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年が明けて1956年になった。今年は勝負の年だ。千沙と浩一が高校受験だからだ。この年ほど重要じゃない年は今までにないと思う。みんなそう思っていた。
2人は1階に降りてきた。1人とも真剣な表情だ。それだけ、この年がいかに重要かがわかる。
「おはよう」
「おはよう」
ハルは笑みを浮かべている。普段は真剣な表情だが、今日は笑みを浮かべている。新年が明けたんだから、今日だけは笑顔なのだろう。受験で大変だけど、今日は祝わないと。
「あけましておめでとう!」
「あっ、あけましておめでとう」
千沙は戸惑っている。いつも真剣な表情のハルが喜んでいるからだ。浩一も戸惑っている。だが、元日ぐらいは笑顔でいようと思っているようだ。
「今年もよろしくお願いします!」
ハルが笑顔だ。2人は少しずつ笑顔になっていった。今日は元日だ。いろいろと大変だけど、今日は素直に祝わないと。
「今年はいよいよ受験やね」
「うん」
そう言われると、2人は真剣な表情になった。今年は勝負の年だ。受験がうまくいくように頑張らないと。
「頑張らんと」
「そやね」
だが、千沙はやわらかい表情だ。今日ぐらいは祝おうよ。
「何はともあれ、おせちを食べて新年を祝おうや」
「うん」
すでに食卓にはおせちがある。いつもそんなに多くないが、今年は受験だから、応援のためにも少し豪華にしてある。3人ともとても嬉しそうだ。
「いただきまーす」
「いただきまーす」
4人はおせちを食べ始めた。今年のおせちは例年に比べておいしい。どうしてだろう。ハルが2人同様、頑張っているからかな?
「うまい!」
「ほんまや!」
3人とも驚いている。ハルは喜んでいる。いつも以上に頑張っている甲斐があるな。
「今年はいい年になるとええね。そして、勉強を頑張って、志望校に行けるように頑張らんと」
「ああ」
突然、ハルは浩一の肩を叩いた。浩一は気合が入った。今年は頑張らないと。
「頑張んなあい!」
「うん!」
次に、ハルは千沙に目をやった。千沙はわかっていた。千沙にもエールを送りたいと思っているようだ。
「ちーちゃんもね」
「うん」
ハルは思った。高校を卒業したら、何をしたいと思っているんだろうか? まだ、ハルを支えたいと思っているんだろうか?
「ちーちゃんは、高校を卒業したら、どうしたいん?」
「おばあちゃんを支えたいなと思っとる。もう年やし」
やはりそう思っているようだ。千沙は祖母思いの優しい孫娘だな。
「そやね。おおきに。ちーちゃんはおばあちゃん想いやね」
「ウチは、好きな人を作って、一緒に暮らしたいわ。それはいつになるんやろ」
理沙も自分の未来を思い描いていた。まだ好きな人はいないけれど、早く作って、結婚して、独り立ちしたいな。その為には、来年の高校受験が鍵を握っていると思う。入った高校で、どんな人と巡り会えるかわからないけれど、いい人と巡り会いたいな。
「そやね。いい人と巡り合えるとええね」
「うん」
浩一も考えていた。高校でいい人と巡り会いたいな。そして、その人と結婚できたらいいな。
「僕もいい女と巡り合えたらええな」
「そやね。どんな人と一緒になるんかな?」
ハルは思っていた。浩一はどんな人と結婚するんだろう。そして、どんな家族を作るんだろうか?
「まだまだやよ。これから作るん?」
「たぶん」
だが、そのためには勉強をするしか道はない。勉強をしなければ、高校受験はうまくいかない。僕たちの未来はないと思っている。
「そのためには、勉強を頑張らんと」
「うん」
3人はおせちを食べ終わった。とてもおいしかったな。今年1年も頑張ろうと思えてくる。
「ごちそうさま!」
その後、3人は家でゆっくりしていた。正月3が日は勉強を休みにして、しっかりと気持ちを休めないと。勉強は大事だけど、休息も大事だ。そして、それが終わったら、また頑張らないと。
「今日はのんびりとしてるね」
「正月3日はゆっくりせんと」
遠山は思っていた。正月の3が日は勉強を休みにして、リフレッシュした方がいいに決まっている。勉強ばかりではつらいだろう。
「そやね」
と、理沙は考えた。自分も来年は受験だ。どんな日々が待っているんだろうか? 今年からが勝負だと思っている。その為には、もっと勉強を頑張らないと。
「私も今年から受験なんやね」
と、ハルは目の色を変えた。まだ考える時期ではない。5月ぐらいから考えて、夏休みから本格的に頑張ればいいじゃないか。
「理沙、まだ考えないの」
「うーん・・・」
だが、理沙はそうはいかない。今からしっかりと考えないと。理沙は真剣な表情だ。
「まだ考える時期ちゃう。3年生になってから考えるんや」
ハルはそれでも、まだまだ考える時期じゃないと言っている。本当なんだろうか? 理沙は首をかしげた。




