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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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17

 1949年になった。戦争の日々は着々と遠くなっていく。だが、まだまだその記憶は強く残っている。人々は、その負の記憶を胸に、世界平和を願いながら生きていかなければならない。そして、世界平和のためには、何をしなければいけないのか、考えていかなければならない。


 1月15日、この日はなぜか休みだ。千沙と理沙、浩一は喜んでいた。今日は休みだ。ゆっくりできる。家で家族と一緒にいられる。3人とも大喜びだ。


 朝、雅は外が気になっていた。外を歩いている人々の中には、美しい着物を着ている人がいる。何かがあるんだろうか? 全くわからない。


「今日は成人の日なんやな」


 雅は振り向いた。そこには千尋がいる。千尋は知っていた。今日は成人の日で、今年度で20歳になった、またはなる男女が成人式に向かうのだ。その為に、美しい着物を着ている。


「そうなの?」


 雅は驚いた。こんな式があるんだ。初めて聞いたな。どんな式なんだろう。とても気になるな。


「今日は成人式があるんやね」

「それでみんな着物を着とるんか」


 雅は感心した。きっとみんな、小中学校の友達と出会い、そしてこれまでの日々の事を語り合うんだろうな。とても楽しそうだな。20年の人生には、第二次世界大戦、太平洋戦争があった。成人を迎えられずに死んでいった若者もいただろう。彼らは天国で、彼らを見ているんだろうか? 成人を迎えられずに、悲しんでいるだろうな。


 ふと、2人は千沙と理沙、浩一の事を考えた。この子もいつか成人を迎えるだろう。その時は、どんな子になるんだろう。全くわからないけれど、いい日々を送ってほしいな。


「いつかあの子たちも成人式を迎えんのやね」

「どんな大人になるんやろか」


 突然、雅が千尋の肩を叩いた。千尋は驚いた。


「彼らの将来に期待しよや」

「ああ」


 美しい着物を着て歩いている成人を見て、彼らは思った。3人はどんな大人になるんだろう。どんな人生を歩んでいくんだろう。




 そんなある日の事だ。浩一は小学校にいた。この時間は休み時間だ。ちょっと疲れたけれど、しっかりと休んで、次の授業に備えよう。


 浩一はトイレに向かった。次の授業までに用を足しておこう。授業中にトイレに行ったら、迷惑になるだろう。休憩時間に行っておくべきだ。


 浩一は男子トイレの個室に入った。鍵を閉めて、ズボンを下ろそうとした。その時、頭上から水が落ちてきた。


「キャッ!」


 浩一は驚いた。まさか、水が落ちてくるとは。誰がそんな事をしたんだろう。個室の中では全くわからない。


「ウフフ・・・」


 壁の向こうでは、笑い声が聞こえる。おそらく、その男が水をかけたんだろう。声からするに、茂と思われる。またやっているのか。まったく懲りないな。


 浩一はずぶ濡れで教室に戻ってきた。その様子を見て、茂をはじめとする生徒は笑っていた。浩一は恥ずかしそうだ。まさかこんな事をされるとは。


 チャイムが鳴り、畑山がやって来た。浩一を見て、畑山は驚いた。どうして浩一はずぶ濡れなのか。まさか、トイレの水をかぶったんだろうか?


「坂井、なんでずぶ濡れなんや!」


 畑山は怒っている。拳を握り締めている。その様子を見て、茂は笑っている。その表情を見て、浩一は思った。きっとあいつがやったんだ。


「そ、それは・・・」


 浩一が理由を言おうとした。だが、畑山は机を叩いた。浩一は震えあがった。


「廊下に立っとれや!」

「はい・・・」


 浩一は廊下に立たされた。まさか、こんな事になるとは。浩一は教室を出て、廊下に向かった。茂は笑みを浮かべて、その様子を見ている。だが、畑山は全く気にしていない。


 浩一は廊下で泣いていた。どうして自分は廊下に立たされなければならないんだろうか? 自分が悪いんじゃないのに。水をぶっかけた人が悪いのに。あまりにも悔しかった。やった奴が名乗り出たら、今すぐ殴りたい。だけど、殴れない。


 チャイムが鳴り、畑山が教室から出てきた。畑山を見て、浩一は焦った。何をされるんだろう。浩一を見ると、畑山は浩一の方にやって来て、拳で頭を殴った。


「バカモン!」


 畑山は職員室に向かっていった。浩一は泣きながら拳を握り締めている。どうしてそんな事をされなければならないんだろう。


 畑山と入れ替わるように、千沙がやって来た。浩一を見つけると、千沙は近寄り、頭を撫でた。


「大丈夫? どないしたん?」

「トイレで個室に入ってたら、水をぶっかけられたんや」


 浩一は泣いている。こんな事で廊下に立たされるとは。あまりにもひどいよ。


「そ、そんな・・・」


 千沙は絶句した。そんな事をされたとは。一体誰がやったのか。一番怪しいのは茂だと思う。廊下に立たされる時、笑っていたから。


「大丈夫なん?」

「うん・・・」


 浩一は耐えていた。何度やっても、懲りずにいじめるのなら、何度先生に言っても意味がないだろう。突然、千沙は浩一の肩をつかんだ。浩一は顔を上げた。


「大丈夫じゃないやん。言ったるよ!」

「お、おおきに・・・」


 千沙は笑みを浮かべた。浩一はほっとした。千沙の笑顔を見ると、どうしてこんなにもほっとするんだろう。一緒に生活しているからだろうか? それとも、単に優しいからだろうか?


「困った事あったら、私に頼ったらええんやで」

「うん・・・」


 浩一は思った。一体誰がやったんだろう。茂が一番怪しいけれど。


「一体誰がやったんや」

「わからんな」


 と、そこに谷川先生がやって来た。それを見て、2人はやって来た。


「先生!」

「どないした、松岡」

「坂井くんがびしょぬれになった件やけど、誰かにトイレで水をぶっかけられたらしいんや」


 それを聞いて、谷川は驚いた。こんな事があったのか。こんな事で廊下に立たされて、かわいそうだな。


「そっか。誰がやったんやろ。先生が気を付けとくから、今日はもう帰んな」

「はい。おおきに!」


 谷川は思った。誰がそんな事をやったんだろう。絶対にやった人を突き止めてやる!

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