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千沙と浩一は中学校2年生になった。そして、理沙は小学校を卒業して、中学校1年生になった。1年間離ればなれだったけれど、4月からは一緒に登校していた。とても楽しい日々だ。それに、あれ以来いじめがなくなった。ようやく浩一にも平和な日々が戻ってきた。だが、浩一には心残りもある。それは、雅と千尋の事だ。自分のせいでこうなってしまったと感じている。だが、前を向いて生きていかなければ。それがハルの願いなのだから。そして、明るい未来を切り開くのが私たちだ。
浩一は相変わらず野球部で練習に明け暮れる日々を送っていた。以前と比べて体罰もなくなり、充実した日々を送っていた。プロ野球選手になりたいとは思わないが、平和で充実した日々を送りたいと思っている。その為には、ここで鍛えて人生の足しになるような事をしておかなければ。きっとこの経験は将来、生かされてくるだろう。
そんな中、浩一はある子が気になっていた。入ろうとしている1年生だ。今年も結構入りたいと思って見学している人が多いな。やっぱり野球は人気のスポーツだな。
「あれ、体験入部の人かいな?」
「そうみたいやね」
同僚の中村もそれを見ていた。こんなに来ているとは。本当に嬉しいな。自分にも後輩ができるだけでうれしいのに、こんなにできるとは。
「どれぐらいの人が入るんやろ」
「わからんけど、強い子が来てほしいわ」
中村は思っていた。県大会で優勝できるような子がやってきたらいいのに。そうすれば、この中学校は名をを上げる事ができるのに。
「うん」
浩一もそう思っていた。だが、そんなのかなうのかな? 僕にはかなわないと思っている。
「おーい、坂井! サボってたらあかんぞー!」
主将の原田の声だ。2人は慌ててダイヤモンドに向かった。
「はーい!」
まずは守備練習だ。浩一はセカンドを、中村はファーストを守っている。
「それっ!」
浩一は軽快にボールを取って、中村にボールを渡す。後輩はその様子を見ている。
「まだまだ!」
だが、原田は厳しい。まだまだだと言う。顧問の佐藤は厳しい表情だ。もっと頑張らなければならない。
「もっと素早く!」
「はい!」
その後も浩一や中村は守備練習を行った。その後はバッティング練習にランニングにとても疲れた。
そして、午後6時になった。今日の練習はもう終わりだ。
「よーし、今日はここまでや」
「はい!」
みんな、肩を落としている。とても疲れたようだ。浩一も肩を落としている。
「はぁ、今日も疲れたわ・・・」
「さようならー」
浩一は後片付けをして、家に向かった。とても疲れたな。今日はゆっくり休み、明日に備えよう。明日も学校に部活だ。明日はもっと頑張れるようにしないと。
浩一は家でくつろいでいた。だが、千沙が帰ってこない。千沙はいつも先に帰っているのに、どうして帰ってこないんだろう。明らかにおかしいな。ハルもおかしいと思っていた。ひょっとして、千沙の身に何かがあったのではと思った。
次第に浩一もおかしいと思い始めた。こんなに遅くなる事はなかった。何をしているのか気になる。そして、理沙も気になった。今頃、姉は何をしているんだろう。遅くなる時は、一言言ってほしいのに。
「ただいまー」
千沙が帰ってきた。今まで何をしていたのか。とても気になるな。教えてほしいな。千沙が帰ってくると、ハルがやって来た。ハルは心配した様子だ。
「遅かったやん。どないしたん?」
「ローマの休日って映画見てきたんや」
ローマの休日という映画があるのか。理沙や浩一はどんな映画なのか気になった。
「ふーん」
「オードリー・ヘプバーン素敵やったわー」
千沙はヒロインを演じたオードリー・ヘプバーンの事が忘れられない。とても美しい。
「そう。私も見たいわ」
理沙も見たいと思った。どんな人なんだろう。どんな映画なんだろう。とても気になるな。
「今度見に行くとええで」
千沙はその映画を勧めた。それを見て、浩一もこれは観てみたいなと思った。
翌日の昼下がりハルは隣に住んでいる田村と話をしていた。昔は千尋が話をしていたが、逮捕されてからはハルが近所の人と話をしている。
「今日、映画見に行っとったんや」
「ふーん」
ハルは興味なさそうに見ている。だが、千沙が話していたのでとても気になる。
「ローマの休日って映画。オードリー・ヘプバーン美しかったわー」
「ウチも見た! 素敵ー」
隣に住む田村や山本もほとんど同じ話をしている。やはり、ローマの休日だ。そんなにオードリー・ヘプバーンが魅力的なんだろうか? 聞いた事のない名前に、ハルは呆然となっている。
「そやろ! わかるわかる!」
「そんなにすごいん?」
ハルは驚いている。そんなに話題になっているのなら、見に行くべきだな。どうしようかな?
「うん。見ればわかるで!」
「ふーん」
徐々に、ハルも見てみたいと思うようになった。今度、理沙や浩一とともに観てみようかな?




