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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第1巻 大阪編  第1章 一緒に住む
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6

 それから数日後、相変わらず大志田家では何かを叩く音が聞こえる。その音は徐々に大きくなっていく。一体何が起こっているんだろう。とても気になる。もしかして、浩一を虐待しているんじゃないかと思えてくる。


 2人とも不安になっている。もし、虐待ならば、警察に言わなければならない。そうしたら、浩一はどうなるんだろうと思ったが、それは自分たちが育てればいいと思っている。


 千尋は近くの八百屋にやって来た。八百屋は空襲で焼け野原になって、再建まではまだまだだ。だが、みんなが待っているから、少しずつではあるが営業していかないとと思っているようだ。


「あら、いらっしゃい」


 八百屋の主人がやって来た。八百屋の主人の家族はみんな無事だったが、家が焼けてしまった。残念だけど、家族がみんな生きていただけでも嬉しい。これから頑張っていこうという気持ちになれる。


 千尋はいくつかの野菜を手に取った。野菜もなかなか手に入らない状況だ。だが、買わなければ。


「これとこれ、お願いします」

「おう、わかった」


 店主は計算をした。千尋は主人の様子をじっと見ている。


「887円です」


 千尋は1000円札を出した。


「113円のおつりです。まいどおおきに!」


 店主は113円を渡した。店主は笑みを浮かべている。買ってもらえるだけでも嬉しいようだ。


「ありがとうございました」

「ねーねー、鈴木さん」


 店主は驚いた。今度は何だろう。これで帰ると思っていたが、まだ用事があるんだろうか? 何か聞きたい事があるんだろうか?


「どうしたの?」

「浩一くん、変だと思わん?」


 坂井浩一の事だろうか? 大志田さん家が引き取ったあの子がどうしたんだろうか? 浩一の事で、何か気になる事があるんだろうか?


「うーん・・・」


 だが、店主は何も思い浮かばない。浩一はよく見る子なのに、どうしたんだろう。


「顔にアザができてると思わん?」

「そ、そうね」


 そういわれて、店主はハッとなった。そういえば、ここ最近、浩一の顔のアザが気になるな。何かがあったようだが、いったい何があったのか、わからない。誰かに殴られているようだ。いかにも怪しい。誰かに殴られているのなら、早く通報しないと。


「最近、大志田さんのお宅がおかしいねん。何かを叩く音が聞こえるんや」


 店主はこれにも反応した。確かに、最近大志田家の様子がおかしい。変な音がするからだ。


「うーん、そやねー」

「怪しいと思わん?」


 千尋は近づいた。何としても、その原因を突き止めたい。そして、虐待だったら何とかしたい。


「思うわ」


 そう言われてみると、怪しいと思う。そして、浩一を救いたいと思えてきた。これは重大な事だ。何とかしないと。


「わからん?」

「うん」


 そろそろ帰らないと、家族が待っている。千尋は夕陽を見て、焦っていた。


「何かあったら知らせてね」

「え、ええけど」


 店主も、大志田家をマークする事にした。いかにも怪しい。何とかしないと。




 その夜、やっぱりあの音が聞こえる。そのたびに、雅と千尋は不安になった。浩一の身に何かがあったらどうしよう。不安でたまらない。早く何とかしたい。


「今日も音が聞こえると思わん?」

「そやね」


 雅も不安そうに見ている。だが、自分たちには何もできない。茂人も多鶴子もけっこう強い。私たちではかなわないだろう。警察の力で何とかしないと。


「何かが怪しいわ。聞いてみよや」


 翌日、2人は警察に聞いてみる事にした。浩一を守るために。




 翌朝、千尋は朝の空気を吸い込んだ。今日は冬晴れの青空だ。肌寒いけど、今日も頑張ろう。


 と、家の前を浩一が歩いていく。浩一は元気がなさそうだ。そして、浩一の顔を見て、千尋は驚いた。顔の所々にアザができている。けがだろうか? だとすると、いつどこで何が原因でけがをしたんだろうか?


「浩ちゃん、このアザ、どないしたん?」


 と、雅もやって来た。すがすがしい朝なので外に出たのだろう。浩一の顔を見て、雅も気になった。


「浩ちゃん、大丈夫?」


 だが、浩一はなかなか言わない。言えない事情のようだ。


「だ、大丈夫・・・」


 浩一の唇は震えている。何かに怯えているようだ。とても気になる。その理由を知りたい。知らなければ、浩一の命が危ないかもしれない。


「本当やろか?」


 浩一は去っていった。千尋は首をかしげた。昨日の音といい、浩一のアザといい、大志田家には何かがあるのでは?


 朝食を食べながら、雅と千尋は話をしている。大志田家の事だ。浩一は大丈夫だろうか? もし、何かあったら、こっちで保護したいな。


「大志田さんち、怪しいと思わん?」

「ああ」


 同じちゃぶ台では千沙と理沙が朝食を食べている。彼らは何も気にしていないようだ。


「虐待されてるんちゃうと思ってんねん」


 浩一のあのアザは大志田夫妻による虐待によるものじゃないか? だったら、一刻も早く通報しないと。このままでは浩一の命が危ない。


「そ、そんな事ないやろ?」


 雅は信じられなかった。せっかく拾った子なのに、死んだ子の生まれ変わりだと思って大切に育てているはずなのに。


「ちょっと、のぞいてみよか」

「うん」


 今日は休日だ。茂人も多鶴子もいる。何としても秘密を探らないと。もし虐待なら、浩一の命が危ない。

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