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浩一はいつものように帰ってきた。だが、元気がない。理沙はとても元気なのに。どうしたんだろう。まさか、またいじめられているんじゃないかな? また茂の仕業だろうか? 茂は何度やっても懲りないな。また叱らないと、またいじめるだろうな。
浩一は何も言わずに、2階の自分の部屋に向かった。その様子を、千尋は不安そうに見ている。千尋は不安で不安でしょうがない。
「どないしたん?」
千尋は横を向いた。そこにはハルがいる。ハルも浩一を心配そうに見ている。
「最近、浩ちゃんが変なんや」
千尋は不安そうな表情だ。浩一を何とかしないと。
ふと、千尋は思った。またいじめられているのかな?
「まだいじめられてるのかな?」
ハルは思った。いじめられていたら、千沙はその事を知っているんだろうか?
「ちーちゃんは知ってるん?」
「うん。注意したし、先生にも言われたんやけど、またやってるんねん」
すでに先生に注意されているものの、またやっているんじゃないかと思った。もしそうなら、また怒ってもらわないといけないな。
「反省せぇへんのやな」
「ひどいわ」
と、そこに千沙が帰ってきた。今日も1人で帰ってきた。今月から1人で帰っていて、寂しいけれど、徐々にその雰囲気に慣れてきた。そして、また別の人と一緒に帰りたいなとも思っている。
「ちーちゃん、何とかして」
何の事だろう。千沙は首をかしげた。
「どないしたん?」
「浩ちゃんがまたいじめられてるの」
千尋はあきれている。本当に懲りないやつだな。どうしようもない。どうすればいじめをやめるんだろう。その解決策がなかなか見つからない。千尋はうなだれてしまった。
「そんな・・・」
その頃、浩一は2階でじっとしていた。頭の中は、茂の顔でいっぱいだ。あまりにもひどくて、忘れたくても忘れられない。どうしたら忘れる事ができるんだろう。考えても考えても、解決策は見つからない。
「浩ちゃん、大丈夫?」
浩一は振り向いた。そこには雅がいる。どうして雅が来たんだろう。何かあったんだろうか?
「お父さんに頼ってもいいんやで」
雅は笑みを浮かべている。とても優しそうだ。まるで本当の父のようだ。
だが、浩一は雅を振り払った。本当は父じゃないのに。どうしてそんな人に頼るんだろう。自分が頼りにしているのは友達の千沙と理沙ぐらいだ。
「お父さんやないもん!」
「浩ちゃん・・・」
それを聞いて、雅は呆然となった。まさか、そんな事をされるとは。本当の父じゃないのは確かだけど、愛情をもって育てている。そこをわかってくれ。
その頃、千尋は近所の主婦と話をしていた。話題にしているのは、浩一の事だ。またいじめられているので、気になっている。また茂がやっているんだろうか?
「何とかしてや! またいじめられているんやで!」
主婦は首をかしげた。本当にやっているんだろうか? あの時反省したのに。またやっているんだろうか? 茂からは全く聞いていない。
「うーん、言ったんやけどな。またやっとるとは」
だが、千尋は必死だ。このままでは、浩一の身に何かがありそうで不安だ。どうしよう。
「何とかしてや!」
「わかった!」
その熱意に主婦たちは決意した。これは何とかしないと。これは自分たちの問題だけではない。浩一の問題でもある。浩一のためにも、何とかしないとな。
翌日、何も知らない茂といじめ仲間の高木、松本はいつものように登校してきた。登校中はみんなが見張っている。だから、浩一をいじめる事ができない。残念だけど、ここは我慢しないと。
そして、いつものように2年生の担任、早川がやって来た。今朝の連絡を淡々と進めていく。
「大村、高木、松本は帰りの会の後、職員室に来るように」
「は・・・、はい・・・」
それを聞いて、3人は呆然となった。急にどうしたんだろうか? 何か言いたい事があるんだろうか? まさか、浩一がまた話したんだろうか?
「どないした?」
「それはその時話すわ」
結局、その理由を聞く事ができなかった。だが、何か重要な話に違いない。
「起立! 礼!」
そして、早川が教室を去っていった。それとともに、茂は浩一のもとにやって来た。まさか、また浩一が言ったんだろうかと思った。
「おい! お前、またチクったのか?」
「俺はやってへん! ご近所さんが言ったんや!」
やはり浩一が話したようだ。予想通りだ。自分たちが迷惑をかけるのに、どうしてそんな事をするのか? 家が迷惑をかけるってのがわからないのか?
「また俺たちが迷惑をかけるんや!」
「それは・・・」
浩一が何かを言おうとしたその時、3人が殴り始めた。3人とも怒っている。先生に話したからだ。
「おいこら!」
「やめて!」
浩一はやめるように促した。だが、3人は殴るのをやめようとしない。
「だから浩一はこうなんや!」
「痛い! やめて!」
「この野郎!」
「だからやめて!」
結局、話したにもかかわらず、浩一はまた殴られてしまった。いつもこんな事だ。そして浩一は思った。本当に先生に話してよかったんだろうか?