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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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6

 年が明けて1948年になった。もうすぐ入学して1年になろうとしている。徐々に小学校の雰囲気に慣れてきて、勉強を頑張れるようになった。そして、先生の信頼を得始めてきた。特に浩一は成績が良く、先生からとても信頼されていた。千沙も驚くほどだ。


 そんな1948年の1月最後の日だ。この日、雅は新聞を真剣そうに見ていた。何があったんだろう。いつもと表情が違う。何か重大なニュースがあったのかな? 千尋は不思議そうに見ている。


「ガンジーが暗殺されたんやて?」

「えっ!?」


 千尋は驚いた。ガンジーはインドの政治指導者で、インド独立の父と言われている。そんな人が、どうして暗殺されたんだろう。あれだけすごい人なのに。


「インド独立の父やのに」

「どうしてこんなことをするんやろ」


 雅も信じられなかった。暗殺されることはないだろうと思っていたのに。誰がそんなひどい事をやったんだろうか? もし捕まったら、死刑だろうな。


「ひどいわね」

「相手を許すしぐさをしてたんやて」


 2人とも、がっくりとした表情だ。あまりにもショッキングだったんだろう。


「人を殺すって、いけない事やね」

「ああ」


 2人は改めて思った。人を殺す事って、悪い事なんだなと。


 ふと、千尋は思った。浩一を虐待して捕まった大志田夫妻はどうなったんだろうか? まだ刑務所の中だろうか? どれぐらいの懲役が出たんだろうか?


「大志田さんの夫婦、どうなったん?」

「まだ出れないんだって」


 千尋は深刻そうだ。浩一を虐待した罪は、あまりにも重いんだな。なかなか出られそうにないんだな。いつになったら出られるんだろう。いずれにしろ、出てきてほしくないな。そして、浩一に会ってほしくないな。


「そっか」


 誰かがいる気がして、2人は振り向いた。そこには浩一がいる。大志田夫妻の話を聞いていたんだろうか?


「浩ちゃん、ここに来れてよかったね」

「うん!」


 浩一は元気そうだ。きっとここに住めてよかったと思っているんだろうな。


「今が幸せ?」

「う、うん・・・」


 浩一は少し戸惑っている。本当の両親じゃないので、ちょっと複雑な表情だ。本当の母は気になるけれど、それ以上に大志田夫妻が気になるな。


「どうした? もっと喜べや」

「そ、そうだね」


 浩一は戸惑いながらも、ここで平和に暮らせる幸せをかみしめていた。




 4月になった。寒かった冬が終わり、徐々に暖かい陽気になってた。大阪の桜はそろそろ咲く頃だ。今日から新年度だ。一体どうなるんだろう。わからないけれど、いい新年度になってほしいな。


 理沙はワクワクしていた。今月、理沙の入学式があるからだ。千沙、浩一も楽しみにしていた。3人そろって小学校に行けるからだ。


「今日から理沙も小学校やね」


 千尋は理沙を見て、喜んでいる。ここまですぉだってくれて、ありがとう。これからもっと成長する姿、見たいな。


「小学校、行けるん楽しみ?」

「うん!」


 雅の問いかけに、理沙は元気に答えた。理沙は小学校に行けるのが楽しみでしょうがないようだ。千沙、浩一と同じように登下校して、楽しく過ごす。勉強して、いろんな事を学ぶ。果たして、どんな6年間が待っているんだろう。わからないけれど、いい6年間にしたいな。


 突然、誰かが肩を叩いた。浩一だ。浩一は元気そうだ。


「理沙ちゃん、今日からよろしくな」

「こちらこそよろしく」


 理沙は、もうすぐ迎える入学式を楽しみにしていた。




 4月7日、理沙は小学校に入学した。理沙はクラスの人気者で、とてもかわいい。女友達だけではなく、男友達も多い。そんな理沙は、千沙より浩一とよく話していた。その姿は、まるでカップルのようだ。去年からずっと暮らしていると、こんなに仲良くなれる。


 ある日、理沙はいつものように浩一と歩いていた。2人は楽しそうだ。その中の良さは他のクラスでも評判で、本当のカップルなのかと思えるぐらいだ。


「おいこら! 誰と話してるんや?」


 突然、理沙と浩一は振り向いた。そこには茂がいる。茂は笑みを浮かべている。やらしい事をしそうな雰囲気だ。


 突然、茂は浩一を殴り始めた。またやり始めた。浩一は苦しい表情を見せながら、茂にあきれていた。


「やめてよ!」


 理沙は茂を止めようとした。まさかここで理沙が入るとは。理沙はとても強い。茂はすぐに退散した。


 去っていく茂の後ろ姿を、理沙は見ていた。こいつが浩一をいじめている茂なのか。悪い奴だな。


「浩ちゃん・・・」


 理沙は不安になった。いじめられていると噂されているが、やはりしているようだ。あまりにもひどいな。何とかしないと。


「浩ちゃん、いじめられてるん?」

「うん」


 理沙は浩一の頭を撫でている。とても優しいな。この子と一緒になりたいな。この子なら、自分への会いに生きる事ができそうだ。


「大丈夫?」

「うん。何とか」


 浩一は大丈夫だと言っているが、実際には大丈夫じゃない。それは理沙にもわかる。何とかしないと。


「悩んでる事あったら、お姉ちゃんだけでなく私にも相談してな」


 それを聞いて、浩一は穏やかな表情になった。千沙や紗耶香、雅、千尋だけでなく、理沙も僕を心配してくれる。こんなに守ってくれる人がいるとは。自分には心強い仲間がいるんだなと改めて実感した。

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