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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第5章 中学校(下)
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21

 千沙と浩一は家に帰ってきた。だが、ただいまとは言わなかった。ハルに見つかったらダメだ。新聞をこっそり見るからだ。2人は辺りを見渡し、大丈夫だと確認した。家はとても静かだ。ハルはおそらく、自分の部屋でゆっくりしているだろう。


 浩一はリビングにやって来た。リビングには誰もいない。新聞をこっそり見るチャンスだ。


「誰もいないな」


 浩一は新聞を読み始めた。新聞には様々な記事がある。浩一は新聞を読む事はほとんどない。


 と、浩一はある記事を見つけた。それは『連続放火殺人夫婦、死刑判決』という記事だ。そして、松岡雅、千尋夫妻と書かれている。千沙と理沙の両親だ。


「えっ!? 死刑?」

「どやった?」


 浩一は横を向いた。そこには千沙がいる。


「死刑やて」


 死刑と聞くだけで、千沙はわかった。両親が死刑になったのだろう。あれだけ人を殺したんだから、死刑になるだろうなと思ったが、本当になった。


「やっぱりそやったんか」

「あれだけの人を焼き殺したんやもん」


 浩一もそう思っていた。やっぱり死刑になったんだな。自殺未遂だけでこんな事をするなんて、やりすぎではないか?


「そやね。いくら浩ちゃんをが自殺しそうになっただけで、これはやりすぎちゃうかって」

「自殺しようとした自分が言うのもなんだけど、僕もそう思う」


 2人とも死刑になって当たり前と思っているようだ。2人とも、雅と千尋の事は全く気にしていない様子だ。自分は自分、自分たちは自分の道を進んでいくんだ。全く関係ないだろう。


「浩ちゃんはこんな悪いことやっちゃあかんよ」

「わかっとるて」


 と、玄関が開いた。ハルが帰ってきたようだ。部屋にはおらず、買い物に行っていたようだ。


「ただいまー」

「あっ、帰ってきた!」


 ハルはリビングに行こうとした。と、2人がリビングから出てくるのを見た。まさか、新聞を読まれたかな? 雅と千尋の死刑判決の記事を見たんじゃないかな?


「どないした? こんな時間にリビングにいて。勉強しろよ」

「は、はい・・・」


 2人は何事もなかったかのように2階に向かった。その様子を見て、ハルは思った。もしかして、死刑判決の記事を見たのでは?


「なぁ!」

「えっ!?」


 2人は振り向いた。まさか、死刑判決の記事を見た事を追及されるのでは? 2人はギクッとなった。


「まさか、新聞見たん?」

「見とらへん」


 浩一は嘘をついた。本当は見たのに。それを見て、ハルは厳しい顔になった。


「正直に話し!」


 ハルのこんなに怖い顔は初めてだ。それを見て、浩一は正直に話そうと思った。


「・・・、見ました・・・」


 浩一は記事を見たと正直に話した。ハルは元の優しい顔になった。


「そうか・・・。父さんと母さんの記事、見たん?」

「し、死刑になった事ですか?」


 やはり見てしまったのか。ハルは下を向いた。言いたくなかったのに、見てしまったようだ。もう隠せないな。


「やはり見たんか・・・」


 それを聞いて、見てはいけなかったのかなと思った。雅と千尋の事を気にせずに、前向きに生きてほしいから、見せよう、言おうとしなかったんだろうなと思った。


「見たらあかんかったん?」

「いや、そんなわけあらへんで」


 浩一はほっとした。見たらいけない事だと思っていたが、見てもよかったようだ。


「見てしまって、ごめんなさい」

「ええんやよ。どう思う?」

「何も思ってへん」


 どうやら浩一は、何も思っていないようだ。犯罪を起こした人の事なんて、全く気にしていない。自分は自分の道を歩むんだ。大きな夢を持って、東京に向かうんだ。その為には、受験を頑張らないと。


「そっか。受験、頑張れよ」

「はい・・・」


 と、そこに遠山がやって来た。遠山は2人をじっと見ている。まさか、2人があの記事を読んでしまったのかな?


「どないしたん?」

「あの記事、見てしもうたんやて」


 やっぱり見てしまったのか。言わないようにしようと思っていたのに。自分から見てしまうとは。だが、あまり気にしていないようだ。遠山はほっとした。


「そうなんや・・・」

「本当は見せたくなかったんや」


 浩一には、その気持ちがよく分かった。前を向いて生きてほしいから、見せなかったのだろう。


「その気持ち、わかるて」


 2人は2階に向かった。もちろん、受験勉強だ。2人は雅と千尋の事を全く気にしていないようだ。


「どんな大人になるかわからんけど、悪い子になってほしないわ」

「うん」


 遠山は彼らの未来を夢に描いていた。どんな大人になるかはわからない。だが、雅や千尋のように、犯罪を犯してほしくないな。


「この子たちの未来に期待しよ?」

「ああ」


 遠山も思っている。この先の未来を決めるのは、この子供たちだ。この子供たちが大きくなって、この日本を、世界を変えていくだろう。彼らの未来に期待しよう。


「この子の未来を決めるのは、この子たちや」

「そやね」


 2人は天井を見た。その先には千沙と浩一がいる。2人は彼らの未来に期待していた。

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