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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
16/37

3

 5月3日、今日は土曜日だ。いつものように朝が始まった。いつものようにみんなは目覚めた。


 千沙と浩一、理沙も目を覚ました。今日もいつものような青空が広がっている。今日も平和な1日だ。こんな1日が続けばいいのになと思っている。


 浩一は1階から降りてきた。リビングでは、雅が新聞をいつも以上に真剣に読んでいる。どうしたんだろうか?


「いよいよ日本国憲法が施行されるんやな」


 千尋は驚いた。去年、噂になっていたあの憲法がいよいよ施行されるのか。新平民がなくなり、誰もが平民になると言う。これで平等な社会ができるんだなと思うと、嬉しくなる。


「これから日本は平和に向かって歩み出すんやね」

「もう戦争なんて起こす事なく、そして世界も戦争が起きないようにしてほしいわ」


 きっとこの憲法は、平和のための憲法だ。これから日本は、きっと平和な国になっていくだろう。千沙と理沙、浩一はそんな日々を歩んでいくんだ。


「うん」


「これから日本は平和への道を歩んでく。あの子たちはきっと平和な日々を生きていくんやね」


 千尋は彼らの未来を思い描いた。きっと青空のように明るい社会が待っているだろう。


「この子達の未来に期待しようや!」


 3人は椅子に座り、朝ごはんを食べ始めた。だが、浩一の気分は晴れない。何があったんだろうか? そして、傷だらけだ。何があったんだろう。浩一は何も話してくれない。きっと、何か話せない理由があるんだろう。


 朝食を食べ終え、家にいても、様子がおかしい。やっぱり何かがあるに違いない。雅と千尋は不安になった。浩一のみに何かが起こったらどうしよう。




 いつもの帰り道だった。浩一はいつものように帰り道を歩いていた。浩一は後ろが気になってしょうがない。また茂たちがからかってきて、殴って来るかわからない。もし殴られたら、どうしよう。浩一はおびえていた。


「よぉ、浩一」


 その声で、浩一は凍り付いた。声を聞くだけで誰かわかる。茂だ。またからかいに気に違いない。もうやられたくないと思っているのに。


「お前の両親、捕まったんやてな」


 茂はいやらしい声だ。確かにそうだが、あいつらは僕の本当の両親ではない。あんな奴、関係ない。そんな事、もう声に出さないでくれ。


「聞いたよ聞いたよ、お前も牢屋に入れられたらええのに」


 そう言われて、浩一は腹が立った。もう完全に吹っ切れた。殴ろう。そう思い、浩一は茂を殴った。


「うるせぇ!」


 茂は痛がった。だが、すぐに立ち上がり、浩一を殴り始めた。茂は怒っていた。


「殴ったなこの野郎!」


 結局、浩一は返り討ちに遭ってしまった。こんなに仕返しされるとは。浩一はすっかり抵抗力を失ってしまった。


 浩一は帰り道を再び歩き出した。浩一は泣いていた。もう何度目だろう。もう泣きたくないのに、また泣いてしまった。みんな、あいつらが悪いんだ。俺は全然悪くない。


 浩一は家の前にやって来た。家は静かだ。みんな家にいるんだろう。中はとても楽しいだろうな。自分も体や心はボロボロだけど。


「ただいま・・・」


 浩一は家に入った。とても元気がない。その声を聞いて、千尋がやって来た。


「おかえ、だ、大丈夫?」


 千尋は、浩一が傷だらけなのが気になった。ケガをしたんだろうか? 誰かに殴られたんだろうか? 勇気を出して、話してほしいな。


「大丈夫だよ・・・」


 浩一は2階の自分の部屋に向かった。千尋はそんな浩一の後ろ姿を見ていた。とても不安だ。何かあったのではと思った。


「なんか心配やね」

「どないしたん?」


 千尋は横を向いた。そこには雅がいる。雅も浩一を心配していた。


「あの傷よ」

「そやね」


 雅も不安そうだ。これは小学校に言わないと。浩一のみに何かがあるんじゃないかと思った。


 と、千尋は家の前を歩いている同級生を見つけた。茂だ。この子なら、浩一に何があったのか知っているかもしれない。聞いてみよう。


 その頃、茂はいつものように外を歩いていた。今日は夕方まで友達の家で遊ぶつもりだ。


「あんた、浩ちゃんに何をやったん?」


 突然、千尋の声を聞いて、茂は横を向いた。まさか、いじめているのが見つかった? そう思い、茂は鳥肌が立った。


「な、何もやってないよ」


 だが、茂は何も言わない。その表情を見て、千尋は怪しいと思った。嘘をついているかのような表情だ。何かやっているに違いない。


「嘘やろ! どうして傷だらけなんや?」


 千尋は強い口調だ。何があったのか教えてほしいな。


「そりゃあ、虐待されていたからや」


 だが、茂は過去の虐待のせいだと言ってごまかした。本当は違うのに。


「違うやろ!」


 だが、千尋にはわかっていた。入学する頃は虐待されていない。その頃には傷が消えていた。だが、入学してから傷が目立ってきた。これは明らかに小学校で何かをされている証拠だ。


 茂は悩んだ。どうしよう。本当の事を言うか。言ったら、家族が迷惑をかけるだろう。それでいいんだろうか? だが、本当の事を言わないと、自分の身に大変な事がありそうだ。言わなければ。


「す、すいませんでした・・・」


 そう思い、茂は頭を下げた。それを見て、千尋はすぐにわかった。茂が浩一を殴っていたんだな。今度そんな事をやったら、先生に言うからな。覚えておけよ。

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