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理沙は気になっていた。どうして両親は最近、夜になると出歩くようになったんだろう。浩一がいなくなってからだ。浩一がいない苦しみを忘れるためだと言っているけど、もっと他に理由がありそうだ。ひょっとして、最近見かける放火殺人犯ではないかと思い始めてきた。出歩くようになってから、放火殺人が起きるようになったのも、怪しいと思う点だ。だが、両親はそんな事やるわけない。とても優しい性格だ。だが、最近はどこか険しい表情になっている。浩一がいなくなってからだ。浩一はまだ死んだかどうかわかっていないのに、まるで死んだように思っている。もうあきらめたんだろうか? 絶対にあきらめてはいけないのに。
「どないしたん?」
同級生の真理子の声で、理沙は我に返った。理沙はずっとずっと考えていた。いつの間にか、校門の前まで来ていた。
「お父さんとお母さんが変やねん」
「えっ!?」
それを聞いて、真理子は驚いた。どうして変なんだろう。何があったんだろうか?
「いつも朝になると外から帰ってくるんや」
「ふーん」
朝帰りが毎日だと、明らかにおかしいと思える。夜に何をしているんだろうと思えてくる。
「ひょっとして、あの事件の犯人やったりして」
真理子はあの放火殺人事件を思い出した。ここ最近、この辺りで起こっている。母も気にしている。まだ犯人が捕まっていない。このままでは、安心して眠れない。早く捕まえてほしいな。真理子は思っている。こんなひどい事、誰がやっているんだろうか? 放火殺人に遭った家族に共通点はあるんだろうか? 無差別だろうか? もし共通点があるんだったら、どんな共通点があるんだろう。
「そうじゃないと信じたいけど、どこか怪しいのよね」
「その気持ちわかるわ。でも怪しいわね」
理沙も考えていた。ただ、最初に放火殺人にあった茂は、浩一をいじめていた奴だ。とすると、その後に放火殺人にあった子供も、浩一をいじめていた奴だろうか? しかも、浩一の通っていた小学校や、現在通っている中学校の子供ばかりだ。そう思うと、両親が犯人ではないかと思い始めた。
その頃、警察は騒然となっていた。なんと、警察に犯行声明文が届いたのだ。
「何やこれ?」
「犯行声明文や!」
2人の刑事はその犯行声明文をじっと見ていた。
我は神に仕えし者
我は自殺に追い詰めた男どもとその家族を抹殺しろという神の命令の下、この地に降り立った
死に追い詰めた男どもには炎の裁きを、その家族にも炎の裁きを
彼らとその家族を皆殺しにした時、我はこの世によみがえるだろう
警察はうなだれていた。自殺と聞いて、浮かんだ男がいる。坂井浩一だ。まさか、坂井浩一が遺書を残して行方不明になった事件が恨みでの犯行だろうか? だとすると、浩一が好きな誰かがやったのだろうと思う。では、いったい誰だろう。全くわからないな。警察は考えてしまった。
その夜、雅と千尋はまた周辺を出あるいていた。もちろん、今夜も放火殺人のためだ。今日は谷川健作の家だ。この男は中学校の先輩で、これまた浩一と同じ小学校の出身だ。彼も小学校の頃から浩一をいじめていて、野球部の先輩だ。執拗なしごきや暴言で精神的につらかったという。
2人はその家にやって来た。その家は1階建てで、とても狭い家だ。ここには6人家族がいるが、もちろん皆殺しだ。これだけ大人数だと捕まえられそうだ。なので、こっそり侵入して、火をつけよう。そして、素早く逃げよう。
2人はこっそりとその家に侵入した。家の明かりは全部消えている。とても静かだ。だが、いつ気づくかわからない。とっとと済ませなければ。悪い事だとわかっているが、浩一が殺されたことに対する恨みだ。死んで償ってもらうしかない。
「よし、火を点けて逃げるで!」
千尋は丸めた新聞紙を玄関の入口に置いた。そして、雅はいつものように火をつけた。そして、素早く逃げた。早く逃げて、皆殺しにしなければならない。
2人は夜の街を走っていた。だが、その様子は確実に人々に見られていた。以前から怪しまれていたようだ。毎晩出歩くようになってから放火殺人が多発しているからだ。明らかにおかしいと誰もが思い始めていた。その事を、2人は気づいていない。
火は瞬く間に広がっていき、あっという間に家を燃やしていく。谷川家が気付いた頃には、すでに火は燃え広がっていて、逃げ場がなかった。もはや、焼け死ぬしか道は残されていなかった。
間もなくして、消防隊が駆けつけたものの、すでに手遅れで、家は全焼、6人家族はみんな死んだ。またこんな事が起こるとは。谷川家も警戒していたが、まさかその家で起こるとは。周辺住民の中には、涙する人もいた。一瞬で6人もの命が奪われたのだから。とても親しかった谷川さんがこんな事で亡くなるとは。あまりにもひどい。早く犯人を逮捕してほしい。そして、死刑にしてほしい。
2人はその後も走っていたが、疲れたし、もう大丈夫だろうと思い、夜道を歩いていた。とても静かだ。浩一を失ったつらさを忘れる事ができるだろう。
突然、誰かが2人の肩を叩いた。2人は振り向いた。そこには大量の警察がいた。




