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その翌日、今日は登校日だ。浩一はいつものように小学校にやって来た。浩一は冴えない表情だ。本当に明日からもういじめられなくなるんだろうか? あいつは全く反省していないように見える。またいじめられるんじゃないだろうか? 浩一は不安で不安でしょうがない。
昨日の夜、千尋が先生に言ったらしいが、本当にそれでいじめはなくなるんだろうか? 茂は反省するんだろうか? またいじめられるんじゃないかと思っている。あいつは全く反省しないからだ。僕はこうしていじめばかりの日々を送るんだろうな。自分にはもう助けてくれる人なんて家族と紗耶香ぐらいしかいないんだろうな。
浩一はいつものように教室にやって来た。と、そこに茂がやって来た。茂は怖い表情だ。何があったんだろうか? 浩一は下を向いた。
「おいっ、お前、人に言ったやろ?」
「ううん」
自分は言っていない。言ったのは千尋だ。
今朝、茂は先生に呼ばれていた。千尋がいじめの事を話したので、茂は注意されたのだ。注意されて、きっとそれは浩一が言ったんだと思った。何でもかんでも浩一が悪いと思っていた。
「何言ってんだよ!」
だが、茂は耳を貸そうとしない。お前が言ったんだろう。千尋が言ったのは嘘だろう。
「やめて! もう僕にこんな事しないで!」
浩一は抵抗した。だが、茂はやめようとしない。浩一は泣きそうになった。だが、茂はやめようとしない。
「いーやー!」
茂は意地悪な口調だ。だが、誰も助けてくれない。それを見て、こいつらも茂の仲間だろうかと思った。きっと、このクラスみんなで僕をいじめているに違いない。浩一にはそう見えた。
「もうやめなさい!」
と、そこに紗耶香がやって来た。紗耶香はかわいそうだと思っているようだ。それを見て、浩一はほっとした。
「お前もこうしてやる!」
だが、茂は紗耶香も殴り始めた。紗耶香はすぐに泣きだした。浩一は何もできずに、その様子をじっと見ていた。
「いやー!」
と、そこに千沙がやって来た。千沙は少し遅れて教室にやって来た。千沙もかわいそうだと思ってくれる。千沙も僕の味方だな。
茂は浩一や紗耶香から離れた。千沙には抵抗できないようだ。離れたのを見て、千沙は浩一のもとに近づいた。浩一は痛そうな表情だ。そして、泣きそうだ。
「大丈夫?」
浩一は顔を上げた。そこには千沙がいる。千沙はとても優しそうな表情だ。今さっきのつらさを忘れる事ができそうだ。
「何とか」
浩一はそれしか言えなかった。大丈夫じゃない。またいじめられているのだ。千尋が言ったのに、またいじめられるとは。茂は反省しないな。何とかしないといけないな。
「ごめんね、何にもできなくて」
千沙は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。何とかしないといけないのに、自分には何も力になれない。ただ、いじめを止める事しかできない。だけど、かわいそうな浩一を慰める事はできる。
「いいよ」
浩一は泣いてしまった。悔し涙なのか、嬉し涙なのかわからない。
その帰り道、千沙と浩一は一緒に歩いていた。今日は一緒に帰ろう。何かされたら大変だ。一緒に変えれば安心だろう。もし、あいつらがやってきたら、千沙は何とかするから。
「あいつら、反省してると思う?」
千沙は気になっていた。茂は本当に反省しているんだろうか? またやるんじゃないかと思ってしょうがない。
「全然」
浩一は思っている。あいつらは全然反省していない。きっとまたいじめるだろう。今度はどんな事をされるんだろう。想像しただけで下を向いてしまう。もうされたくない。あとどれぐらいされるんだろう。
「反省してないよね」
千沙は思っていた。徹底的に反省しないと、あいつらはいじめをやめないだろう。もっときつく言うべきだろう。
「徹底的に反省させんと」
突然、浩一は顔を上げた。どうしたんだろう。何か思いついたんだろうか? その表情を見て、千沙は横を向いた。
「先生に言おう!」
「言ったんだよ! でも相手がうまく嘘をついていつも自分が悪いように言ってくるんやよ」
千沙は知っている。昨日、千尋がいじめの事を話していた。今朝、茂が呼び出されて、注意を受けていたのはそのわけだ。だが、またいじめられた。やっぱりあいつら反省していない。どうしようもないな。
「そうか。どうにもならないよね」
「うん」
突然、千沙は浩一の肩を叩いた。どうしたんだろう。浩一は横を向いた。
「でも、私は浩ちゃんの味方やからね」
「ありがとう」
浩一は笑みを浮かべた。今日はいつもと違い、明るい帰り道だ。その先には家が見える。いつもと違ってよく見える。どうしてだろう。明るい表情だからだろうか?
その頃、千尋は茂と話していた。千尋の顔を見て、茂は下を向いた。千尋に合わせる顔がない。浩一をいじめてしまったからだ。
「おい、あんた、俺の浩ちゃんに何をやったんや!」
千尋は怒っていた。浩一をいじめた茂が許せなかった。もういじめないためには、徹底的に反省してもらわないと。
「何もやってないて!」
突然、千尋は茂の顔をビンタした。茂はすぐに泣きだした。あまりにも怖いからだろう。
「お前、俺の浩ちゃんにちょっかいを出したやろ!」
「やってないて!」
だが、茂は否定した。本当はやっているのに。どうしてそんな事をするんだろう。
「嘘をつくな!」
突然、千尋は茂を殴った。嘘をついているからだ。嘘というのはわかっている。
「いてっ・・・」
茂は呆然としていた。もう嘘はつけない。そう思い、茂は頭を下げた。それを見て、千尋は確信した。やはりいじめていたんだな。今さっきの言葉は嘘だったんだな。