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次の朝、柴田家は騒然となっていた。警察が来ている。周りには野次が集まっている。何の騒ぎだろうと思っているようだ。だが、周辺に住んでいる人々は心当たりがあった。おそらく、虐待で逮捕だろう。今日、警察が来ているのを見て、これはそうだろうと思ったようだ。
新しい夫の和幸はノックの音で目を覚ました。朝早くに何だろう。まさか、虐待を通報されたんだろうか? もしそうなら、大変だな。誰にも秘密と言っていたのに、まさか通報されたとは。もしそうなら、それは誰だろう。博美だろうか?
「ごめんください」
「はい」
和幸は階段を降りて、玄関に向かった。大広間には誰もいない。とても静かな朝だ。和幸は玄関を開けた。そこには警察がいる。どうやら虐待がばれたようだ。
「警察ですけど、柴田和幸さん、ちょっと聞きたい事があるんですけど」
「はい」
和幸は眠たそうに眼をこすっている。だが、警察は全く気にしていない。
「義理の息子さんを殴っているという噂があるんですが、それについてお聞きしたいので、署まで来てくれませんか?」
「はい」
そして、和幸は警察に逮捕された。和幸は肩を落としている。まさかばれるとは。誰にも秘密だと言っていたのに。
何も知らない博美の母、昌子は入れ替わるように帰ってきた。昌子は騒然となっている柴田家を見て、夫が逮捕されたのだと知った。
昌子は玄関を開けた。と、そこには博美がいる。
「えっ・・・」
昌子は驚いた。まさか目の前に博美がいるとは。
「お母さん!」
「博美!」
昌子は博美を抱きしめた。つらかっただろう。もう大丈夫だよ。一緒に暮らそう。
「ごめんなさい」
浩美は謝った。今まで虐待の事を全く言わなかったからだ。
「苦しかったでしょ? もういいのよ」
昌子は博美を抱きしめた。いつも以上に温かく感じる。どうしてだろう。
「ありがとう。今まで言わんくて、ごめんね」
「ええのよ」
そして、博美は解放された。これからいい日々を送っていこう。
次の週末、浩一は博美と一緒に道頓堀の周辺を歩いていた。今までつらい思いをしたのだから、気晴らしにどこかに行かせてやろうと思ったようだ。博美は穏やかな表情だ。今までつらい思いをしていて、笑顔が見れなかったが、ようやく見れたようだ。何か嫌な事があったら、すぐに言う事だな。博美は改めて感じた。
「柴田」
「坂井先輩」
浩一は笑みを浮かべている。いい後輩に恵まれて、本当によかった。それに後輩の命を救う事ができて、本当に嬉しいようだ。
「よかったな」
「うん」
と、浩一は思った。ちょっと話したい事があるから、どこかでたこ焼きでも食べようかな?
「ちょっと話したい事があるんやけど、今度、たこ焼き屋で食べよか?」
「うん。ええけど」
「待っとるぞ」
そこには、浩一がいる。浩一は私服を着ている。博美も私服を着ている。今日は一緒に気晴らしに行こうと思っていた。
「どないしたんですか?」
浩美は思った。どうして浩一は今日、ここに誘ったんだろうか? 単に行きたいと思ったからだろうか? もっとそれ以上に理由があると思われるけど。
「まぁいいから、たこ焼き買おうや」
「はい」
2人はたこ焼き屋の前にやって来た。8個を買って、1人で分けて食べよう。
「8個、ソースで」
浩一は金を払った。ちょうどの金で、おつりはない。たこ焼き屋の店員は、ソースを塗り、青のり、マヨネーズをかけ、花かつおを上にのせる。とてもおいしそうだ。
「はい、どうぞ」
浩一はたこ焼きの入った容器のあるレジ袋を取った。2人は店を離れていく。道頓堀川を眺めながら食べよう。
2人は道頓堀川のそばにやって来た。今日も戎橋周辺には多くの人が来ていて、賑わっている。その数は年々多くなってきていて、これから平和な世界になっていくと言うのを予感している。
「まぁ、食べようや」
「いただきまーす」
2人はたこ焼きを食べ始めた。一緒に食べるたこ焼きはとてもおいしい。どうしてだろう。
「今日、どうして誘ったん?」
博美は聞きたかった。どうして今日は浩一を誘ったんだろうか? 何か言いたい事があるんだろうか?
「あんた、虐待されてつらかったやろう」
「うん」
やっぱりそうだったか。博美は下を向いた。やはりその事で呼んだようだ。浩一はとても心配しているようだ。こんなに心配しているのは、どうしてだろう。そして、どうして虐待されているとわかったんだろうか?
「あんまり言えんのやけどな、俺、虐待されたことがあんねん」
「えっ、ほんま?」
それを聞いて、博美は驚いた。まさか、浩一も虐待の被害者だったとは。それは初めて聞いたな。だから博美を怪しく思ったんだな。博美はますます浩一が好きになった。
「ああ。だから俺、坂井さんって家に居候しとるんだ。理沙ちゃんのね」
「そうなんだ。って、理沙ちゃんの?」
また博美は驚いた。同級生の理沙の家に住んでいるとは。それも初めて聞いた。今度、行ってみようかな?
「ああ。あの子と同級生なんやね」
「うん。やけど、まさか坂井先輩も虐待を受けていたとは」
浩美は、浩一も虐待を受けていたという事実を隠しきれない。とてもつらかっただろうな。でも、こうしていい家族に恵まれて本当に嬉しいだろうな。
「びっくりしたやろ。やから、柴田の気持ち、ようわかるんや」
「そうなんや。おおきに」
浩美は泣きそうになった。浩一はますます好きになった。こんなにも後輩の事を心配してくれるとは。
「どういたしまして。これからも頑張れよ」
「うん」
2人はあっという間にたこ焼き8個を食べた。いつも以上にとてもおいしかったな。どうしてだろう。
「ごちそうさま」
その後、2人はしばらく道頓堀川を見つめていた。これから2人は、どんな日々を送っていくんだろう。わからないけれど、きっといい未来が訪れたらいいな。




