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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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4

 それからの事、千尋は浩一を心配していた。浩一が今日もやられないだろうか? もしやられている所を見つけたら、注意しないと。そして、茂を見つけたら、怒らないと。


 茂は全く知らなかった。千尋が茂を怪しく思っていて、浩一を心配している事を。いつも通りに登校して、いつも通りに下校していた。茂と一緒に浩一をいじめていた子供たちもそうだ。この頃になると、浩一をいじめる生徒が増えて、その数は2桁になった。浩一はますます苦しくなってきた。本当に小学校に行っていいんだろうか? 浩一は思い始めてきた。だが、ずる休みをしたら先生に怒られるから、行っていた。そして、いつの間にか浩一は思っていた。小学校は全然楽しくない。ただ、子供たちにいじめられるだけの場所だ。授業も、朝の会も、帰りの会も全く面白くない。実家にいる時が一番幸せだ。そんな日々がずっと続けばいいのにと思っていた。


 浩一はいつものように帰り路を歩いていた。浩一の気持ちは1つ、早く家に帰りたい。家に帰ったら、いじめられない。雅や千尋、徳次郎やスエ、千沙や理沙がいる。それだけで幸せだ。ずっとここにいたい。だけど、そうはいかない。


 浩一は前を向いた。もうすぐ実家だ。実家に戻って、ゆっくりしよう。浩一は深く深呼吸をした。


 だがその時、1人の少年が浩一の目の前に現れた。茂だ。その姿を見ただけで、浩一は下を向いた。今度は何をされるんだろう。想像するだけで、気分が悪くなる。


「どけ! どけよ!」


 だが、茂はどかない。通せんぼをしているようだ。浩一にはわかった。今度はこうやっていじめるんだな。


 突然、実家から1人の女が現れた。千尋だ。どうやら、茂の様子を見ていて、ここにやって来たようだ。


「こら! やめなさい!」


 茂は振り向いた。そこには千尋がいる。誰だろう。茂は首をかしげた。しばらく経って、茂は思い出した。千沙の母だ。入学式に出席していた。まさかここで出くわするとは。まさか、その様子を見ていたんだろうか? もし見ていたら、浩一をいじめている事を言われるかもしれない。


「はい・・・」


 茂は下を向いた。あまりにもとんでもない事をしてしまった。どうしよう。先生や両親に怒られる。


「ヒヒヒ・・・」


 だが、茂は笑みを浮かべた。まるで悪い事をしても、反省していないようだ。千尋にもそれがわかった。きっとまたするだろう。


 と、浩一がにらんでいる。笑顔が気に食わないようだ。


「何にらんどるんや!」

「反省してへんやろ?」


 千尋は怒った。反省していないだろう。またやろうと思っているんだろう。もしそうなら、許さないからな。


「反省しとるって!」


 突然、千尋はビンタした。茂は驚いた。両親以外にビンタされるのは初めてだ。まさか、ビンタされるとは。


「うちには反省してへんように見えるんや!」


 千尋は強い口調だ。まさか、こんなに怖いとは。


「やめろ犯罪者の息子!」


 その時、浩一は茂を殴った。初めて浩一に殴られた。まさか殴られるとは。


「よくも言ったな!」


 すると、茂も浩一を殴った。茂は腹が立った。


「やめなさい!」


 と、そこに千沙がやって来た。千沙もやって来るとは。2人とも驚いた。


「浩ちゃん、大丈夫?」


 千沙は浩一の頭を撫でた。浩一は殴られて、頭が少し赤くなっている。大丈夫だろうか? 千沙は不安になった。


「ありがとう」


 茂は逃げていった。千沙はその様子をじっと見ている。彼らには見えた。またやるだろう。もう聞きたくないから、逃げたんだろう。


「あいつら、全然反省してないわ。私には見えるで」


 千尋は拳を握り締めた。反省していないようだから、先生が叱らないと。


 と、千尋は横を向いた。そこには理沙がいる。理沙もその様子を見ていたようだ。理沙は帰っていく茂の後ろ姿を見ている。


「理沙ちゃんわかるの?」

「うん」


 どうやら理沙もわかるようだ。


「ありがとう」


 浩一は笑みを浮かべた。自分を心配しているのは、紗耶香と千尋、雅、千沙だけではない。1つ下の理沙も心配している。こんなにかわいそうと思ってくれる人がいるとは。僕の周りは心強いな。




 翌日、今日は休みだ。外の子供たちはみんな遊んでいる。だが、浩一は家にいた。家にいるのが幸せだからだ。みんなと遊んでいたら、またいじめられるだろう。


「浩ちゃん、遊ぼうよ!」


 茂の声だ。それを聞いて、浩一はびくびくした。またいじめられるんだろうな。


「外で遊びたくない! あいつらがちょっかいを出すんやろ!」


 だが、浩一は出ようとしない。またいじめられるだろうから。家で千尋や雅、千沙、理沙と遊んでいる方が幸せだ。


「そんな・・・」


 茂は帰っていった。遊びたかったのにな。


 浩一の部屋のドアが開いた。開けたのは千尋だ。まさか千尋が入って来るとは。どうしてやって来たんだろう。


「どうしたの?」


 浩一は泣きそうだ。何があったんだろう。話してほしいな。お母さんのような人じゃないか。


「外で遊びたくないんや」

「そんな・・・」


 千尋は驚いた。休みの日は外で遊ぶのがいいのに。どうして家の中にいるんだろう。


 千尋は1階に向かった。雅にも相談しよう。


「どうしてこんな事になったんやろね」


 新聞を読んでいた雅は驚いた。まさか、浩一がこんな事になるなんて。雅にも原因がわかっていた。茂だ。茂がいじめているから、こんな事になったんだ。


「学校でいじめを受けてるんやて」

「ひどいな」


 雅もひどいと思った。何とかしたいと思った。もうこれは、先生に言うべきだな。


「何とかしてやりたいわ」


 2人は考えていた。近々、これを先生に言おう。先生に言って、注意しなければ、しっかりと反省しないだろうな。

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