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それから1か月後の事だ。千沙と浩一は徐々に中学校の生活に慣れてきた。だが、浩一はあまり楽しいと思っていなかった。茂がまたいじめてくるのだ。その状況はだんだん過激になってきた。命に関わる事もしてくるのだ。このままでは命が危ないなと思っていた。だが、誰も助けてくれない。千沙は友達の事で頭がいっぱいだ。徐々に浩一は孤立していた。浩一の精神状態は最悪だ。だが、誰も気づいてくれない。どうすればいいんだろう。改善策が見つからない。
「はぁ・・・」
浩一はため息をついていた。これから僕はどうすればいいんだろうか? このまま暗い人生を送り続けるんだろうか? そんなの嫌だ。
突然、後ろから殴られた。浩一は振り向いた。そこには茂がいる。その後ろには、何人かのいじめグループがいる。彼らはいかにも悪そうな顔をしている。
「やったれ!」
茂の掛け声とともに、彼らは浩一を殴り始めた。どうすればいいんだろう。ただただ殴られ続けて、何もできない。やり返したいと思っても、全くできない。
「キャッ!」
そして、浩一は側溝に落とされた。浩一のジャージに泥が付いた。浩一は泣きそうになった。だが、泣く事ができない。
「やったーやったー!」
「くそっ・・・」
そして、茂らは去っていった。浩一は何もできずに、じっと見ていた。どうしよう。またやられた。
「どないしよう・・・」
浩一は悩んでいた。このまま帰ってくると、また千尋に怒られる。以前も怒られた。自分が悪いんじゃないのに。どうして怒られなければならないんだろう。
「浩ちゃん、またやられたん?」
浩一は振り向いた。そこには千沙がいる。千沙は心配そうな表情だ。その表情を見て、浩一はほっとした。やっぱり千沙は、浩一がかわいそうだと思っているんだな。千沙は優しいな。
「たぶん・・・」
千沙はあきれていた。小学校1年生の頃からそうだった。何度注意されても、またいじめる。どうすればいじめをやめるんだろう。全くわからないな。
「懲りない奴やね」
「何とかせんと」
その隣にいる紗耶香もあきれていた。何とかしないと、また浩一がやられる。その為には、どうすればいいんだろう。紗耶香も困っていた。
「そんな事しても、また懲りずにやるんやて。意味ないわ」
「うーん・・・」
やっぱり、先生に言うしかないんだろうか? でも、またやるだろう。意味がないんじゃないかな?
「勇気を出して、言ってみよや」
「でも・・・」
浩一は戸惑っている。またいじめるんだろう。そんなの意味がないに決まっているだろう。じゃあ、どうすればいいんだ?
「その気になったら、いつでも言ってええんだよ」
「うん・・・」
浩一は下を向いたまま去っていった。千沙と紗耶香はそんな浩一の寂しそうな表情をじっと見ていた。あの子が大変な事になっている。何とかしなければ、大変な事になるかもしれない。
その翌日の事だ。浩一はいつものように帰っていた。だが、浩一の気持ちは晴れない。今日はどんな事を言われるんだろう。どんな事をされるんだろう。不安でいっぱいだ。中学校なんて、楽しくない。徐々にそう思い始めていた。中学校に行く意味なんてない。もう中学校に行きたくない。生きる意味なんてないんじゃないかと思い始めていた。だけど、中学校をずる休みしてはいけない。行かなければ、先生にも家族にも怒られる。それだけが、浩一が中学校に行こうという想いを後押ししているだけだった。
浩一は下を向いていた。だが、誰も振り向いてくれない。暗い表情をしていたら、誰かが声をかけてくれるだろうと思っていた。だが、誰も声をかけてくれない。自分の人気って、こんなに低いのかな? 何とかしてほしいのに。自分の心の叫びに気付いてほしいよ。
「おい! お前、なんで松岡の家におるんや?」
その声を聞いて、浩一は振り向いた。また茂だ。まさかそんな事を言われるとは。浩一は戸惑った。
「そ、それは・・・」
「居候してんやろ!」
言おうとしたが、茂に先に言われた。浩一はムカッとしたが、全く抵抗できない。茂が怖いからだ。茂の声を聞くだけで、びくびくしてしまう。小学校1年生からいじめられてきたからだろう。
「そ、それは・・・」
「お前には親がおらへんからな!」
茂はふざけたような表情だ。浩一は殴ろうとした。だが、茂に殴られて、側溝に落とされた。また側溝に落とされてしまった。そして、千尋にまた怒られるんだろうな。いつもその繰り返しだ。
「親なし野郎!」
浩一はすぐに立ち上がり、家に向かって歩き出した。その様子を、茂は面白おかしく見ていた。
「ハハハ・・・、行っちゃった!」
突然、誰かが茂を殴った。紗耶香だ。紗耶香はその様子を見ていた。
「あんたら、やめなよ!」
「ヒヒヒ・・・」
だが、茂は笑みを浮かべながら去っていった。その様子を見て、紗耶香はわかった。茂は反省していない。またやるだろう。相変わらず懲りないやつだな。
「反省してへん・・・」
紗耶香は浩一のもとに走ってやって来た。浩一は下を向いている。そして、泣いている。
「浩ちゃん、大丈夫?」
紗耶香の声に、浩一は振り向いた。まさかやって来てくれるとは。浩一は驚いた。
「わからん・・・」
「言いなよ!」
だが、浩一は首を振った。先生に言う気がないようだ。言ってもまたいじめられる。その繰り返しだ。先生に言っても意味がないと思っていた。
「早く言わないと、いじめられてばっかやて!」
だが、浩一は紗耶香を振り払った。紗耶香は驚いた。こんな事をされるのは初めてだ。どうしたんだろう。
「どんな事しても同じなんや!」
「浩ちゃん・・・」
浩一は泣きながら帰り道を再び歩き始めた。紗耶香はそんな浩一の後ろ姿をじっと見ていた。




