表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
34/40

21

 それから1か月後の事だ。三原の子供の話題も少しずつ忘れ去られてきた。今さっき、あれだけ騒いでいたのは、何だったんだろうと思うぐらいだ。


 千沙は最近、もう1つ気になっている事があった。隣の席に座っている高俊たかとしの事だ。最近、どこか元気がないように見える。何かあったんだろうか? 様子を見れば、何かがあったように見える。大丈夫だろうか?


「どないしたん?」


 千沙は振り向いた。そこには浩一がいる。浩一は、千沙の様子が怪しいと思っていた。何を考えているんだろう。話してほしいな。友達じゃないか?


「最近、高俊くんの様子が変やなと思って」

「ふーん」


 浩一は高俊を見た。確かに怪しい。何か、考え事をしているみたいだ。浩一も気になると思った。


「傷だらけやし、元気がないし」


 言われてみればそうだ。よく見たら、高俊の体に傷がある。これも気になる。浩一は虐待を受けていた自分の過去を思い出した。ひょっとして、虐待を受けているんだろうか?


「そういえば、そやね」

「浩ちゃんもそやったから、そんな気んねん」


 千沙も、それは虐待ではないかと思っていた。千沙も浩一の虐待されていたころを思い出したし、小学校に入学してからはいじめを受けて、傷だらけだ。いじめもあるかもしれないな。でも、いじめられているという報告はないし、目撃情報もない。


「浩ちゃんも気になるやろ?」

「うん」


 2人は高俊のもとに近づいた。だが、高俊は全く気付いていない。考え事をしているからだ。


「高俊くん、最近大丈夫?」


 高俊は我に返り、横を向いた。そこには千沙と浩一がいる。どうしたんだろう。


「大丈夫だよ」


 だが、高俊は大丈夫だと言う。明らかに大丈夫じゃないよう見えるのに。隠しているんだろうか? 隠し事はよくないのに。


 突然、千沙は高俊の肩を叩いた。高俊は驚いた。


「そう。悩んでる事があったら、言ってもええんやよ」

「うん」


 結局、高俊がどうしてこんな表情なのか、何に悩んでいるのか、聞く事ができなかった。早く突き止めないと、高俊が心配だ。どうすればその理由がわかるんだろうか?




 その日の帰り道、千沙と浩一は一緒に歩いていた。2人の話題は、高俊の事でいっぱいだ。どうしてあんな表情なのか、とても気になるな。両親にも協力してもらって、調べてもらおう。


「高俊くん、大丈夫やと言ってるけど、絶対に何かあるやろな」

「うーん、そうかな?」


 浩一は疑っている。本当は大丈夫じゃないんだろうか? ただ、自分だけの何かで悩んでいるだけじゃないだろうか?


 と、千沙は浩一を見た。どうしたんだろう。浩一は千沙と向かい合った。


「浩ちゃん、あんたもそんな目に遭ったのに、わからんの?」

「あっ・・・」


 浩一は虐待されていた時の事を思い出した。確かにあんな感じの暴力を受けていたし、こんな傷だったな。あの時と一緒だと思ったら、ますます怪しくなってくる。これは調べないと。


「そやろ。絶対に虐待やろ」

「そやね。調べてみよう」

「うん」


 2人は調べる事にした。この子を救ってみせる。その気持ちが、彼らを動かしていた。




 その夜の事だ。千沙と理沙、浩一はダイニングで食事をしていた。雅、千尋、徳次郎、ハルもいる。いつもの団欒の家族の風景。これがどんなに素晴らしいのか、浩一はその大切さを感じていた。


 千尋は高俊の話を聞いた。やっぱり気になるな。何とかしないと。


「そう。明らかに怪しいわ。どうしたんだろう。私も気になるわ」


 千尋は思った。高俊のためにも、その原因を調べないと。早くわからないと、取り返しのつかない事になってしまうかもしれない。


「でしょ? 浩ちゃんも気になるやろ?」


 雅もその話を真剣に聞いていた。これは大変だな。何とかしないと。


 千尋も思った。まるで虐待されていた頃の浩一のようだ。高俊も浩一同様、虐待を受けているのでは?


「うん。あの傷、浩ちゃんが虐待されていた時と一緒やね」


 と、雅が机を叩いた。何かを思いついたんだろうか? 6人は雅の方を向いた。


「よし! 明日から調べよっか」

「お父さん、おおきに」


 千沙は嬉しくなった。まさか、雅も調べてくれるとは。やっぱり雅は頼りになる父だな。浩一も頼もしいと思っていた。こんな家族に住めて、よかったと思った。




 翌日、千尋は八百屋にやって来た。買い物に来たのだが、もう1つ狙いがある。高俊の事だ。高俊がどうして、悩んでいるのか、あの傷が何なのか調べるためだ。八百屋にも協力してもらわないと。浩一の時もそうだった。この人が頼りにしてくれた。


「八百屋さん、高俊くんの様子、おかしいと思わん?」


 八百屋も感じていた。明らかに怪しい。何かあるんじゃないかな? これはもっと調べないとな。


「うーん、そういえば怪しいわ」

「浩ちゃんと同じ事、やられとるんちゃうかと思ってな」


 そういえば、浩一の虐待もそうだったな。同じ事の可能性もある。もしそうだったら、警察に言わないとな。


「そやね。また気を付けておくわ」

「ありがとう」


 千尋は去っていった。八百屋は千尋の後ろ姿を見ている。今度、高俊の母が来たら、その理由を聞かないとな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ