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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第4章 中学校(上)
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7

 その日の夜の事だ。雅と千尋は昨日と同じように浩一をいじめたやつらを殺そうと考えていた。今回は放火殺人ではなく、放火だけにしよう。同じ人とみなされたくないからだ。だが、それで本当に疑われないのか、心配だ。だが、やらなければ始まらない。


 今度やるのは樋口和則ひぐちかずのりの家だ。ここからほど近い所にある。なので、近所の人々に怪しまれないように気を付けないと。放火したらできる限り遠い所に逃げて、自分たちの犯行である事をわからないようにさせる。気を付けてやらないと。


 2人は樋口家にやって来た。ここは松岡家に似た2階建ての木造だ。明かりは消えている。もうみんな寝ているのだろう。ここは行った事があり、2階に寝室がある。なので、1階に火をつけて逃げ場をなくせばいいだろう。計画は完ぺきだ。絶対にやってやる!


 2人は樋口家に入った。ここも鍵がかかっていない。家はとても静かだ。千尋はリュックから新聞紙を出した。千尋は新聞紙を丸めて、階段の前に置いた。そして、雅がその新聞紙に火をつける。丸めた新聞紙はあっという間に燃え広がる。これで逃げ場が失われるだろう。そして、みんな焼死するだろう。


 火をつけると、2人は逃げた。だが、松岡家とは反対方向だ。できる限り遠くに逃げよう。そうすれば怪しまれないだろう。2人は何事もなかったかのように歩いている。まるで散歩をしている普通の夫婦のようにだ。これで誰にも怪しまれないだろう。


 しばらくして、火事の騒ぎを受けて、消防隊がやって来た。また火事だ。また放火殺人だろうか? だが、上から人の声がする。今回は放火のようだ。だが、近隣で放火殺人が起きているので、同一の犯行かもしれない。消防隊あh連続放火犯にあきれていた。どうしてこんなに放火を繰り返すんだろうか? 放火した家々に恨みがあるんだろうか? それとも、放火するのが好きな奴の犯行だろうか? だったら、許せないな。亡くなった人々の事を考えてみろ! かわいそうじゃないか!


 結局、この火事で樋口家が全焼、家族全員が焼死したという。警察は昨夜の放火殺人と同じ人物が犯人だと思った。早く犯人を捕まえないと、第2、いや第3の被害が出てしまう。亡くなった人々のためにも、そして付近の安全のためにも、早く捕まえないと。


 そしていつものように朝を迎えた。この辺りは朝から騒然となっている。放火が連続して起こっているからだ。どうしてこの辺りで放火が起こっているんだろうか? この辺りに放火魔がいるのでは? みんな不安に思っていた。このままでは我が家が危ないと思っていた。早く犯人が逮捕されてほしい。誰もがそう思っていた。


 松岡家はいつものように朝を迎えた。だが、何かがおかしい事にハルは気が付いた。雅と千尋がいないのだ。いつもだったら、朝起きたらいるはずなのに、なぜかいない。どうしてだろう。何かあったんだろうか? 徳次郎も不審に思っていた。雅と千尋は夜、何をしているんだろう。夜にどこを歩いているんだろうか? それに今朝はいない。どこに行ったんだろうか?


「ただいま」


 その声とともに、雅と千尋が帰ってきた。雅と千尋は何事もなかったかのような表情だ。そして、少し酔っている。あの後、周辺を歩き回って、2人で居酒屋で飲んでいた。放火で消防隊が駆けつけていた間、2人は居酒屋で飲んでいたのだ。これも、浩一が遺書を残して行方不明になった事を紛らわすためで、捜査をかく乱するためだ。


「あら、お帰りなさい」


 ハルは驚いた。酔っている。どこかで飲んできたんだろうか? 普段はあまり飲まないのに、珍しいな。何かあったんだろうか? まさか、浩一が遺書を残して消えたつらさを紛らわすために飲んでいたんだろうか?


「な、何しとったん?」

「散歩して飲んどったんや」


 やっぱりそうだったのか。ハルは納得した。浩一の事を忘れたいんだな。まだ死んだとわかっていないのに、まるで死んだかのような表情だ。まだあきらめてはいけないのに。


「ふーん」


 だが、徳次郎は怪しいと思っていた。こいつが火をつけたんだろうか? じゃなかったら、昨夜もその前の日の夜も外に出なかったはずだ。それに、放火にあった2件は、浩一をいじめていた子供の家族だ。なんか怪しいな。ひょっとして、この2人がやったんだろうか?


 ハルはラジオを聴いている。今日も放火があったようだ。今回は放火だけで、放火殺人のようだ。あまりにも怪しい。ハルも、これは同じ犯人の犯行だろうと思っていた。


「今朝の明け方、また火災がありました。警察は、昨夜にこの近くでも放火殺人事件があった事から、同一人物による犯行と見ています」


 そのラジオを、雅と千尋は真剣に聴いていた。2人もそのニュースが気になるようだ。自分たちの家がやられないかどうか心配しているようだ。その表情を見ていると、この2人は放火をやっていないと思われるな。あの2人は悪い事をしない。この2人は絶対に犯人じゃないだろうと思っていた。


 陰で見ていた徳次郎もそう思っていた。この2人が連続放火の事を真剣に聴いているという事は、息子夫婦が犯人ではない。別の人の犯行だろうと思っていた。2人は知らなかった。この家族に連続放火の犯人がいるという事を。

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