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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第2章 小学校(上)
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2

 その後も浩一は、茂に殴られた。それだけではない。複数の子供たちが殴るのだ。浩一は全く悪くないのに、育てた両親だけでこんな事になるなんて。あまりにも許せない。何とかしないと。だが、そのタイミングがわからない。


 浩一は泣いていた。それを1人の少女が心配そうに見ている。同級生の大島紗耶香おおしまさやかだ。これは何とかしないと。浩一が大変な事になる。せっかく平和な家庭に恵まれたのに、こんな事になるなんて。


「どないした浩ちゃん」


 浩一は振り向いた。そこには同級生の紗耶香がいる。どうしたんだろうか?


「な、何でもないねん・・・」

「そっか・・・。何か悩んでる事あったら、相談するんやよ。俺はお前のお父さんやないけど、お父さんのように相談に乗ってやるよ!」


 紗耶香は心配そうな表情だ。浩一は明日も小学校に来てくれるんだろうか? もう来ないんじゃないだろうか? 紗耶香は不安になってきた。


「う・・・、うん・・・」


 浩一は元気がなさそうだ。それに、泣いている。千沙も元気がなさそうだ。千沙は殴られていないのか、傷がない。浩一が何かをされているようだ。


「どないした千沙も」

「何でもない・・・」


 千沙も何も言おうとしない。一体何だろう。全くわからないな。


「そっか」


 紗耶香は千沙と浩一と別れ、家に向かっていた。紗耶香は浩一が気になっていた。ここ最近、傷が多い。何かされているんじゃないかと思っている。これは先生に言わないと。


 紗耶香は家に帰ってきた。紗耶香の家は、両親と1つ上の兄、達郎たつろうと母の朱音あかね、父の茂夫しげおの4人暮らしだ。祖父母は大阪大空襲で亡くなった。


「ただいまー、最近、浩ちゃんが変やと思わん?」


 紗耶香の声を聞いてやって来た朱音も、浩一を気にしていた。最近、顔に傷が多い。何かあったんだろうか? もしいじめなら、大変だな。


「そやな」


 朱音も気にしていた。早く何とかしないといけないなと思っていた頃だ。


「何か、あるんちゃう?」

「確かに」


 ふと、朱音は思った。小学校に連絡してみようかな? 小学校なら、相談に乗ってくれるだろうから。


「学校に聞いてみようや」

「そやね」


 紗耶香もそう思っていた。早く小学校に連絡しよう。このままでは、浩一に見に大変な事が起こるかもしれないから。


 その頃、担任の谷川たにがわは明日の授業に向けて準備をしていた。準備といっても、まだ本格的な授業ではない。何をすればいいのかと考えるぐらいだ。


 突然、電話が鳴った。誰からだろう。谷川は首をかしげた。こんな時間にかける人がいるなんて、明らかにおかしい。だが、この時間なんだから、何かが起こったに違いない。電話に出なければ。谷川は受話器を取った。


「あっ、谷川先生ですか?」

「はい」


 電話の主は朱音だ。紗耶香に何かあったんだろうか? それとも、それ以外の何かだろうか?


「最近、坂井浩一くんの様子がおかしいんや」


 浩一は松岡家でお世話になっている子だ。その子に、何かあったんだろうか? そういえば、あの子の傷が気になるな。それに関する何かだろうか?


「そうなん?」

「何か、あるんちゃう思って」


 朱音は不安そうな表情だ。浩一のみに何かがありそうで、心配だ。早く何とかしたいな。


「うーん、何も聞いてないで」


 谷川は何も聞いていない。それについてもっと調べないと。浩一の命が危ない気がしてきた。


「うーん、そうかな?」

「最近、元気がないんよ」


 元気がないとは。それを聞いて、谷川は浩一の傷を思い出した。その傷が原因だろうか? もしいじめなら、いじめグループに注意しないと。


「うーん、直に元通りになるやろ。また、気を付けとくんで」


 だが、谷川は気にしていなかった。だが、朱音が注意しているのなら、自分も気を付けないと。


「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。何かあったら、またよろしくお願いします」


 電話は切れた。谷川は思っていた。あの子に何かあるんだろうか? いつも普通に登校しているけれど。




 その頃、茂はいじめグループを広めようと思っていた。今度広めようと思っていたのは、隣のクラスにいる前田だ。前田は茂の近所で、とても親しい。この子なら、いじめに加わってくれそうだな。


「おい、知っとる? 浩一の両親って、捕まったんやで」

「えっ、マジ?」


 それを聞いて、前田は驚いた。どうしてこんな子がこの小学校にいるんだろう。何か問題を起こしそうだな。もう来させないようにしないと。


「ああ。今は塀の中やで」


 茂は大志田夫妻の事をよく知っていた。そして、今は刑務所にいる事を知っていた。


「こいつをからかってやろか?」

「それはいい考えやな」


 前田は茂の考えに賛成だ。こうしてまた、いじめグループが1人加わった。


「ちょっと、やめなさいよ!」


 そこに、いじめに反対する女性が現れた。それは、紗耶香だ。紗耶香が知っていて、聞いていたとは。


 突然、茂と前田は紗耶香を殴り始めた。


「キャッ!」


 紗耶香は抵抗した。だが、2人は殴るのをやめない。


「やろうぜやろうぜ!」

「ああ!」


 紗耶香はそれから10分ぐらい殴られ続けた。終る頃には、紗香の顔はボコボコになっていた。紗耶香はそれからしばらく、うずくまっていた。いじめを止めたかったのに、結局浩一と同じくいじめられてしまった。どうしたらいいんだろう。全くわからない。


「さやちゃん、どないしたん?」


 と、誰かが紗耶香に手を差し伸べた。それは、紗香の友人、木下綾子きのしたあやこだ。


「な、何でもないよ」


 だが、紗香は何も言おうとしない。本当は何かあったのに。その理由を話してほしいな。

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