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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第4章 中学校(上)
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17

 5月になり、ゴールデンウィークが終わった。結局、浩一や千沙、理沙はどこにも行かなかった。野球部を見学しに来た子の中には、入らなかった子もいたが、入った人の方が多かった。徐々に厳しい練習に慣れてきて、主将や顧問の先生も喜ばしく思っている。


 浩一と中村は1年生を見ている。どんな子が入ったのかジロジロ見ている。どの子もかわいいな。彼らは将来、どんな子になるんだろう。思いやりのある子であってほしいな。


「この子たちが新しく入った子なん?」

「そうみたいやね」


 浩一は笑みを浮かべた。みんな頑張っていてほほえましい。野球の楽しさをみんな知ってほしいな。そしてこの中から、全国大会に出場する高校球児や、プロ野球選手が生まれてほしいな。そんな子が出たら、その子のファンになりたいな。


「これから頑張ってほしいね」

「うん」


 と、浩一はある子が気になった。柴田博美しばたひろみだ。博美は理沙の同級生で、理沙とはとても仲が良い。


「どないしたん?」


 浩一は横を向いた。声をかけたのは中村だ。中村は思っていた。どうして浩一は博美が気になっているんだろうか? この子が好きなんだろうか?


「なんかこの子気になるわ」

「どないしたん?」


 どうして浩一は、博美が気になっているんだろうか? かわいいからだろうか?


「顔に傷があるさかい」


 中村は博美の顔を見た。確かにそうだ。傷がある。どうしてこんなに傷があるんだろう。ケガでもしているんだろうか? わざとやったとは思えない。あちこちにある。


「そういえば。やけど、なんで?」


 浩一は思っていた。顔中に傷があるって、自分が幼少期に受けた虐待のようだ。浩一は嫌な予感がした。ひょっとして、博美は虐待を受けているんじゃないかな?


「いや、嫌な予感がしたねん」

「何だよ、言ってみてや」


 中村は気になった。何か嫌な予感とは、何なのか。正直に行ってみてよ。部活の仲間じゃないか。


「まさか、虐待されとるって事、ないよね」


 その可能性はあるが、まだまだわからない。でも、どうしてそう思ったんだろうか? もしかして、浩一は虐待を受けた事があるから、そう思っているんだろうか?


「そんなわけないやろ? でも、そうじゃないと言い切れんな」


 中村は考え込んでいた。確かに気になる。この子がどんな事をやられているのか、とても気になるな。この子の家族を少し調べたいな。


「まぁ、そう思っただけや」

「そっか。浩ちゃんはそんな経験をしたもんな」


 中村は納得している。きっと被害者だから、浩一はその気持ちがわかるんだろうな。


「うん」


 浩一は博美に近寄った。浩一が近づいているのを、博美は知らない。黙々と練習していた。


「ねぇ」


 浩一の声で、博美は横を向いた。まさか、浩一から話しかけられると思わなかった。


「坂井先輩、どないしたんですか?」


 博美は呆然としている。突然話しかけられて、びっくりしているようだ。


「その傷、気になって」


 博美は顔の傷を気にした。だが、博美は何ともないかのような態度だ。明らかにおかしい。何かを隠しているようだ。だが、浩一にはその理由がわからない。


「大丈夫やて。気にせんといて」

「そっか」


 浩一は去っていった。やはりその理由がわからなかった。浩一は下を向いている。


「どやった?」


 浩一は前を向いた。聞いてきたのは中村だ。何か手掛かりになる事はわかったかな?


「全くわからんかったわ」

「そっか。でも怪しいわ」


 中村はため息をついた。結局わからなかったのか。知りたかったのにな。その原因を知りたいな。そして、博美の悩みを解決したいな。


「うん」


 それに、浩一はある事が気になった。いつもいつも、何かにおびえているような気がする。一体、博美は何におびえているのか。その理由を教えてほしいな。


「あの子、何かにおびえとるみたいやわ」

「ああ」


 中村も納得していた。言われてみればそうだ。何かにおびえているような表情だ。これは何か悩み事があるというサインだ。何とかして、その悩みを解決したいな。


「どないしたんやろ。心配せずに話したらええのに」


 中村は笑みを浮かべた。浩一は困っている人がいると。放っておけない性格だ。1人1人を大切にして、悩んでいる人がいれば、何とかしてやりたいと思っている。その気持ちは、先生からも評価されていて、ほめられている。


「そうやよね。本当に浩ちゃんは困った人を放っておけない性格やよなー」

「うん」


 浩一は笑みを浮かべた。中村に褒められて、嬉しいようだ。じゃあ、もっと誰かのために頑張っちゃおうかな?


「まぁ、今日はもう何も言わんようにしとこ。やけど、目に留めておこうや」

「そやね」


 気になる事はいっぱいあるけど、また明日、博美を観察してみよう。何かわかるかもしれないから。

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