
「おはよう」
晋一の声を聞いて、千沙がやって来た。どうしたんだろうか? 真一は驚いた。
「おはよう。晋一くん、昨日、何しとったん?」
「用事やよ」
だが、晋一は用事だと言う。本当は昌子と一緒に帰っていただけなのに。
「嘘! 晋一くん、別の女とおったん、見た人がおるんやから」
千沙の態度が変わった。まさか、昌子と会っていたことを知っていたとは。晋一は呆然となった。
「えっ、そんな・・・」
「もう別れましょ!」
千沙は晋一の元を離れた。千沙は怒っている。昨日の表情がまるで嘘のようだ。浩一はその様子をじっと見ている。
「待って、千沙ちゃん! 待って!」
「もう知らん!」
晋一は千沙にフラれてしまった。晋一は落ち込んだ。浩一はその様子をじっと見ている。自分が見ただなんて言ったら、晋一にいじめられると思ったからだ。
夕方、千沙と浩一は一緒に帰っていた。千沙はショックから立ち直れない。今まで好きだと思って付き合っていた晋一が、別の女と付き合っていたとは。
「大丈夫?」
「うん」
浩一は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。本当に通報してよかったんだろうかと思った。
「すまん、自分のせいで」
「ええのよ」
千沙と浩一は一緒に帰っていた。その様子を、晋一と昌子は見ていた。
その夜、千沙は泣いていた。晋一が浮気していたからだ。好きだと思って付き合っていたのに、浮気をしていたとは。
「どないしたん?」
千沙の様子を見ていた浩一は振り向いた。そこにはハルがいる。ハルは泣いている千沙が気になったようだ。
「失恋がショックで」
「そっか。まぁ、すぐに立ち直るやろ?」
ハルは思っていた。失恋もいい思い出だ。恋はうまくいかない時もある。この先で絶対にいい人と巡り会えるはずさ。
「そうだね。放っとこ」
「うん」
3人は千沙を放っておく事にした。きっとい人が見つかるだろう。そして結婚した時は、みんなで祝おう。




