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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第5章 中学校(下)
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 ある冬の朝の事だ。いつもの冬の朝だ。ハルはいつものように朝刊を読んでいた。毎朝、朝刊を読むのがハルの日課だ。ほぼいつも欠かさず読んで、何が起きているのか見る。それが定番になりつつあった。


 ハルはある記事を見つけた。それは、雅と千尋の判決の結果が出たという記事だ。判決は死刑だったという。ハルは予想していた。これだけの人を殺したんだから、仕方がないだろう。死んで償うしかないだろう。だが、これを孫娘たちや浩一には言わないようにしよう。彼らには前向きに、平和な日々を生きてほしい。そして、日本のために頑張ってほしい。


「おはよう」


 ハルは顔を上げた。浩一だ。浩一は少し眠そうだ。昨夜も夜遅くまで受験勉強をしていた。授業に支障はないものの、朝はとても眠たそうだ。


「あっ、おはよう」


 ハルはいつものような表情を出そうとした。だが、死刑の記事を見ると、いつもの表情が出ない。


「どないしたん?」


 浩一もハルの様子が気になった。いつもと違う。何かあったんだろうか? 浩一は首をかしげた。


「何もないて」


 ハルは台所に向かい、みそ汁とごはんをよそった。それを見て、浩一は椅子に座った。


「さぁ、食べなさい」

「いただきまーす」


 浩一は朝食を食べ始めた。と、そこに千沙と理沙もやって来た。2人も起きたようだ。


「いただきまーす」


 2人は浩一に続いて朝食を食べ始めた。だが、2人とも元気がない。ハルの表情が気になってしょうがないようだ。


「どないしたん? 元気出しんさい」

「はい・・・」


 3人とも怪しそうな目で見ていた。こんなハルの表情は見た事がない。何かあったんだろうか?


 3人はいつものように中学校に向かおうとしていた。いつもの朝だ。だが、少し違和感を感じる。ハルの表情がおかしいからだ。


「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」


 3人は中学校に向かった。ハルはその後姿をじっと見ている。


「はぁ・・・」


 ハルはため息をついた。死刑の判決が出たと知って、雅と千尋の事を思い出した。あの息子とその妻にはあきれた。浩一の事で放火殺人をしてまでも復讐するなんて、めちゃくちゃじゃないか? 対話による解決はできなかったんだろうかとつくづく思う。


「死刑判決が出たんやね。あんな事をせんだらよかったのに」


 ハルは振り向いた。そこには遠山がいる。遠山も死刑判決が出たのを知っている。


「そやね」

「浩ちゃんは何も悪ぅない! 放火殺人した雅と千尋が悪いんや!」


 確かにそうだと遠山も思った。浩一が自殺を図っただけで、放火殺人をするなんて。それに、浩一は死んでいなかった。もうこんな夫婦、知らない。もう帰ってきてほしくなかった。死刑判決が出てよかったと思っている。


「そや。あれで殺そうと思わなければよかったんや」


 遠山も思っていた。死刑判決が出たって事は、千沙や理沙、浩一には言っちゃダメだ。気にせず、前向きに生きてほしいから。もうあんな夫婦の事を考えてほしくないから。


「絶対にあの子たちに言っちゃあかんよ」

「ああ」


 ハルは腹が立っていた。あの息子夫婦、もう会いたくない! 遺骨も引き取りたくない。死刑になっても、冥福を祈りたくない。


「もう雅にも、千尋にも会いたないわ!」

「ウチもや!」


 遠山もそう思っていた。何度も放火殺人を起こして、多くの人を死に追いやったのだから、どんなに願っても会いたくない。


「あんな罪を犯したんやから」

「どうしてあんな子になっちゃったんやろ」


 ハルは思った。雅をこんな子に育てた覚えはない。いい子に育ってほしいと思っていたのに、こんな事を犯してしまうなんて。どうしてこんな子に育ってしまった。


「ウチもそう思う! もうここに帰ってくんな! もう帰ってこないのが決まったけどな」

「そうだね。もう忘れよう! 子どもにも言わんようにしよう」

「うん」


 2人は決意した。もうあの2人の事は忘れよう。自分たちで生きていこう。




 昼休み、千沙と理沙、浩一は3人で話をしていた。話題は、ハルの事だ。今朝のハルは、明らかに表情がおかしかった。何かあったんだろうか? ひょっとして、雅と千尋の判決が下ったんだろうか? だから、表情がおかしかったんだろうか?


「おばあちゃん、今朝、おかしなかった?」

「確かに」


 浩一も感じていた。これは何かがあるな。でも、何だろう。全く想像がつかない。


「何かあったんかな?」

「わからん。やけど、やけにいつもに比べて新聞をよく見とったね」


 浩一はよく見ていた。今日はやけに新聞をよく読んでいた。とすると、新聞に何か秘密があるんじゃないかな? 新聞に重大なニュースがあって、何度も読み返しているのでは?


「新聞に何かあるんかな?」


 千沙も理沙もそうだと思った。確かに、今朝のハルはよく新聞を読んでいた。やはり新聞に何かあるみたいだ。


「かもしれん。2人の目を盗んで、見てみよや」

「そやね」


 3人は決意した。ハルの目を盗んで、その新聞を読んでみよう。きっと何かあるかもしれない。


 と、千沙は思った。ひょっとして、両親の判決出たのでは? そろそろ判決が出るんじゃないかと思っていたが、昨日、判決が出て、それが新聞に載っていたのでは?


「・・・、ひょっとして、父さんや母さんに何かあったんちゃう?」

「えっ!?」


 それを聞いて、浩一はそうかもしれないと思った。自分が自殺を図っただけで放火殺人を何度も犯すなんて、めちゃくちゃだと思っていた。それに、自分は生きて帰ってきた。どうしてこんなことまでしても、いじめっ子を殺さなければならなかったのか? 対話で解決できなかったのか?


「ひょっとして、判決が出たんちゃう? 死刑になったんちゃう?」

「うーん、どやろ。でも、否定できんな」


 浩一は腕を組んで、首をかしげた。とにかく、新聞を読んでみよう。読めば何かわかるだろう。


「とにかく、見てみよや」

「わかった」


 休み時間終了のチャイムが鳴った。それを聞いて、理沙は自分の教室に戻っていった。

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