4
年が明けて1946年になった。太平洋戦争が終わって最初の元旦だ。去年は家族全員がそろわなかった。だが、今年はそろう事ができた。何もかも、戦争が終わったからだ。こうして家族全員がそろうのは、本当に嬉しいな。こんな日々がいつまでも続くといいな。
だが、千沙と理沙はいつも通りの表情だ。戦争なんて全く考えた事がない。記憶にない。彼女たちは、戦時中に生まれたが、戦争を知らない世代だ。戦争を伝えていかなければならないのに、知らないのは残念だ。だが、これからいろんな場所で、日本は戦争をしていたんだと聞くだろう。そして、戦争の歴史を知っていくだろう。
雅は昇る朝日を見ていた。初日の出を見るのは、何年ぶりだろう。とてもすがすがしいな。まさか、また見られるとは。こうして再び帰ってこれた喜びをかみしめて、また頑張っていこう。
「今日から新しい年やね」
「ああ」
千尋も喜んでいる。毎年初日の出は見ているが、今年はなぜか新鮮だ。家族そろって見るからだろう。
「戦争のない、新しい年になったらええな」
「うん」
2人とも、戦争のない日々を願っていた。それは、世界中の全ての人々の願いだろう。だが、それが続くのはいつまでだろう。また戦争が起きるんだろうか? そして、多くの犠牲者が出るんだろうか? そう思うと、どうして人間は戦争をするんだろうと思ってしまう。
と、多鶴子がラジオに耳を傾けている。何があったんだろう。
「どないしたん?」
「天皇様って、人間やったんやな」
天皇様は神だと思っていたのに。雅と千尋は驚いた。戦争を起こしたから、こんな事を言っているんだろうか?
「えっ!?」
「人間宣言をしてるねん」
多鶴子はそれを真剣に聞いている。まさか、こんな宣言をするとは。
「そ、そうか」
「天皇様って、人間やったんか」
茂人もその話を聞いている。元旦からこんな宣言があるとは。どうしたんだろう。
だが、そんなのはあまり関係ない。平和な1年が始まるんだと思おう。深い事を考えずに、明るく生きよう。
「とりあえず、平和な年がこれから始まるんだと考えようや」
「そやね」
彼らは、今年が平和な1年であるようにと願った。今年はどんな事があるんだろう。全くわからないけれど、まだまだ戦争の傷跡は消えていない。だが、徐々に薄れていくだろう。そして、戦争なんてなかった、もう二度と戦争なんて起こさないようにしてほしい。
2月上旬の事だ。雅と千尋はワクワクしていた。家が再建されたのだ。去年の3月13日から14日にかけての大阪大空襲でがれきの山になった。だが、修復された。それを見て、この家が家族の戦後復興の象徴になるだろうと思った。この先、家族はどんな事が起こるかわからない。だけど、いい事がいっぱい怒るだろうな。
「いよいよ家が直るんやね」
「うん」
2人は家を見ていた。2人ともとても嬉しそうだ。その意味が分からない千沙と理沙はそれをじっと見ていた。どうして両親は喜んでいるんだろう。全くわからないな。
「これからまた、新しい生活、始めよっか?」
「ああ」
と、理沙は気づいた。これは新しい家だろうか? これからここに住むんだろうか? 全くわからないけれど、そうだったらいいな。
「これが新しいおうち?」
「そやで。楽しみやろ?」
それを聞いて、理沙はワクワクした。これからここに住むんだ。きっとこれから、もっといい日々が始まるだろう。これからの日々に期待したいな。
「うん!」
「そうかそうか」
雅は理沙を抱きしめた。これから家族幸せに過ごそうな。これからどんな日々があるかわからない。だけど、みんなで乗り越えていこう。そして、平和で素晴らしい家庭を築こうじゃないか。
翌日、大志田家も再建した。夫婦は喜んだ。一緒に暮らす浩一もまた喜んだ。これから安定した日々が送れるだろう。これからもっといい日々を送っていこう。大変な時は、一緒に励ましあおう。それが家族なのだから。
「こっちもやっと再建したんか」
「そやね」
2人は再建された家を見ていた。大阪大空襲で焼け野原になったが、ようやく再建した。やっと普通の生活が送れる。それだけでも嬉しい。これから、我が家は復興の道を歩むんだろうな。
「これから幸せに暮らそうや」
「うん」
浩一は喜んでいる。やっと家に入れるからだ。
「この子もきっと楽しみにしているやろね」
「うん」
と、そこに雅がやって来た。どうやら、大志田夫妻の家も再建したようだ。いろいろあったけれど、こうしてまた普通の生活が送れる。それだけでもなぜか嬉しい。戦時中は自由な日々を送れなかったから。
「あら、お宅さんも再建かいな」
「おう。いい家やろ?」
茂人は笑みを浮かべている。茂人は嬉しそうだ。家が再建したのが嬉しいようだ。嬉しい事や辛い事、いろんな事があるだろうけど、つらいときはみんなで協力して生きてほしいな。
「うん」
「お互いいい家庭を築いていこうや」
茂人は多鶴子の肩を叩いた。多鶴子は少し照れた。多鶴子は改めて、この人と結婚できてよかったと思った。