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その頃、理沙は空を見ていた。理沙は思っていた。来年、自分もこんな事を経験しなければならないんだろうか? つらいけれど、それは乗り越えなければならないんだろうか? こんな事は初めてなので、不安だな。だけど、乗り越えないと。
「どないしたん?」
理沙は振り向いた。そこにはハルがいる。ハルは理沙を心配している。今朝、不安な表情だったので、気になったようだ。
「私も来年、こんな経験をするんかと思うて」
「理沙・・・」
ハルは思った。もう理沙が高校受験の事を考えているとは。まだまだ先の事なのに。まだ考えなくてもいいのに。まだ考えるのは早いのでは?
「確かにやるで。今はまだ考える時やないけど、考える時はもうじきやで」
「そうなんや」
やっぱりもうすぐ考える時期なのか。私は千沙と同じ高校に進まなければならないのか? それとも、千沙とは別の高校に進まなければならないのか? 理沙は悩んでいた。
ハルは思っていた。どんな道を進んでいい。雅や千尋のように、道を踏み外すようなことをしないでほしい。
「理沙は、どんな道を進むんかな? わからんれど、ええ道を進んでほしいわ」
「ほんま?」
理沙は考えた。どんな道を進めばいいんだろう。全くわからないな。
「うん。悔いのない、素晴らしい道やったら最高やわ」
「素晴らしい道、か・・・」
理沙は自分の人生を考えた。まだまだ考えていないけれど、素晴らしい人生だったらいいな。恋をして、結婚して、子供たちを設けて、孫にも恵まれて、幸せに人生を終えられたら嬉しいな。
「まだどんなのかわからんれど、素晴らしい日々だったらええのよ」
「うーん・・・」
と、ハルは理沙の肩を叩いた。理沙は驚いた。
「まだ考えなくてええのよ。これから考えればええのよ」
まだ考える時期ではないのか。それはいつになるんだろうか? 千沙や浩一と同じく、5月ぐらいなんだろうか?
その頃、浩一は入試問題を解いていた。浩一は入試問題をスラスラと解いていく。問題なさそうだ。この日のために、一生懸命勉強をしてきた。今日はその実力を発揮する時なんだ。
浩一は解き終えた。浩一は自信満々だ。だが、本当にこれでいいのかという不安もある。
「終わり!」
そして、入学試験が終わった。職員が入試問題を回収していく。浩一はそれをじっと見ている。
入学試験を終えて、浩一は校舎を後にしようとしていた。今日は大変だった。後は天命を待つだけだ。どんな結果になるかわからないけれど、いい結果であってほしいな。
「どやった?」
浩一は振り向いた。そこには山本がいる。
「なかなか良くできた、と思うわ」
「そっか。結果を待とや」
山本は笑みを浮かべている。山本も自信がありそうだ。浩一も笑顔だ。自信があるんだろうかと山本は思った。
「人事を尽くして天命を待つだけやな」
「いい事言うやん!」
山本は浩一の肩を叩いた。いい事を言っている浩一をほめているようだ。
家の最寄りの停留所を降りた浩一は、山本と一緒に帰り道を歩いていた。昼間は閑散としている。あまり目にしない、昼間の風景だ。朝は騒然としているが、今はそれが全く嘘のような静けさだ。
「どやった?」
「よく頑張れたと思うよ」
2人は今日の入学試験を振り返っていた。今日まで、高校受験でいろんな事があったけれど、全力を尽くせたと思う。
「そう・・・」
「明日も入試やね」
だが、浩一は明日も入学試験だ。明日は併願で志望している高校の入学試験だ。まだまだ油断できない。滑り止めとはいえ、気合を入れないと。入学試験は常に全力で挑まないと。
「うん。併願やけど、そっちも頑張らんと」
「そやね」
山本は千沙の事も考えた。明日は千沙も入試だと聞いた。千沙はどうだったんだろうか?
「ちーちゃんも浩ちゃんも、頑張ってな」
「うん!」
浩一も千沙の事を考えた。明日の入学試験、千沙はどうなるんだろうか? 全力を出せるんだろうか? とても気になるな。
「結果、どうやろな」
「気になるん?」
浩一は結果が気になっているようだ。これが決まるか決まらないかで、東京の大学に進めるかどうかがかかっていると思っている。もし落ちれば、東京の大学に進むのはあきらめるかもしれない。住みたいと憧れている東京に住むには、これは外せないと思っているようだ。
「うん。いつか東京で頑張りたいねん」
「そう。じゃあ、頑張ってや」
浩一は家の前にやって来た。家の前で、山本と別れた。浩一は家に入ると、すぐに手を洗い、2階に向かった。今日も勉強だ。明日も入学試験だ。まだまだ油断できないだろう。
「さて、頑張らんと」
「一生懸命やね」
1階から、ハルは浩一を見ていた。浩一はとても一生懸命だな。東京の大学に進み、東京で就職したいと思っているからだろう。千沙以上に気合が入っているし、勉強をよくやっている。本当に熱心だな。
「うん」
すでに帰っている千沙も、勉強をしている。明日は専願の高校の入学試験だ。
「ちーちゃんも、頑張っとるね」
「明日も入試だからね。明日は、専願の高校やよ」
「頑張ってな!」
ハルは千沙も応援した。自分もかわいい孫娘だ。頑張ってほしいな。そして将来、自分を支えてほしいな。
「うん! でも、大学には進まないつもり。だって、おばあちゃんを支えたいねん」
「親孝行なちーちゃんやね」
遠山は笑みを浮かべている。千沙は他人思いの優しい子だな。きっといい大人になるだろうな。
と、リビングの理沙は何かを考えていた。また入学試験の事を考えているんだろうか?
「どないしたん?」
「私、どうしようかなと思うて」
また理沙は進路の事で悩んでいるようだ。まだまだ考える時期じゃないのに。どうして理沙はこんなにも進路や受験を考えるんだろうか?
「ええ人と巡り合って、嫁げばええやん」
「うーん、そやね」
だが、それでも理沙は戸惑っている。いつか考えなければいけないのに。
「あんたの人生、楽しみんさい」
「はい!」
理沙は再び2階に向かった。また勉強をしに行くと思われる。




