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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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11

 その日の夜、千尋は外を歩いていた。その理由は雅ではない。竜太郎の事だ。竜太郎が夜、何をしているのか調べてほしいと言われた。何がなんでもその理由を突き止めないと。


 千尋の横には、菜々子もいる。菜々子もとても気になっている。竜太郎は毎晩、どこに行くのか。今までそれを深く調べた事はなかったものの、今日初めて調べる。


 しばらく歩いていると、竜太郎を見つけた。それを見て、菜々子はハッとなった。千尋は思った。これが竜太郎だろうか?


「これがお父さん?」

「うん」


 どうやら、竜太郎のようだ。一体、竜太郎はどこに行くんだろうか?奈津江はとても気にしていた。


「最近、お父さんの様子、おかしない?」


 菜々子は気にしていた。ここ最近、竜太郎の様子がおかしい。何か秘密があるようだ。わからないが、とても怪しい。それに先日、服にキスマークがあった。女にキスされたのでは? 不倫しているのでは?


「うーん、そういえば」


 千尋もそれを感じていた。毎晩、こんな夜に出歩くなんて、明らかにおかしいだろう。


「調べてみたいと思わん?」


 菜々子は調べたいと思っていた。だが、なかなかその気になれなかった。


「うん。でも、君たちで夜道はおっかない。お母さんに任せてや」


 だが、夜道は危ない。不審者に襲われて、命を落とすかもしれない。一緒に行けば、大丈夫だろう。


「うーん・・・。は、はい・・・」


 突然、千尋は菜々子の肩を叩いた。どうしたんだろうか?


「うちに任せてや!」


 それを聞いて、菜々子は安心した。この人が何とかしてくれるだろうな。


「ありがとう、千尋さん」


 菜々子は不安だった。自分のしたことで家庭崩壊が起きないだろうか? その時は、自分に責任が下るのでは?


「お父さん、大丈夫かいな?」


 2人は竜太郎の様子を陰で見ていた。竜太郎は駅前をうろうろしていた。どこに行くんだろうか? 全くわからない。


 しばらく見ていると、竜太郎はある店に入った。それは、居酒屋だ。毎日ここに行っているんだろうか? どうして奈津江と一緒に行かないんだろうか?


 と、2人はある女を見つけた。その女を見た竜太郎は、手を挙げる。どうやら、その女を待っていたようだ。秘密で別の女性と会っていたようだ。これは夏江に報告しないと。


 竜太郎は陰で2人が見ていると知らないまま、居酒屋に入っていった。それを確認した2人は、それぞれの家に戻っていった。




 翌日、山崎家は騒然となっていた。昨日、女と会っていたのを見られたからだ。菜々子は陰でその様子を聞いている。自分のした事でこうなってしまった。申し訳ない気持ちだ。本当にやってよかったんだろうかと思ってしまう。


「どうして女と会ってたんや!」


 奈津江は怒っていた。居酒屋で女と会っていたとは。明らかに不倫だ。どうしてそんな事をしていたのか、はっきりと言ってもらおうか。


「そ、それは・・・」


 突然、奈津江はちゃぶ台を叩いた。とても怒っているようだ。それを見て、竜太郎は下を向いた。すっかり頭が下がらない様子だ。


「愛してるのはうちだけじゃないん?」

「そやけど・・・」


 その表情を見て、奈津江はますます竜太郎を問い詰める。


「なのにどうして男と会っていたんや!」

「それは・・・」


 突然、奈津江は竜太郎をビンタした。竜太郎は呆然となった。


「ふざけないで!」


 菜々子はもう聞いてられないと思ったのか、松岡家に向かった。今日も全国高校野球選手権大会がやっているようだから、そっちを聴こう。そっちの方が興奮するし、楽しいだろうから。




 その頃、千沙と浩一は今日も全国高校野球選手権大会を聴いていた。徐々に決勝が近づいてきた。とても興奮するな。自分もこんな大会に出てみたいな。


 と、そこに菜々子がやって来た。今日も聞きに来たんだろうか?


「どないしたん?」

「今日も言い争っとるんや」


 菜々子は晴れない表情だ。昨夜の事がばれて、言い争っているんだろう。


「そんな・・・」


 菜々子はため息をついた。どうしたら仲直りするんだろう。このまま離婚するんじゃないだろうかと思えてくる。もし離婚したら、家はどうなっちゃうんだろうか? 引っ越すんだろうか? 住み慣れたあの家を離れるのは嫌だな。


「なかなか仲直りしないんやな」

「うん」


 ふと、千沙は思った。浩一は虐待されていた。あの夫婦よりももっとひどい事をされていたんだな。


「浩ちゃんはもっとひどいことやられとったんやろ?」

「えっ!?」


 それを聞いて、浩一は驚いた。確かに自分は、大志田夫妻に虐待を受けていた。だけど今は、ここで世話になっていて、毎日楽しく過ごしている。今の生活がずっと平和だ。


「育ての両親に殴られてたんやろ?」


 それを聞いて、菜々子は驚いた。こんな事をされていたとは。全くわからなかったな。


「そんな・・・。こんなひどい事をされとったん?」

「うん」


 菜々子は浩一の頭を撫でた。こんなひどい事をされていたとは。


「辛かったやろね」

「うん。でも、今は安心しとるで」

「そう。よかったな」


 3人は楽しそうにラジオを聴いていた。竜太郎と菜々子の夫婦喧嘩はラジオの音にかき消されて、全く聞こえない。それを聴いていると、苦しい事を何もかも忘れる事ができる。ラジオって、とても素晴らしいものだな。

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