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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
33/37

20

 翌日の休み時間、浩一は千沙と話をしていた。話題は三原の赤ちゃんの事だ。あの子、とてもかわいいな。見ているだけで、癒される。きっとみんな見たら、かわいいと思うだろうな。


「浩ちゃん、考えがあるん」

「何?」


 千沙は、何かを思いついたらしい。何を思いついたんだろうか? 全くわからないな。


「三原先生の奥さん、男の子を産んだんやて。どんな名前がいい?」


 千沙は吉田の子の名前をどうしてようか考えていた。だが、なかなか思いつかない。自分たちで名前を付けてやろうと思ってるのに。どうしよう。


「うーん・・・、のぼる?」


 浩一は適当に考えた。浩一は、名前なんて全く考えていなかった。でも、せっかくだったら僕たちが名付け親になってみたいという気持ちもある。


「ええやん」


 千沙はいいと思っていた。浩一は戸惑った。まさか褒められるとは。


「青田昇から取ったんや」


 青田昇は巨人軍の選手で、『じゃじゃ馬』と言われていた。浩一はその選手が気になっていた。


 でも、千沙は思った。みんなで考えたら、どうだろう。みんなで考えた方が、もっと愛情がわくだろう。


「そっか。そや、みんなで考えよや!」

「そやね!」


 浩一もその考えには乗り気だ。みんなで考えた方が楽しいだろう。




 昼休み、2人は職員室にやって来た。目的は、三原に会う事だ。三原の新しい子供の名前を、自分たちが決める案を立ててみよう。きっとみんな喜ぶだろうな。


 2人は職員室に入った。三原は写真を見ている。それは、自分たちの子供だ。まだ名前は決まっていないものの、とてもかわいいな。


「三原先生!」


 三原は顔を上げた。千沙と浩一が来るとは。どうしたんだろうか?


「どないした?」

「今度生まれた子供の名前、みんなで考えるのはどうですか?」


 それを聞いて、三原は驚いた。まさか、自分たちで名前を決めるとは。これは面白いな。ぜひやってみたいな。その子への愛着ができるだろうし。


「うーん、それはええな! みんなで考えるのって」


 ふと、千沙は思った。今日の帰りの会で発表してみようよ。そして、みんなで決めようよ。


「いいでしょ? 今日の帰りの会で、みんなで考えようよ!」

「うん!」


 三原も嬉しくなった。まさか、先日設けた息子の名前を生徒が考えてくれるとは。


「やったー!」


 2人は笑顔で職員室から出てきた。何が起こったんだろう。周辺を歩いている人は思い、2人に向かってきた。


「どないしたん?」

「三原先生の生まれた子供の名前、今日の帰りの会でみんなで考えるんやて」


 男の子は驚いた。まさか、三原が子供を設けたとは。それは見てみたいな。それに、自分たちで決めるとは。とてもワクワクするな。


「ふーん、いいじゃん!」


 2人は職員室を後にした。そんな2人の姿を、少年はじっと見ていた。




 そして、帰りの会の時間になった。三原は少し緊張している。もうすぐ子供の名前が決まるからだ。生徒は静かに三原を見つめている。


「えー、みなさんにお願いがあります。先日、私の奥さんが子供を産みました。そこで、みんなに新しい子供を考えてほしいのです。男の子です」

「優!」


 茂は真っ先に考えた。三原は思った。これもなかなかいい名前だな。候補に入れておこう。


「なるほど」

「勇樹!」


 次に考えたのは、浩一の隣の席の松本だ。これもいいな。どうしよう。なかなか決まらないな。


「それもええな」

「将司!」


 次に考えたのは千沙だ。浩一とは別の答えだ。三原はますます迷った。どうしよう。自分が考えた名前がいくつかあるのに。子供たちは様々な答えを考えてくるな。これらのどれかにした方がいいんだろうか?


「うーん、色々出てくるなー。他には?」


 だが、誰も手を挙げようとしない。なかなか思いつかないようだ。どうしよう。そうだ、手を挙げて多数決で決めるのはどうだろう。


「じゃあ、この中から投票だ! これがいいと思ったら、手を挙げてくれ! じゃあ、優!」


 手を挙げたのは10人だ。けっこういるな。


「10人か。じゃあ、勇樹!」


 勇樹がいいと答えたのは、たったの5人だ。若干、優よりも少なめだな。こっちもいいと思っているのに。どうしてだろうか?


「5人か。それじゃあ、将司!」


 将司で手を挙げたのは、16人だ。これで決まりだな。


「16人! じゃあ、将司で決まりや!」


 みんなは喜んだ。自分たちで考えた名前だ。愛着を持たないと。




 その夜、三原は妻の病室にいた。病室の中で、妻は穏やかな表情だ。いろいろあったけれど、ようやく出産できた。早く我が子に対面するのが楽しみだな。


 三原は何かを考えている。何を考えているんだろうか?


「どうしたの?」

「この子の名前、将司にしようと思ってんねん」


 妻は驚いた。まさか今日決まるとは。これでもいいけど、誰が考えたんだろうか? 本人が考えたんだろうか?


「どうして?」

「うちの生徒で決めたんや」


 妻は驚いた。生徒が決めるとは。みんな、悩んだんだろうな。きっと、みんなこの子を大切にするだろうな。


「あら、ええやないの!」

「みんなで決めた名前や! この子を大事にしよや!」

「そうね!」


 この子の名前は将司に決まった。これから、どんな大人になるのか楽しみだな。




 それから1週間後、三原の妻は退院した。妻は将司を抱いている。とてもかわいい子だ。愛情をもって育てようじゃないか。


「退院おめでとうございます!」


 三原は驚いた。生徒がやって来たのだ。まさか、生徒が来てくれるとは。前から狙っていたんだろうか?


「みんな、来てくれたんだ! おおきに!」


 と、千沙は妻が抱えている子供が気になった。この子が将司だろうか? とてもかわいいな。


「この子が将司くん?」

「そう!」


 それを聞いて、生徒は将司を見た。将司はすやすや眠っている。寝顔もかわいらしい。


「かわいいね!」

「おおきに!」


 まさか生徒が退院に駆け付けてくれるとは。三原はいい生徒を持ったな。きっと、この生徒たちとの1年は一生ものになるだろうな。

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