表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
22/36

9

 それは6月28日の夕方の事だった。いつものように千沙と理沙、浩一は小学校から帰ってきて、浩一は勉強をしていた。浩一はとてもまじめで、谷川からとても信頼されていた。きっと偉い人になるだろうなと思われていた。


 一方、千沙と理沙は2人で遊んでいた。勉強はあまり得意ではなく、成績は決して良くない。だが、2人ともあんまり気にしていなかった。


 千尋は買い物を終え、少しくつろいでいた。今日の夕飯はカレーライスだ。みんな喜ぶだろうな。そう思いつつ、ラジオを聴いていた。


 16時13分、揺れを感じた。地震だろうか? 千尋は慌てた。家が崩れたらどうしよう。2階にいた千沙と理沙、浩一は机に隠れていた。一体何が起こったのか、全くわからない。


「うわっ、な、何や?」


 揺れが収まると、4人はテーブルから出た。まさか、地震が起こるとは。どれだけの震度があったんだろうか?


「地震や!」


 千尋はラジオに耳を傾けた。もし地震なら、ラジオで速報が入るだろう。


 しばらく待っていると、速報が流れてきた。どうやら、福井県で大きな地震が起こったようだ。かなりの被害が出ているようだが、詳しくはわからない。


 近隣の住民の間でも、それは話題になっていた。こんな大きな地震は、あまりない。どれだけの被害が出ているのか、心配だ。近隣の住民の中には、福井に知り合いがいる人もいる。彼らは、福井の知り合いが気になった。果たして、無事だろうか? もし生きていたら、どんな被害なのか、伝えてほしいな。


「福井で大きな被害が出たんだって」


 千尋は外に出た。周辺の家屋の状況はどうだろう。倒壊してないだろうか? 千尋は辺りを見渡した。どうやらこの辺りは被害がないようだ。そんなに揺れが大きくなかったからだ。


「大丈夫かいな?」


 ある人は、福井に住むいとこが気になった。福井ではどんな被害が出ているんだろう。安否が心配だ。


「将太くん、大丈夫かいな?」

「電話してみよや」


 男は家に戻り、福井のいとこに電話をした。電話がつながる間、男は不安でしょうがなかった。本当に大丈夫だろうか? 何かあったらどうしよう。


 電話がつながった。だが、それは知り合いだろうか? それとも本人だろうか?


「将太くん、大丈夫?」

「うん。こっちは大変な被害が出てるよ」


 どうやらいとこの将太のようだ。それを聞いて、男はほっとした。そして気になった。今、福井はどんな状況だろうか? はっきりと話してほしいな。


「そっか」


 だが、将太は浮かれない表情だ。どうしたんだろうか? まさか、親が死んだんだろうか?


「でも、お父さんが死んじゃった」


 それを聞いて、男は絶句した。地震でこんな事になるとは。自然の力って、怖いなと改めて感じた。


「そうなんや」


 男も落ち込んだ。地震で親族に被害者が出るとは。とても信じられないな。




 それから1か月半後、夏休み真っただ中の事だ。隣に住む山崎さん家が騒然となっていた。一体何だろう。千尋はとても気になった。雅も気になっている。大志田夫妻の事があって、とても気になるな。


「おい、昨日の夜、何しとったんや」


 妻の奈津江なつえは、夫の竜太郎りゅうたろうが気になっていた。昨日は居酒屋で飲んでいたそうだが、本当にそうだろうか? とても気になる。全く酔っていないからだ。飲んだらいつも酔っているのに、明らかにおかしいな。


「散歩しとっただけや。どないしたん?」


 竜太郎は散歩していたという。だが、本当にそうだろうか? 奈津江は気になってしょうがない。誰も、この辺りを歩いていたという話は聞いていない。


「居酒屋で誰かと飲んどったやろ?」

「してへん!」


 2人の娘、菜々ななこは不安そうに見ている。一体何事だろう。もう何日もそんな日々が続いている。2人の様子がどこか不機嫌だ。どうしよう。


「うちは見たんやで! 本当の事を言えや!」

「本当に行ってないんやって」


 菜々子は怖くなって、2階に向かった。2階で静かに勉強をしよう。そん案2人の会話、全く聞きたくない。逃げたいな。


「だから、俺は見たんやで!」


 その後も、2人は言い争っていた。その声は、隣の松岡家にも聞こえていた。雅と千尋も、とても気になっていた。




 翌日の昼下がり、理沙はラジオで全国高校野球を聴いていた。最近、理沙は野球の面白さに目覚めてきて、プロ野球や高校野球に興味を持っているようだ。そして、ラジオでそれを聴くほどになっていた。


 突然、ある女がやって来た。理沙は振り向いた。隣に住む菜々子だ。どうしたんだろうか?


「どないしたん?」

「こっちで聴こ?」


 菜々子は元気がなさそうだ。何かあったんだろうか? 全くわからないな。


「どうして?」

「朝からお父さんとお母さん、けんかしてんねん」


 家族が最近気になっている事だ。自分も気になっている。まるで、自分が虐待されていたころのような罵声が聞こえる。それを聴くと、虐待じゃないだろうかと思えてくる。


「本当?」

「昨日、居酒屋に行ってたのを見たんやて。だけど、言ってないと言っとるんやて」


 そんな事があったのか。大変だろうな。まぁ、ここでラジオを聴いて、すっきりしようじゃないか。


「そうなんや」

「どないしたん?」


 2人は振り向いた。そこには浩一がいる。家にやって来た菜々子が気になったようだ。


「あっ、浩ちゃん」


 浩一の姿を見て、菜々子は驚いた。浩一はここに住んでいるのか。浩一もラジオを聴きに来たんだろうか?


「えっ、ここに住んでんのや」

「うん」


 浩一はラジオのそばにやって来た。一緒にラジオを聴きたいようだ。


「甲子園聴いてるん?」


 浩一もまた、野球に興味がある。プロ野球選手になりたいという夢を持つほどだ。


「うん。一緒に聴こうや」

「ええよ」


 3人はラジオを聴き始めた。千尋はその様子を、ほほえましく見ていた。みんなで聞くと、とても楽しいだろうな。自分もその輪に入りたいな。だけど、家事がある。家族のためにやらなければならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ