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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第4章 中学校(上)
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15

 2日後、徳次郎の葬儀が行われた。葬儀には徳次郎の兄弟姉妹の親族や、関係者が多くやって来た。だが、息子夫婦は当然来ない。刑務所の中だ。喪主は妻のハルだ。千沙も理沙も浩一も黒い制服、セーラー服を着ている。みんな、暗い表情だ。どうして徳次郎がこんなに突然、死ななければならないのか。全ては息子夫婦が逮捕されたためだ。浩一のせいだとは全く思っていなかった。もうこんな夫婦、二度と刑務所から出てくるな。そのまま死刑になってほしい。誰もがそう思っていた。


「あっ、どうも」


 浩一は振り向いた。そこにいるのは、徳次郎の兄、俊太郎しゅんたろうだ。もう何年も会っていなかった。まさか、弟が先に死ぬとは。それも突然にだ。息子夫婦が原因だとわかっていた。目の前にいるならぶんなぐってやりたい気分だ。


「この度はお悔やみ申し上げます」


 浩一は泣いていた。自分のせいでこうなったと思っているからだ。自分がいじめられなければ、自殺未遂をしなければ、雅と千尋は放火殺人を起こさず、逮捕されなかったのに。


「俺のせいでこうなったなんて」


 と、ハルは浩一の肩を叩いた。どうしたんだろう。自分が悪いのに。


「いや、あの子が悪いんやよ。浩ちゃんは悪くないんやよ」

「そうかな?」


 本当に雅と千尋が悪いんだろうか? どう見ても、自分が悪いのに。


「何も気にせんでええんやよ。そういう運命やったから」

「本当にそうかな?」


 浩一は疑わしかった。それが運命なんだろうか?  自分がそのきっかけを作ったのに。


「いつまでも落ち込まんと、前に進めや!」

「わ、わかったよ・・・」


 浩一はハルに励まされた。何も考えずに、先に進もう。これからは僕たちの時代だから。僕たちが、戦後の平和な社会を作っていくんだ。


「こんなに短い期間に、家族が離れ離れになったり、死んだりするなんて」


 千沙もショックを隠せなかった。どうして徳次郎が突然、この世からいなくならなければならなかったのか。あまりにもひどすぎるじゃないか?


「悲しいよな。つらいよな」

「うん」


 と、そこに千沙と浩一の担任の中野がやって来た。中野は喪服を着ていて、暗い表情だ。


「あっ、浩ちゃん」

「中野先生」


 中野先生はつらそうな表情だ。自分の親族の事じゃないが、浩一の親族が亡くなったと聞いて、これは行かなければと思ったようだ。


「つらい?」

「ううん。大丈夫」


 どうやら中野は大丈夫なようだ。千沙はほっとした。


「突然の事やもんね。お父さんお母さんが捕まるし、おじいちゃんが死ぬし」


 中野には千沙の気持ちがよくわかった。ここ最近になって、千沙の両親や祖父が次から次へと目の前からいなくなってしまった。浩一は自分が悪いと思っているが、全ては両親が逮捕されたからだ。浩一は全然悪くないと思っている。


「全部僕のせいだ・・・」


 中野は浩一の肩を叩いて、浩一を励ましている。


「そんな事ないて! 全部、お父さんやお母さんが悪いんやて。愛情が悪い方向に暴走しただけやて」


 中野はわかっていた。雅と千尋は浩一に対しても深い愛情を注いでいた。だからこそ、浩一が自殺しようと思った事で腹が立ち、彼らとその親族を殺そうと思ったんだろう。


「うーん、そうかな?」

「きっとそうだよ。先生の言う事、信じて!」


 千沙や理沙も励ましている。そう言われると、信じざるを得ない。そして、彼らの励ましに応えて、頑張らざるを得ない。だけど、なかなか立ち直れないな。


「そ、そやね・・・」

「浩ちゃん、この度は大変やったね」


 浩一は振り向いた。そこには重三の妻がいた。まさか、重三の妻が来るとは。きっと、浩一を心配してやって来たんだろう。


「うん・・・」


 浩一はまた下を向いてしまった。本当に前を向いて進んでいいんだろうか? 自分が死に追いやったのに。


「まだ落ち込んどる」

「早く立ち直れや!」


 重三の妻も、千沙も千沙も応援している。だが、浩一の表情は変わらない。


「でも・・・」

「頑張れ! 人生これからなんや」


 人生はこれからなんだ。そう言われると、進まざるを得ない。これからは僕たちの時代が来る。平和な世界を築いていく少年たちだ。きっとこの先は、明るい未来であふれているはずだ。


「わかった・・・」

「これからはあんたらの時代やで」


 重三の妻も思っていた。この子たちは戦争を経験しているが、戦争をほとんど知らない。きっとこの先の時代を平和に生きていくだろう。そして、戦争がいかにひどい事か伝えていかなければならない。


「うん・・・」

「今日はおおきに」


 重三の妻は去っていった。まさか来てくれるとは。それに、いい事を言ってくれた。今日は来てくれた事に感謝しないとな。


「千沙ちゃんも理沙ちゃんも浩ちゃんも元気でな」

「うん!」


 重三の妻は手を振っている。千沙も浩一も理沙も、笑顔で手を振っている。それを見て、重三の妻は思った。この子たちは将来、どんな大人になるんだろう。どんな大人になってでもいい。ただ、悪い事はするな。そして、この国の発展のために頑張ってほしいな。

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