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浩一は肩を落としていた。これから僕はどうすればいいんだろう。このままこの世からいなくならなければならないんだろうか? そして、両親のいる普通の家庭に生まれ変わらなければならないんだろうか? この松岡家に住んでいていいんだろうか? 浩一はとても悩んでいた。だが、答えが見つからない。
浩一は家に戻ってきた。肩を落としたままだ。何かに悩んでいるようだ。だが、何なのかわからない。多分、またいじめだろう。あの茂は懲りないな。どうすればいじめをやめるんだろう。
「ただいまー」
浩一が帰宅した。浩一は肩をがっくりと落としている。千尋はその様子を心配そうに見ている。浩一はすぐに2階の自分の部屋に向かった。いつもこんな感じだ。どうしたら自分はいじめられずに済むんだろう。答えが見つからない。
「おかえりー。今日も疲れたやろ?」
「うん・・・」
浩一は下を向いたまま自分の部屋に入った。千尋や徳次郎、ハルはそんな浩一の後ろ姿を不安そうに見ている。本当に大丈夫だろうか? こんな浩一の表情、見た事がない。見ているだけで不安になってくる。
「浩ちゃん、大丈夫やろか?」
「わからん・・・」
千尋はだんだん不安になってきた。このままでは、浩一の命が危ないのでは? 早く何とかしないと。
浩一は鞄を机の横の引っかけにかけて、自分のベッドに突っ伏した。何度こんな事をされたら気が済むんだろう。こうやって僕はいつまでもいじめられるんだ。そう思うと、自分はこの世界に生きていていいんだろうかと思ってしまう。
そのまま浩一は目を閉じた。目を閉じると、今までのいじめの事が走馬灯のようによみがえる。もうそんな夢を見たくないのに。僕は何にも悪い事をしていないのに。親や育ての親のためにこうなってしまった。
「お前なんか、生きていなければええんや!」
「牢屋になんかいればええんや! 犯罪者の息子やもんな!」
浩一は目を開けた。茂などのいじめグループの声がした。浩一は聞きたくないと思い、耳をふさいだ。だが、声が大きくなっていき、耳を塞いでも聞こえる。
浩一は辺りを見渡した。ここは自分の部屋だ。そう思うと、ほっとする。中学校よりも、ここにいる方が幸せだ。でも、ここにいるだけでいじめられるような気がしてしょうがない。
浩一は机に向かった。遺書を書くためだ。浩一はノートを出し、紙に遺書を書き始めた。浩一は泣きそうな表情だ。本当は書きたくないのに、書かなければならないほど追い詰められてしまった。
おじちゃん、おばちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん、理沙ちゃん、ちーちゃん、ごめんなさい
僕はもう、生きるのに疲れたよ
お父さんやお母さんがいないだけで、こんなにいじめられるなんて
大村茂や多くのやつらにいじめられた
どうして僕はこんなにいじめられなければならないんだろう
どうして僕は生まれてきたんだろう
僕はこの世界に生まれてよかったんだろうか?
ひょっとして、いじめられるために生まれてきたのかな?
お父さんやお母さんのいる家の子に生まれたかったよ
今度生まれ変わる時は、お父さんやお母さんのいる家庭がいいな
その方が幸せで、いじめなんてなかっただろうから
みんな、こんな僕でごめんね
今までありがとう
僕はもう天国に行くよ
そして僕は、みんなの心の中で生きるよ
そして、その下には、いじめられた子供の名前を書いた。
と、そこに理沙がやって来た。理沙はすでに小学校を終えて帰宅している。理沙は浩一の様子が気になっていた。また何かされているんだろうか?
誰かがいるのに気づき、浩一は振り向いた。理沙だ。
「どないしたん、理沙」
理沙は不安そうな表情でこっちを見ている。何か悩んでいる事があったら話してほしい。
「なんか様子が変やと思うて」
理沙は部屋を出て行った。浩一はその様子をじっと見ている。またいじめられているんだろうか?
深夜、雅は1階でのんびりしていた。明日は休みだ。千尋は疲れてもう寝ている。とても静かな夜だ。
その時、誰かがやって来た。まだ起きている人がいるとは。雅は顔を上げた。そこには浩一がいる。こんな時間にどうしたんだろう。
「おじちゃん・・・」
「ど、どうした?」
雅は驚いた。こんな時間にどうして来たんだろう。もう寝る時間なのに。
「な、何もないて」
だが、浩一母にかを考えているような表情だ。一体何を考えているんだろう。雅は少し気になった。だが、あまり教えたくない事だろう。何も話さないでおこう。
「そう・・・。おやすみ」
「おやすみ」
浩一は部屋に戻った。雅はその様子を不思議そうに見ている。一体どうしてこの時間に来たんだろう。とても気になる。
次の日の朝、この日は休みだが、浩一は部活の練習試合がある。そのため、朝早くに出かけないといけない。なので、いつもより1時間も早く朝食を作った。ただし、浩一以外は食べるのが後で、いつも通りの時間に食べる。
浩一は2階から下りてきた。弁当と道具を入れたボストンバッグを肩にかけている。いつも通りの光景だ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
浩一は玄関を出て、自転車に乗って、出かけて行った。千尋はその様子をいつも通りに見つめている。
7時ぐらいになって、千沙と理沙が2階から下りてきた。千尋は彼らの朝食も用意して待っている。何でもない日が今日も始まる。そう思わせる朝のように見えた。




