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そして迎えた次の朝、浩一は目を覚ました。今日は実家ではなく、旅館で迎える朝だ。とても新鮮だ。そして、生徒と一緒に寝る。それだけでもとても幸せだ。小学校の修学旅行には行けなかった自分には、この体験が新鮮に見える。果たして、今日はどんな感動が待っているんだろう。そして、どんなきっかけを作るんだろう。わからないけれど、いい日になるといいな。
浩一は辺りを見渡した。だが、そこには誰もいない。すでに起きて、朝食を食べる大広間に来ているんだろうか? いや、時計を見ると、そんな時間ではない。では、みんなどこに行ったんだろうか? まさか、浩一が嫌いだから、みんな帰ったのでは? いや、そんな事はない。だったら、大問題になるはずだ。
浩一は廊下に出た。だが、そこには人気がない。みんな、どこに行ったんだろう。千沙もいない。浩一は首をかしげた。昨日の夜は騒がしくて、なかなか眠れなかったのに、何が起こったんだろうか?
浩一が歩いていくと、どこか騒がしくなっている所がある。ロビーだ。みんなロビーに集まっているのかな? 朝早くから、みんなロビーで何をしているんだろう。そう思い、浩一はそっちに向かった。
ロビーには、生徒がみんな集まっていた。みんな、ラジオを聴いている。何の騒ぎだろうか? 重大な事件が起こったんだろうか?
「おはよう」
「おはよう」
だが、挨拶をした生徒の表情は暗い。大変な事が起こったんだろうか?
「あれ? どないしたん? みんなラジオを聞いて」
「聞いてみい」
「は、はい・・・」
何か重大な事らしい。浩一はラジオに耳を傾けた。ニュース速報のようだ。何のニュースだろう。これだけ多くの人が真剣で、暗い表情なので、重大なニュース速報のようだ。一体何だろう。浩一は首をかしげた。
「こ、これは?」
「紫雲丸っちゅう船が沈没したんや。その中には、修学旅行生が多くおったんやて」
1955年5月11日早朝、高松港を出港した紫雲丸が、第三宇高丸と衝突、沈没したという。その中には、修学旅行中の小学生もいたという。彼らの安否はまだわかっていないものの、死んだと思われている。修学旅行中に、このような知らせがあるとは。あまりにもかわいそうだな。何とかならなかったんだろうか?
「そんな・・・。楽しいはずの修学旅行でこんな事が・・・」
浩一は呆然となった。自分たちは修学旅行を楽しんでいるのに、こんな事があっていいんだろうか? 自分たちは楽しんでいいんだろうか? 被害に遭った修学旅行の小学生がかわいそうだ。楽しい修学旅行が、こんな惨事になるなんて、誰が予想したんだろうか?
「信じられんやろ?」
浩一も真剣にその話を聞いていた。今日、これから判別行動で東京を見ようと思っていたのに、まさかこんな事件が入ってくるとは。被害に遭った子供たちの親族はかわいそうだな。ここまで愛情をもって育ててきた子供たちが、こんな事故で命を落とさなければならないんだろうか? 浩一は残された家族がかわいそうだと思った。こんな事が怒らないためには、どうすればいいんだろうと思った。だが、その答えが見つからない。
「こんな事があってええんかいな?」
千沙も暗い表情だ。華やかな修学旅行の陰で、こんな事が起こっているのだ。本当に修学旅行を楽しんでいいんだろうかと思えてくる。だが、楽しむ事ができなかった彼らの分も、楽しまなければならない。
「絶対にあったらいかんのに」
「死んだ子供たちの親、かわいそやね」
浩一同様、千沙もそう思っているようだ。千沙も浩一も、思いやる気持ちは同じだ。何とかして彼らを励ましたい。だけど、遠く離れてそれができない。
「うん」
と、川島は真剣な表情になった。事故を起こさないためのいい案を思いついたんだろうか?
「大きな橋があればええのに」
川島は思っていた。瀬戸内海を越える、大きな橋があればいいのに。そうすれば安全に、船より大量に、スピーディーに人や荷物を運ぶ事ができる。そして、本州と四国の意気気がしやすくなるんじゃないかと思った。
「そやね」
その案に、みんなはびっくりした。確かにそうだ。瀬戸内海に大きな橋ができれば、こんな大きな事故は怒らないんじゃないかと思った。
その考えは、1988年4月10日、瀬戸大橋の開業によって現実になる。だが、彼らはそんな未来を全く予想していなかった。
だが、今日は東京を班別に回る日だ。今日は思う存分楽しまなければならない。こんな悲惨な事が起こっているけれど、彼らの分も楽しまなければならない。
「みんな、今日は東京を観光するんやから、早く準備しなさい」
それを聞いて、生徒は立ち上がった。早く行かなければならない。そして、みんなで楽しまなければならない。
「行こか」
「うん」
生徒は朝食を食べるために、大広間に向かっていった。だが、彼らの表情は浮かれない。修学旅行という楽しい時間に起こった悲惨な事故があったからだ。




