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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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13

 夏休みが明け、再び小学校の日々が始まった。浩一は慣れない新学期に戸惑いながらも、徐々に慣れてきた。新学期になったとはいえ、いつもと変わらない、いつもの先生に、いつもの同級生。これが3月まで続いていくんだな。


 浩一は帰り道を歩いていた。まだまだ残暑が続き、暑い日々が続いている。とっくに暦の上では秋になったのに、まだまだ暑いな。いつになったら秋らしい天候になるんだろう。全くわからないな。


 今日は千沙が居残り勉強で、帰りが少し遅い。久しぶりに1人で帰る。浩一はびくびくしていた。また何かをされるんじゃないかな? もしされたら、どうしよう。


 突然、目の前に男が現れた。茂だ。どうしたんだろう。またいじめようと思っているんだろうか?


「おい、お前のお父さんとお母さんはどこにおるんや!」


 浩一は一瞬、下を向いたが、すぐに前を向いた。もうあの夫妻は夫婦じゃない。今の両親は雅と千尋だ。


「家にいる!」


 だが、茂には信じられないようだ。本当は大志田夫妻だろう。わかっているんだ。大志田夫妻は浩一を虐待して、檻の中だろう。


「嘘言っとんなよ! お前のお父さんとお母さんは檻の中やろ!」

「違う! 普通に家で暮らしとるわ!」


 だが、浩一は強い口調だ。もう言わないでくれ。注意されたのに、どうしてまたいじめるんだ。


「何言っとんや犯罪者!」


 茂は浩一を殴り始めた。嘘を言われてむかついたからだ。浩一は抵抗できずに、うずくまった。


「ちょっとやめなさいよ!」


 茂は振り向いた。そこには千沙がいる。居残り勉強をしていたが、ようやく終わって、下校していたようだ。千沙を見て、茂は下を向いた。


「ご、ごめんなさい・・・」


 茂は去っていった。浩一は泣いている。千沙はそんな浩一をじっと見ている。またいじめられたのか。茂は懲りない奴だな。


「大丈夫?」

「うん・・・」


 浩一は大丈夫と答えたが、本当は大丈夫じゃない。またやられた。どうしたらこんな事をされないんだろう。全くわからないな。


「全然反省せんのやね・・・」


 千沙は腹が立っていた。茂は全く反省しない。どうしたら反省するんだろう。


「辛いよ・・・」


 千沙は、泣いている浩一の頭を撫でた。千沙はとても優しいな。


「大丈夫大丈夫。私が守ったるから」

「ありがとう・・・」


 浩一は再び立ち上がった。そして2人は、家に向かって歩き出した。その向こうには、虹が見えている。どうか明日は、平和でありますように。




 その頃、近所に住んでいる嶋さん家は大騒ぎになっていた。主婦の光江みつえは騒がしく歩き回っている。光江の様子を見て、太郎は不思議に思った。きっと大変な事に違いない。


「どないしたん?」

「財布がないんや」


 それを聞いて、太郎は驚いた。光江が入れた場所を間違えたんだろう。その内見つかるさ。だが、早く見つけないととんでもない事になるだろう。早く見つけてほしいな。


「えっ!? ほんま?」

「ここに入れたはずやのに」


 光江は指をさした。いつもここに入れているはずなのに、なぜか見つからない。ひょっとして、空き巣じゃないだろうか? 光江は不安になった。


「探そや」

「おう」


 2人は家中を探していた。その様子は、近隣の住民からも見えていた。多くの人々は、何をしているんだろうと思っている。だが、徐々に彼らは思い始めてきた。これは大変な事だろう。何とかして助けないと。


 2人は10分ほど隅から隅まで探した。だが、財布は見つからない。これは大変な事だ。みんなにも協力してもらって、探さないとな。


「どや?」

「ここにもあらへんわ」


 と、そこに1人の女がやって来た。隣に住む山本さんだ。嶋夫妻が騒がしくなっているのを見て、ここにやって来たようだ。


「どないしたん?」

「この辺りで空き巣が多発してるんやて?」


 実はここ最近、この辺りで空き巣が多発しているという。すでに警察が犯人を捜しているものの、犯人がいまだに捕まっていない。毎回毎回、服装や帽子を変えるからだ。その知らせを聞いて、山本は思った。これも空き巣だろうか?


「まさか。こっちもその被害に」


 だが、太郎は信じられない。空き巣なんて、入るはずがない。しっかりと施錠してあるはずなのに。


「冗談やないぞ! 本当になってたらどないするんや」


 だが、光江は信じている。もしかして、空き巣の被害に遭ったのでは? そうでもそうじゃなくても、警察に言わないとな。


「そ、そやね。警察に言ってみよや」

「そやな」


 結局、太郎は光江の言っているように、空き巣だと思わざるを得なかった。これは警察に言わないと。


「どや?」

「全然現れんわ」


 光江は思った。きっと犯人は、警察に通報されたのを警戒しているだろうな。そして、また服装を変えないといけないなと思っているだろうな。


「私たちを警戒しとるんやろな」


 太郎は拳を握り締めた。財布を盗むなんて、とても信じられない。もし捕まったら、殴りたいな。


「何が何でも、あいつを許さへん」


 山本は首をかしげた。その犯人は、どこに行ったかわからない。見るからに、逃げるのが得意なようだ。これはなかなか見つからないかもしれないな。


「どこに行ったんやろ」

「全くわからんわ」


 みんな、犯人がどこに行ったのか、わからないようだ。だが、何が何でも見つけてやる。

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