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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第1巻 大阪編  第1章 一緒に住む
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 1947年4月6日、入学式がいよいよ明日に迫った。2人とも、明日の入学式を楽しみにしていた。どんな友達ができるんだろう。どんな6年間が待っているんだろう。わからないけれど、いい6年間にしたいな。


 そんな中、千尋がある漫画を買ってきた。その漫画は、漫画にしては分厚い。何だろう。千沙と理沙、浩一は興味津々だ。


「新宝島って、これ?」

「うん」


 新宝島は発売されたばかりの漫画だが、漫画にしてはページ数が大きい。こんな漫画、見た事ない。どんな漫画だろう。とても興味がそそられるな。


 千尋はページを開けた。そこには躍動的な絵が描かれている。これは何だ。すごい。まるで生きているようだ。


「まるで動いているみたいやね。これが漫画なん?」


 千尋は驚いていた。これが漫画なのか。とても信じられない。漫画でここまで描けるとは。


「とても信じられんわ」

「未来の漫画って、こうなるんかいな?」


 千尋の後ろで見ていた雅も、驚いていた。これは誰の書いた漫画だろうか?


「きっとそうかもしれん」

「これからもっともっと漫画は面白くなるで!」


 雅は、表紙を見た。そこには、この新宝島の作者が書かれている。手塚治虫だ。聞いた事のない名前だな。でも、これから重要になってきそうな名前だな。


「手塚治虫・・・」

「えっ!?」


 千尋は驚いた。誰の名前だろうか? まさか、この漫画の作者だろうか?


「この漫画の作者やよ」


 千尋は一度漫画を閉じ、表紙を見た。作者は手塚治虫だ。千尋もその名前を初めて知った。


「そうなんや。これからこの人の作品に期待やね」

「うん」


 千沙と理沙、浩一もその漫画をじっと見ていた。3人とも、この漫画に興味津々なようだ。こんなに素晴らしい漫画が書けるとは。




 その夜、千尋は夜空を見ていた。今日もきれいな夜空が広がっている。それを見て、千尋は思った。戦争で亡くなった人々は、遠い空から日本をどう見ているんだろうか? ここまで発展するとは思っていなかったんだろうか? こんな時代に生きたかったと思っているんだろうか? もし会えたら、その話を聞きたいな。でも、聞く事ができない。


「明日から千沙と浩一は小学校に入学なんやね」

「小学校、どんなとこ?」


 千尋は振り向いた。そこには千沙と浩一がいる。千沙と浩一は小学校生活が楽しみでしょうがない。どんな友達ができるんだろう。どんな日々が待っているんだろう。どんな6年間を送るんだろう。きっといい日々が待っているんだろうな。とても楽しみだな。


「楽しい所やし、ためになるんやで」

「楽しみー」


 千沙は喜んだ。理沙も楽しみにしているようだ。


「そっか。浩ちゃんも楽しみかい?」

「うん」


 浩一はうなずいた。それまでにいろいろあったけれど、優しい家族と巡り会えたし、こうして無事に入学できる、それだけでどんなに幸せか。毎日を楽しく生きていきたいな。


「楽しみやよなー。こうしていい家庭に恵まれて、本当によかったな」

「うん!」


 と、そこに雅がやって来た。雅も嬉しそうだ。明日が入学式だからだろう。


「いよいよ明日なんやね」

「楽しい日々を過ごそうや」

「うん!」


 2人とも、明日の入学式を楽しみにしているようだ。きっとこの子は、小学校に行くのが好きだろうな。


「悩んだ時は、私が何とかするからね!」


 浩一は横を向いた。千沙はとても優しいな。血がつながっていないとはいえ、こんな事を言ってくれるとは。と言うか、この家族はみんな優しいな。ひどい事をされていた自分を優しく受け入れてくれて、ここまで育ててくれた。でも、まだまだ神瀬は始まったばかりだ。これからもっといろんな事を経験していくだろう。僕たちは、どんな大人になるんだろう。


「ありがとう、千沙ちゃん!」


 浩一は喜んだ。血のつながらない自分を、ここに住ませてくれて、本当にありがとうと言いたいな。


「どないしたん?」

「こうしていいパパとママに愛されるって、いいなって思って」


 浩一は、ここで平和に暮らす事に喜びを感じていた。こんな日々がずっと続けばいいのに。だけど、いつかは独り立ちしなければならない。そして、結婚して、子供を設けなければならないだろう。その時に家族は、どんな顔になっているんだろう。


「そっか」


 と、浩一は何かを思い浮かべた。今頃、大志田夫妻はどうしているんだろうか? 自分を虐待してきた夫婦だ。虐待されたとはいえ、忘れる事ができない。しっかりと反省して、仲直りしてほしい。でも、あんな2人にはもう会いたくないな。


「どないしたん?」

「何でもないで」


 だが、浩一は何にも言おうとしない。何か言いたい事があるんだろうか? 話してほしいな。


「ふーん」


 そろそろ夜9時だ。もう寝ないとな。


「もう寝やんと」

「僕も」


 浩一も同じだ。明日は入学式だ。早く寝ないと。


「おやすみ」

「おやすみ」


 2人とも、寝室に向かった。その後姿を、雅と千尋は幸せそうに見ていた。いよいよ明日は入学式だ。どんな小学校生活が待っているんだろう。千沙と浩一の小学校生活に期待したいな。

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