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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第4章 中学校(上)
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10

 朝、松岡家は騒然となっていた。千沙と理沙はその声で目を覚ました。何事だろうか? まさか、放火殺人の犯人が見つかったんだろうか? この家が騒然となっているという事は、犯人は両親だろうか? それとも、近所の人だろうか? 2人は目をこすっている。いつもより早く起きてしまった。


 2人は自分たちの部屋から1階にやって来た。徳次郎とハルが取材を受けている。どうやら何かがあったようだ。2人はその様子を呆然と見ている。ひょっとして、両親が捕まったんだろうか? それとも、近所の人々が犯人で、逮捕されたから、その取材を受けているんだろうか?


 だが、取材の内容を聞き耳しているうちに、両親が犯人だとわかった。まさか、両親があんな事を起こすとは。まだ浩一は死んだかどうかわかっていないのに、どうしてそんな事をやるんだろうか? あきらめずに探そうと思わないのか? それほど、彼らが憎いんだろうか?


 と、2人に気付いたハルがダイニングを指さした。そこには朝食がある。ハルはすでに朝食を作っていたようだ。それを見て、2人はダイニングに行き、朝食を食べた。まさか、2人で朝食を食べる事になるとは。昨日までは両親がいて、徳次郎とハルがいたのに、今日は2人だけだ。どこか寂しいな。どれもこれもあの事件のためだ。どうして両親は道を踏み外したんだろうか? 浩一が遺書を残していなくなっただけで、そんな事をしなければならないんだろうか?


 2人はいつものように小学校と中学校に登校した。どんな目で見られるんだろうと思ったけれど、全く普通だ。犯罪者の息子だと言われると思ったが、そんな事はない。おそらく、それが原因で浩一がいなくなった事が影響しているんだろう。みんな、それで反省しているようだ。2人とも複雑な表情だ。本当に登校していいんだろうか? あんなに朝から騒がしくなっているのに。


 千沙はいつものように教室に入った。すると、同級生の1人、山本信之やまもとのぶゆきがやって来た。山本は焦っていた。まさか、千沙の両親が放火殺人の犯人だったとは。だからと言って、からかってはいけない。普通に接して、絶対にいじめない。


「た、逮捕されたって?」

「うん」


 千沙はいまだに動揺している。まさかこんな事が起こるとは。千沙の表情を見て、かなり驚いているんだろうなと山本は思った。だけど、千沙は大切な仲間だ。これからも一緒にいよう。


「きっと浩ちゃんを自殺に追いやられた復讐やろ」


 山本は納得した。きっとそうだ。まだ死んだかどうかわからないのに、どうしてこんな事をするんだろうか? 仲直りすればいいのにな。あまりにもひどいよ。


「きっとそれに違いないわ」


 千沙も確信していた。きっと浩一を自殺に追い込んだ恨みだろう。そんな事をしなくても、仲直りすればいいのに。そんなに仲直りするって、難しいんだろうか? ただ単に、もういじめなければいいだけなのに。




 その頃、浩一は山奥にいた。浩一はまだ生きていた。もう何日も食べていない。衰弱していた。浩一は全く知らなかった。雅と千尋は連続放火殺人を起こし、逮捕された事を。茂らが放火殺人で殺されたという事を。浩一はこれでやっと天国に行けると思っていた。そして、生まれ変わったら、普通の家庭に生まれ、幸せな人生を送るんだ。もう自分がいた事なんて、忘れてくれ。もうここに来ないでくれ。俺はここで死にたいんだ。


「あんた、誰や?」


 その声で、浩一は顔を上げた。そこに犯1人の老人がいる。その老人、宮本重三みやもとじゅうぞうは農民のようで、鍬を持っている。まさか、誰かに見つかってしまうとは。このまま死にたかったのに。


「ほっといてよ! 僕は死にたいんや!」


 重三は驚いた。死のうと思っている人に遭遇するとは。自殺なんて、したらいかんぞ。もっと力強く生きなさい。そして自分の人生を全うしなさい。なのに、どうしてこんな事で、こんな若さで死ななければならないんだ。


「死ぬな! 一度っきりの人生やろ!」


 浩一は衰えていて、何も抵抗できなかった。本当は自殺したかったのに、それができなかった。浩一は下を向いていた。疲れているのではない。自殺する事ができなかったからだ。


「ご、ごめんなさい・・・」


 と、重三は思った。どこかで見た顔だな。ひょっとして、行方不明になっている坂井浩一だろうか? どこか似ている。


「うーん・・・。はて、あんた、どこかで見た顔やな」

「えっ!?」


 それを聞いて、浩一は呆然となった。まさか、浩一だとわかったんだろうか? 行方不明になってから、だいぶ経った。きっと今頃、ニュースや新聞などで報道されているだろうな。重三はそれで浩一を知ったんだろうな。


「あんた、あの坂井浩一くんか?」

「えっ!?」


 浩一は戸惑った。やはりバレたようだ。まさか、自分が浩一だとバレてしまうとは。結局、自分は死ぬ事ができなかった。そして、松岡家に戻る事になるだろう。もう帰りたくなかったのに。もう死にたかったのに。


「ちょっと家族を呼ぼか」


 重三は浩一を連れて、家に案内した。浩一は肩を落としていた。死ぬ事ができなかった無念もあるし、また松岡家に戻らなければならない。松岡家に、近所の人に、そして中学校の生徒や先生、関係者に多大な迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ない気持ちだ。

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