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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第5章 中学校(下)
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 6月に入った。この月に入って、雨が多くなった。梅雨の時期だ。その為、野球部は室内練習が多くなっている。来月には地方大会があって、敗退したら3年生は引退だ。浩一は3年生なので、敗退したら引退になる。だが、戦いはまだまだこれからだ。これから高校受験が控えているからだ。


 浩一は高校受験に余念がない。まだまだ部活の練習があって、帰りが遅くなるものの、それ以外は勉強ばかりだ。宿題やテスト勉強をしているものの、それ以上に高校受験に力が入っている。


 千沙はそれほど高い高校に進もうと思っていないので、浩一ほど受験勉強には力が入っていない。だけど、浩一には負けたくないという気持ちで頑張っていた。


 昼下がり、ハルは近所に住む遠山と話をしていた。いつもの井戸端会議だ。徳次郎を失ってから、ハルにはそれが生きがいのように見えてくる。雅や千尋の事など、全く考えていない。もう帰ってこないでほしいと思っていた。


「浩ちゃん、あれから変わったわ」

「うん」


 遠山も感心していた。まったく遊ぼうとしない。受験勉強でいつも以上に遅くまで頑張っている。ハルもその姿に感心していた。特に浩一はとても頑張っていると聞く。この子はきっとレベルの高い進学校に行き、東京の大学に進むだろうな。以前から、東京に住みたい、東京の大学に進みたい、東京で就職したいと言っていたからな。


「受験を頑張るようなった」

「嬉しい限りやわ」


 ハルは笑みを浮かべている。真剣な浩一の姿を見ると、顔がほころんでくる。そして、応援したくなる。きっとこの子は、頭のいい素晴らしい子になるだろうな。ハルは浩一に期待していた。


「ほんまほんま」


 ハルは千沙の事を思い浮かべた。千沙も受験勉強を頑張っていると聞く。果たして、千沙はどんな高校に進むんだろうか? 進路指導でいろいろ言われていて、悩んでいると聞く。頑張らないといけないな。


「ちーちゃんも頑張っとるね」

「うん」


 ここ最近、浩一の成績がよくなって、先生が感心しているという。鼻高々だという。もともとから成績の良かった浩一が、もっと頑張るようになった。これだけ浩一が頑張るとは、誰が予想したんだろう。


「浩ちゃん、最近成績が良くなっていて鼻が高いわ」

「おおきに。東京で頑張りたいという夢を持っとるからね」


 大きな夢を持っていて、浩一は素晴らしいな。きっと夢を実現できるから、その日まで頑張ってね。そして、日本のために頑張ってほしいな。


「そう。じゃあ、頑張ってね」

「うん!」


 と、そこに理沙がやって来た。理沙が部活を終えて帰宅したようだ。理沙はハルに何かを聞きたいようだ。


「どないしたん?」

「私も頑張らなければあかんのかな?」


 理沙は思っていた。自分も来年は受験勉強を頑張らなければならないんだろうか? そして、いい高校に進まなければならないんだろうか?


「そやね。やけど、まだ先やよ」

「理沙はまだ考えなくてええさ」


 遠山もまだまだ考えるのは先だと言っている。本当にそうなんだろうか? そろそろ考えてもいい頃じゃないかな? 私も浩一みたいにもっと勉強をして、いい高校に行った方がいいんだろうか?


「そっかな?」

「その時になったら考えたらええんやよ」


 ハルも行っている。まだまだ考える時じゃないんだ。その時になったら考えればいいじゃないか。


「そうそう。そやで」

「うーん・・・」


 理沙は悩みながら、家に入っていった。2人はその後ろ姿を見ている。そんなに高校受験が気になるんだろうか? まだ考える時じゃないのに。


「堅苦しい事を考えんなよ」

「はい・・・」


 ハルの声に、理沙は答えた。だが、元気がない。やはり、高校受験の事で気になっているようだ。




 その夜、千沙と浩一は受験勉強をしていた。2人とも真剣な表情だ。特に、浩一は真剣だ。高い目標を持っているのだから。


「どんな大人になるんやろね。楽しみやわ」

「うん」


 ダイニングには、ハルの他に遠山もいる。遠山は未亡人で、家族は東京に移り住んだ。今は1人暮らしだ。その寂しさを紛らわすために、こうして松岡家にやって来る。自分と同じ未亡人のハルとはとても気が合っている。


「どんな子にになるかわからんけど、ええ大人になってほしいわ」

「うん」


 と、そこに千沙がやって来た。休憩しに来たようだ。千沙はお茶を飲んだ。


「ちーちゃんは将来、何になりたいん?」

「別に。おばあちゃんを支えられればいいなと思っとる」


 浩一と違い、千沙は大きな目標を持っていない。やはり、年をとっているハルを支えたいと思っているようだ。千沙は家族思いだな。


「そう。おおきに」

「私たちも受験の時は大変やったね。だけど、それで自分の今が決まったんや」


 ハルも遠山も、受験の頃を思い出した。一生懸命勉強したからこそ、今の自分があるんだ。賢くなったのも、その時の受験勉強のおかげだと思っている。


「そうそう! いろいろ先生に言われたね」

「うん。やけど、いい思い出だったわ」


 今思い出すと、少し恥ずかしくなるが、今思い出すと、いい思い出だ。あの頃の自分は未熟で、進路を考える事ができなかった。だけど、先生がアドバイスをしてくれたおかげで、いい学校に進む事ができた。


「どんな受験になるんやろ。楽しみやね」

「うん」


 そろそろ晩ごはんだ。晩ごはんはカレーライスだ。後はごはんにカレーをかけるだけだ。


「ちーちゃん、浩ちゃん、ごはんよー」

「はーい!」


 その声とともに、千沙と浩一が2階からやって来た。2人とも嬉しそうだ。匂いからカレーとわかっているようだ。


「今日はカレーや!」

「頑張ってるから、カレーにしちゃった」


 ハルは笑みを浮かべている。受験勉強を頑張っている2人に、精いっぱいのご褒美をしようと思って、今夜はカレーにした。


 2人は椅子に座った。目の前にはカレーライスがある。


「いただきまーす!」


 2人はカレーライスを食べ始めた。とてもおいしい。だけど、いつも以上においしいように見える。どうしてだろうか? 愛情がこもっているからだろうか?


「おいしい!」

「そう。おおきに」


 ハルは嬉しくなった。おいしいと言ってくれるだけで、とても嬉しいな。もっと頑張っちゃおうかなと思う気持ちになる。


「受験勉強、頑張ってね。期待しとるさかい」

「おおきに」


 2人は決意した。もっともっと高校受験を頑張っちゃおうかな? そうすれば、もっとおいしい料理をハルが作ってくれそうだから。

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