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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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25

 翌々日、千沙と浩一は下校しようとしていた。いつも一緒に帰っている紗耶香は居残り勉強があって、帰りが遅くなるようだ。2人で下校するのは、何日ぶりだろう。少し寂しいな。帰るときの人数が1人でも少なかったら、こんなに寂しく漢字つものかな? そう思いつつ、2人は帰ろうとしていた。


「じゃあね、バイバーイ」

「バイバーイ!」


 2人は教室を後にした。紗耶香しかいない教室はとても寂しい。今さっきの騒然とした風景がまるで嘘のようだ。だが、明日の朝になれば、また賑やかな1日が始まるだろう。明日はどんな1日になるんだろう。わからないけれど、いい日になるといいな。


 2人は校門を出て、実家までの道のりを歩いていた。普段見慣れた、いつもの風景だ。それを見るだけで、安心できる。どうしてだろう。自分たちにはわからない。いつも見ている風景には、そんな力があるんだろうか?


 しばらく歩いていると、捨て子があった場所に差し掛かった。おととい、ここに赤ん坊が捨てられていた。今は松岡家でお世話になっている。だが、このままでいいんだろうかと思う。本当の両親の元に戻さなければいけないと思っている。そう思うと、何日あの赤ん坊はわが家が世話をするだろう。いつになるかわからないけれど、本当の両親が見つかるまでここで育てよう。


 その辺りを、1人の男がうろうろしている。なんだか怪しい。千沙もその様子を見ている。だが、浩一は何とも思っていない。普通だと思っているようだ。


 一方、千沙はその男が気になっている。見ているうちに千沙は思った。その男が、赤ん坊の父親ではないだろうか? 男の様子を見ていて、徐々にそう思えてきた。


「どないしたん?」

「あの人、昨日の帰りの時間もうろうろしてたんやで」


 そんなにあの男が気になるんだろうか? もしかして、あの赤ん坊の父親だと思っているんだろうか? だとすると、あの男に赤ん坊を返さなければならないんだろうか?


 と、浩一はある事に気がついた。赤ん坊が捨てられていた場所じゃないか? じゃあ、その男は赤ん坊の父親じゃないか?


「えっ!? ここって、あの赤ん坊が捨てられていた所やないか? まさか、あの子のお父さん?」

「わからんけど、とりあえず聞いてみよや」


 2人は男に近づいた。だが、男は2人に気がついていない。わかっていないようだ。


「すいません」


 突然、誰かが話しかけてきた。一体誰だろう。男は首をかしげた。


「ここに捨てられていた赤ん坊で何か?」


 それを聞いて男は驚いた。まさか、あの赤ん坊を知っているんだろうか? まさか、あの子をここで預かっているんだろうか? もし預かっているのなら、会わせてほしいな。


「はい、そうですけど、私はその赤ん坊の父です」


 千沙の思った通り、この人はあの赤ん坊の父親のようだ。まさか、父親がやってくるとは。でも、母親はどこだろう。まさか、捨てたのは母親だろうか?


「えっ!? 今、私の家で保護してるんやけど」


 それを聞いて、赤ん坊の父親はほっとした。どうやら生きているようだ。早く会わせてほしいな。


「そ、そうですか? 今すぐ会わせてください!」

「はい、わかりました」


 男は2人についていく事にした。その赤ん坊は元気にしているんだろうか? 少し不安だ。だが、保護されていると知って、ほっとした。


 しばらく歩いて、3人は松岡家にやって来た。ここで赤ん坊を預かっているんだ。早く会いたいな。赤ん坊の父親はワクワクしていた。


「ただいまー」


 玄関を開けると、エプロンを付けた千尋がやって来た。と、千尋はある男が一緒にいるのが気になった。まさか、あの子の父親だろうか? この人が赤ん坊を捨てたんだろうか? でも、表情から見て、捨てていないように見える。それに、捨てていたらここに来ないだろう。


「おかえりー」

「お母さん、おととい拾った赤ん坊のお父さん」


 それを聞いて、千尋はハッとなった。やはり、あの赤ん坊の父親だったのか。父親が見つかっただけでも、嬉しいと思わないと。でも、母親はどこに行ったんだろうか? まさか、母親が捨てたんだろうか?


「あら、どうしたんですか?」

「赤ん坊が心配で」


 赤ん坊の父親は辺りを見渡した。赤ん坊を探しているようだ。早く会わせたいな。3人は思っていた。

 千尋は赤ん坊のいる部屋に案内した。赤ん坊は2階にある千沙の部屋で世話になっている。


 千尋は千沙の部屋に入った。そこにはゆりかごで寝ている赤ん坊がいる。それがあの赤ん坊だ。


「この子です」


 それを知って、赤ん坊の父親は赤ん坊を抱きしめた。よほど会いたかったんだろう。赤ん坊の父親は笑顔になった。


「あー、よしよし」


 千尋は思った。どうして赤ん坊を捨てたんだろうか? その理由を知りたかった。


「なんで捨てたんですか?」

「いや、私が捨てたんやない。妻や。妻は子供がいらんと言ったから捨てたんや。俺は欲しかったのに」


 やはり、赤ん坊の母親が捨てたようだ。悪い母親だな。千鶴子よりもひどいんじゃないかな?


「そんな・・・」


 千沙と浩一もその話をじっと聞いていた。そんな母親もいるんだな。とてもひどいな。そんな人とは別れた方がいいのに。そして、父親が1人で育てればいいのに。

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